著者
阿部 芳子 長野 宏子 市川 朝子 下村 道子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.72, 2008 (Released:2008-08-29)

【目的】 食物アレルギーの発症例数が多いものに小麦製品が挙げられており、小麦粉製品の低アレルゲン化等の研究が進められている。かん水添加の有無およびpHの変化が小麦たんぱく質のアレルゲン成分の変化におよぼす影響を検討した。 【方法】 湿麩および麺の調製には強力粉(粗たんぱく質12.3%)を用いた。麺へのかん水添加は粉重量の1%とした。湿麩をpH 2からpH 11の緩衝液で抽出後、凍結・UTH液で溶出した。麺生地とゆで麺は凍結乾燥後アセトンパウダー試料とし、緩衝液(pH8.0)で抽出した。低分子部分はHPLCにてアミノ酸分析を行い、高分子部分はSDS-PAGE電気泳動後、タンパク質をPVDF膜に転写して小麦アレルギー患者の血清との抗原抗体反応を行った。 【結果】 各pH溶液抽出の湿麩たんぱく質は、小麦アレルゲンである16kDa付近で、反応が現れていたが、pH 11のかん水抽出試料では反応がすくなかった。生地および麺はいずれもロイシンが多く、GABAも存在していた。かん水生地と水生地のPAGEでは31kDa付近に濃いバンドが現れ、15~16kDaにもバンドがあり、同様の傾向を示した。ゆで麺ではかん水添加の有無で泳動パターンに差があり、かん水麺では生地で現れたバンドの多くが薄くなって消失していた。水麺では生地より増加傾向を示した。従って、かん水麺では加熱でアレルゲンのバンドが変化減少することがみられた。ゆで麺を小麦アレルギー患者の血清と抗原抗体反応させた結果、小麦たんぱく質の主要なアレルゲンのバンドが消失していた。特にアレルギー反応を起こしやすい15~16kDa、31kDa付近のバンドが消失したことから、かん水の添加はアレルゲンの除去に効果のあることが考えられた。
著者
下坂 智恵 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.125-131, 1996-05-20
被引用文献数
1

近年わが国の生活環境は大きく変化し、家庭内の衣・食生活は多様化し、さらに高齢化が急速に進む中で、高齢者をめぐる家庭生活の状況も以前とは異なってきている。そこで本調査では女性の家事行動の実態と意識について多面的に把握しようとした。女性は、食料品よりも衣料品を買いに行くことが好きとした者が多かった。また、食料品の買物、料理作りなどの食生活に関する行動よりも、衣料品の買物、手芸など衣生活に関する行動をすることで、ストレスの解消になるとした者が多かった。実際の行動としては、生活の技術といわれる食生活関連の行動の方が衣生活関連の行動よりも頻度が高かった。女性の25〜34歳では、クリスマスや子供の誕生日に特別な料理を作るとした者が多く、パンや菓子作りをする割合も高かった。25〜64歳では、年齢が高くなるにつれて食器やおしゃれに関心をもち生活を楽しもうとする傾向がみられ、買物をすることは楽しくストレスの解消になるとした者が多かった。とくに衣料品の買物でストレスの解消になるとした者が高率であった。65歳以上の女性は、他の年齢と比べて惣菜や半調理品を購入する頻度が高く、外食頻度は低かった。そして、漬物や煮豆、行事食などを作ることが多く、夕食作りや夕食の後片付けなどを楽しむ傾向がみられた。すなわち、惣菜を購入する率は高く、その一方、料理を楽しいと意識し、伝統食の手作りなどを楽しむ傾向がみられ、これらは家事の簡便化指向と同時に、余暇として楽しむという二極分化現象とみることができる。女性で年齢の高い者は低い者よりも、みそ汁や漬物作り、夕食作りを楽しいとし、食卓を飾る、盛り付けに配慮するなど食生活を楽しむ傾向がみられた。本調査から作り慣れている料理は、高齢になったときに、容易に行うことができ、楽しみとして作ることができるのではないかと考えられる。
著者
大西 真理子 庄司 一郎 小川 宣子 中上 寧 長岡 俊治 下村 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.305-313, 2004-04-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
20
被引用文献数
4

