著者
下村 道子 小串 美恵子 山崎 清子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.27-31, 1982-01-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5

カマスサワラの冷凍魚肉を用いて, 魚肉調理における酒類の影響を調べることを目的とし, 魚肉を清酒, 煮切り酒, エチルアルコール溶液, 有機酸・糖液などに浸漬し, その後蒸し加熱を行い, 浸漬液の違いによる魚肉の性状の変化を調べた結果, つぎのようなごとがわかった.1) 清酒, 煮切り酒, 焼酎希釈液, エチルアルコール溶液, 水などの液に食塩を加えて魚肉を30分浸漬した場合, 魚肉は液を7~8%吸収し, 重量が増加した.加熱した場合, 加熱後の重量はどの浸漬においても大差なく, 加熱魚肉の水分・揮発分の魚肉水分に対する割合もほぼ同じであった.2) 生魚肉から浸漬液中へ溶出するたん白質の溶出率は, 煮切り酒が最も少なく, 加熱による魚肉からの溶出たん白質率は, どの浸漬液でもあまり差がみられなかった.3) テクスチュロメーターによる硬さの測定値では, 浸漬液によって差がみられた.清酒と煮切り酒では煮切り酒を用いたほうがやわらかく, 有機酸・糖の影響は, 濃度の高いほうが魚肉はやわらかかった.エチルアルコールの濃度の違いによる影響は, 15%以下の濃度では有意差がみられなかった.