炊飯過程において調味料の添加が, 飯粒の水の吸水・膨潤にどのような影響を及ぼしているのか, 米の品種に違いがみられるのかを食塩を用いて検討し, 以下の結果が得られた.(1) 米の粗タンパク質およびみかけのアミロース含量はコシヒカリよりも初霜の方が多かった.(2) コシヒカリと初霜の飯の物性をテクスチュロメーターによって測定した.低圧縮測定した付着性については両品種とも食塩飯粒は普通飯粒よりも有意に減少していた.高圧縮測定した中心部の硬さ, 付着性, 凝集性のいずれも, コシヒカリについては, 食塩添加による影響はみられなかったが, 初霜については, 特に硬さについては有意に増大し (p<0.001, n=20), 付着性は減少傾向がみられ, 凝集性は有意な増加を示した.(3) 飯粒横断面の組織は, コシヒカリでは, 食塩飯粒と普通飯粒は同様の形態を示し, 胚乳細胞は表層部, 中心部ともに膨潤していた.初霜の食塩飯粒では, 飯粒の表層部は膨潤しているが, 中心部の胚乳細胞は小さく, 膨潤が抑制されているのが観察された.組織構造への食塩添加の影響は, 品種問に違いがみられた.(4) コシヒカリと初霜の白米 (掲精度90%) における蒸留水の吸水率は, 両品種間に差はなかったが, 食塩水の吸水率は, 蒸留水のそれよりも有意 (p<0.01) に低かった.また, 白米中心部 (搗精度50%) では, 蒸留水における吸水率は, 両品種間に差がみられ, 初霜の蒸留水の吸水率はコシヒカリの蒸留水のそれよりも低く, 食塩水においても有意に低かった.(5) 初霜の米粒を蒸留水および食塩水に浸漬したときの粗タンパク質の溶出は, 両浸漬水でみられ, 蒸留水におけるよりも食塩水の方が溶出率は高かった.そして, 溶出タンパク質のうちグロブリン, アルブミンおよびグルテリンが多いことをSDS-PAGE分析により確認することができた.
著者
阿部 芳子 市川 朝子 下村 道子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.461-467, 2006 (Released:2007-10-12)
参考文献数
12
被引用文献数
5

中華麺の独特のテクスチャー発現に対する, かん水の作用を調べるために, 強力粉に1%の粉末かん水を含む45%のかん水を加えて麺を作製し, かん水を加えない水麺と比較して, 次の結果を得た.1) かん水麺と水麺では, ゆで加熱中の水分量および重量には, ほとんど差がみられなかったが, 食味評価ではかん水麺は水麺よりも硬く, 外観 (麺表面) がなめらかでないと判断された. また, 破断強度解析において, 加熱7分間まで, かん水麺は水麺より破断強度の最大荷重値が高く, 破断応力曲線の解析では破断開始値および歪率60%までの応力変化率が高かったことから表面近くが硬い麺であると判断された.2) 糊化度はかん水麺, 水麺ともに内部より外部で高値を示した. かん水麺の糊化度は外部, 内部ともに水麺より低値を示した.3) 異なるpHの緩衝液で湿麩を撹拌するとpH2からpH3, pH9からpH11でたんぱく質が溶出することが示され, また, かん水中では高い溶出率を示した麺の組織観察において, 水麺のグルテンが線状にみえるのに対し, かん水麺のグルテンは薄く広がっているのがPAS染色で確認できた.
著者
下村 道子
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨
巻号頁・発行日
vol.34, 2012

美しく輝く宝石は古代から人々を魅了し続けている。古代ギリシアの哲学者は宝石の成因や性質の違いについて思索したが、1世紀のプリニウスは『博物誌』のなかで宝石の色や性質や産地のほかに、様々な伝説や効能や神秘的な力を記述した。その後、中世ヨーロッパでは宝石の美しさよりも神秘的な力や効能が増幅され、魔力や薬効を列挙した「鉱物誌」と呼ばれる文学のジャンルの書物が広く流布した。16世紀になると、現在では「鉱物学の父」と呼ばれているドイツのゲオルグ・アグリコラが、科学的な観察に基いて『鉱物の性質について』を著わした。しかし「鉱物誌」の神秘的な力や薬効が完全に払拭されたわけではなかった。そしてその後、科学の発展によって18世紀ころから近代的な鉱物や宝石に関する著作が次々に出版されるようになり、19世紀末にイギリスで宝石学の教育が始まった。<br>こうした宝石学の歴史のなかで、16世紀のイギリスのエリザベス1世の宮廷肖像画家の一人であり金細工師でもあった画家ニコラス・ヒリヤード(1546/7-1619)が著わした文書は注目に値する。彼は宝石の熱処理、各種宝石の色変種、ダイヤモンドの輝きとカット、ダイヤモンドと類似石の識別方法など現代の宝石学に通ずる情報を自分の経験に基いて詳細に記述しているのである。また16世紀のイタリアの彫刻家であり金細工師であったチェッリーニや、17世紀初期のイギリスの金細工師による著述と比較・検討することも興味深い。
著者
安田 淑子 下村 道子 山崎 清子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.29-32, 1976-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

白米を多量の水とともに加熱し, ゆで汁を捨てて蒸す炊飯方法を湯取り法とよび, 普通炊と湯取り法による米飯の性状について比較した. その結果は次の通りである.1) 湯取り法による炊飯中の水分は, ゆでている間に増加し, 蒸すことによる増減はほとんどなかった.2) 米飯粒の膨潤は, 普通炊と比較して湯取り法では長さ方向の伸びが大きく, 幅はむしろ減少していたが, 全体としては, 水中落下速度が小さいことから, 膨潤しているといえよう.3) テクスチュロメーターによるテクスチャーの測定では, 硬さは55~50℃で湯取り方の方が大きく, 25~20℃では普通炊の方が大となる. これは粘りのためと思われる. 弾力性は湯取り法の方が小さく, 付着性, そしゃく性, ガム性も小さい.4) かびの発生状態を37℃の恒温器中で18日間観察した結果, 湯取り法の米飯には, 普通炊よりかびの発生が少なかった.5) ゆで汁中のでんぶんのアミロースの割合は28.9%で, 白米のそれより多く, アミロースはゆで汁中に溶出しやすい.6) 官能検査では湯取り法と普通炊の飯における, 好みについては有意差がなく, つやとねばりに1%の危険率で有意差が認められた.
著者
下村 道子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.753-762, 1997-09-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
43
被引用文献数
3
著者
岡田 久美子 市川 朝子 下村 道子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.327-336, 2008-10-20
参考文献数
18
被引用文献数
2

うどんのおいしさには食したときの物性が大きく関与し,それにはうどんの成分である澱粉の性状が影響するといわれる。現在製麺業界で麺の物性改良として用いられている各種澱粉としてタピオカ澱粉,コーンスターチ,サゴ澱粉のいずれかを中力粉に加えたときの物性及び官能評価を行った。その結果,タピオカ澱粉代替麺は,破断エネルギー値が低く,伸長度の高い,軟らかく伸びやすい性状を,またコーンスターチ代替麺は破断エネルギー値が高く,伸長度の低い,すなわち硬く伸びにくい性状であった。この違いはα-アミラーゼ処理した生麺の走査電子顕微鏡観察でグルテン組織の形状に明らかな違いとして認められた。さらに,各種澱粉に活性グルテンを添加すると,破断エネルギー値はいずれの澱粉の場合も高くなった。官能検査ではタピオカ澱粉に活性グルテンを添加した麺が弾力,腰のある麺として好まれた。
著者
清原 玲子 山口 進 潮 秀樹 下村 道子 市川 朝子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.294-299, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
17
被引用文献数
2

我々は揚げ物,炒め物に独特のコク,うま味の一因として,加熱調理に伴って生成する油脂酸化物の影響を考えた。そこで本研究では油脂酸化物の味への影響を調べるため,主にヒトでの官能評価によって以下のことを明らかにした。リノール酸,リノレン酸,ドコサヘキサエン酸,エイコサペンタエン酸,アラキドン酸(AA)の5種類の脂肪酸を35℃24時間酸化させ水で抽出し,それぞれ醤油希釈水に添加したところ,添加無しに比べて有意に醤油の味が強まった。なかでも酸化AA水抽出物の添加作用が最も強いことが示された。AAを数%添加した植物油で調整したコロッケ,炒飯,野菜スープは有意にうま味,コク味,後味などが強まり,嗜好性も高まる傾向がみられた。以上より,油脂酸化物が食品の味を強める作用を持つこと,また植物油にアラキドン酸を添加することで,油脂調理食品のおいしさを向上できることが示唆された。
著者
安田 淑子 下村 道子 山崎 清子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.107-110, 1976-04-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
3

湯取り法と普通炊による米飯を炒め飯にし, その性状を比較することにより, 湯取り法の検討を行った. 結果を要約すると次の通りである.1) 米飯の炒め操作については, 湯取り法の方がはるかに炒めやすい.2) 炒め操作中に湯取り法の米飯は水分の蒸発がより多い.3) 炒め飯のノルマルヘキサンによって抽出される油脂は湯取り法の方が多く, 表面に付着している割合が多い.4) 顕微鏡によって, 普通炊の米飯粒のまわりにはおねばが付着している状態が観察され, 湯取り法ではほとんどなかった. また, 炒め飯のバターの付着状態は, 湯取り法の米飯に均一に付いているのに反し, 普通炊ではむらであった. 米飯が高温の方がバターの浸透が多い.5) テクスチュロメーターによる測定では, 湯取り法による米飯の炒め飯は付着性がみられず, 硬さが普通炊にくらべて大きく, 凝集性は小さかった.6) 炒め飯の官能検査では, 湯取り法と普通炊による差はみられなかった.
著者
高橋 ユリア 下村 道子 長野 美根 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.111-120, 1990-02-20
被引用文献数
1

文献から抽出した郷土料理,行事食の煮物254種において,主な材料,調理終了時の煮汁の量,材料の種類の数,主な調味料,主な材料の状態およびだしの使用の有無について分類し,全国の各地域で作られている煮物の特徴を知ろうとした。分析には,数量化分析II類,III類およびクラスター分析を用いた。1.地域による煮物の特徴に,最も寄与しているのは主な材料で,クラスター〔北海道・東北,北陸〕,〔関東,関西〕,〔中国〕,〔四国〕,〔中部,九州〕,〔沖縄〕に類型化できた。〔北海道・東北,北陸〕では魚類が最も多く,ついで野菜類,エビ・カニ・イカ・貝類であり,これらが全材料の89%を占めていた。〔関東,関西〕では,魚類と野菜類が多く,次に豆類が多かった。〔中国〕では,魚類,野菜類,エビ・カニ・イカ・貝類に獣鳥肉類が加わっていた。〔四国〕では,野菜類が最も多く,ついでいも類,魚類であった。〔中部,九州〕では,魚類,獣鳥肉類が多く,野菜類が少なかった。〔沖縄〕では,獣鳥肉類が非常に多く,また海藻類,特に昆布の煮物が多かった。2.調理終了時の煮汁の多少によるクラスターは,〔北海道・東北,関西,関東,中国,九州,四国〕,〔北陸,沖縄〕,〔中部〕に類型化できた。〔北陸,沖縄〕では,煮汁のある鍋物類が少なかった。〔中部〕では,煮汁の少ない佃煮,甘露煮類が全国のなかでも最も多い地域であった。3.材料の種類の数では,クラスター〔北海道・東北,四国,中国,沖縄,九州〕,〔北陸,関東〕,〔中部〕,〔関西〕に類型化できた。〔中部〕,〔関西〕では,材料の数が少なく,これらの地域から南の方と北の方に向かって,いずれも材料の数は,増加する傾向であった。4.主な調味料については,各地域ともしょうゆで味つけした煮物が最も多かった。クラスターは〔北海道・東北,北陸,中部,九州〕,〔中国,沖縄〕,〔関東〕,〔関西,四国〕に類型化できた。〔北海道・東北,北陸,中部,九州〕と〔中国,沖縄〕はともにしょうゆの次にみその煮物の多い地域であるが,〔中国,沖縄〕の方が塩の煮物の割合が高い。〔関東〕,〔関西,四国〕は,みその煮物が非常に少ない地域である。〔関東〕はしょうゆの次に塩の煮物が多いが,〔関西,四国〕には塩の煮物はほとんどなかった。5.主な材料が加工食品か生鮮食品かの分類では,クラスター〔北海道・東北〕,〔北陸,関東,中部〕,〔関西,九州,中国,沖縄,四国〕の3つに類型化できた〔北海道・東北〕は加工食品の使用が最も多く,これより南の地域へ向かうにつれ,加工食品の使用が減少し,生鮮食品が増加する傾向であった。6.だしの使用の有無と地域との偏相関係数は非常に低かった。だしの使用の有無と主な材料との関連についての相関は高く,魚介類を使用した煮物では,だしを使用しない傾向であり,植物性の材料を使用した煮物ではだしを使用する傾向にあった。
著者
高橋 ユリア 福田 真由美 下村 道子 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.222-227, 1991-08-20
被引用文献数
2

新流通魚のテクスチャーを知ることにより,各々の魚に適した調理方法を探ることを目的とした。新流通魚13種と従来から日本人が食べている魚3種の魚肉について機器測定を行い,得られた測定値を多変量解析で分析し以下の結果を得た。1)カツオのテクスチャーに似ているものはチリマアジ,シマガツオ,アロツナスで,これらは加熱により身がしまり硬くなり,みずっぽさが少なくぱさぱさした口ざわりのものと考えられた。2)マアジのテクスチャーに似ているものはアカダラ,ホキ,ミナミダラ,オレンジラフィーで,これらは硬さ,口ざわりともにカツオとマコガレイの中間にあるものと考えられた。3)マコガレイのテクスチャーに似ているものはテラピア,ギンダラ,メルルーサでこれらの加熱魚肉は柔らかく,みずっぽく,ぱさぱさしていない口ざわりのものと考えられた。4)カツオ,マアジ,マコガレイのテクスチャーに該当しないものは3種あった。オキメダイ,シロサワラの加熱魚肉の硬さは,カツオとマアジの中間であるが,マコガレイよりもみずっぽく,ぱさぱさしていないものと考えられた。ギンブカの加熱魚肉は非常に軟らかくなるものと考えられた。5)魚肉のテクスチャーを知ることにより,各々に適した調理方法を推測できた。
著者
荒木 千佳子 下村 道子 吉松 藤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.184-192, 1991-08-20
被引用文献数
4

すり身に水,卵白またはデンプンを添加した場合,その加熱ゲルの物性がどのように変化するか調べた。1.官能検査において,100%すり身と80%すり身のゲルに卵白を添加すると,添加量が多くなるにつれて,硬さは低下し,水気は多く感じられるようになり,きめは粗くなることが示された。卵白の添加量を増加するにつれ,テクスチュロメーター測定による加熱ゲルの硬さは低下し,針入度に上昇した。ゲルの組織を観察すると,卵白の添加によって,きめが粗くなって,気泡が多くなっているのが観察された。80%すり身のゲルでは卵白の添加は分離液を減少させた。2.すり身にデンプンを添加すると,官能検査では添加量が多くなるにつれて硬くなり,きめは細かくなると評価された。デンプンの添加量を増加すると,加熱ゲルの硬さ,弾力性が上昇し,もろさが低下した。また,きめが細かくなり,分離液量は低下した。デンプン添加のゲルの組織を観察すると,デンプン粒の多くは,膨潤し,糊化しているのがみられた。80%すり身では,100%すり身よりデンプン粒子の膨化がさらに進んでいた。デンプンの添加は,加熱中に魚肉から分離される水分をゲル中に保持し,糊化したデンプン粒子は,硬さ,弾力性の上昇に寄与していると考えられた。
著者
市川 朝子 菊嶋 和菜 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.82-89, 2007-04-20
被引用文献数
1

西洋かぼちゃはビタミン類,食物繊維を多く含み,甘みが強く,紛質でほくほくした味わいをもち,しかもいろいろな形態のかぼちゃを手軽に購入することができる。そこで本研究では,3種類のかぼちゃ(生,冷凍品,フレーク品)の添加が,スポンジケーキの食味と物性に及ぼす影響について検討した。その結果,以下のことが明らかになった。1)かぼちゃ添加ケーキの性状は,添加量が多くなるにつれて,硬さ及び凝集性の値は低くなり,付着性の値は高くなる傾向が示された。2)かぼちゃを添加したケーキは,生および冷凍かぼちゃの場合は,全重量中の36%前後の量まで,フレーク状かぼちゃでは26%前後の添加量までケーキのスポンジ状の組織が良好に維持された。3)官能検査においてもがぼちゃの種類によって嗜好的に好まれる添加量が,それぞれ異なることが示された。
著者
村上 知子 蛭田 眞一 下村 道子 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.117-125, 2008-04-20
被引用文献数
1

加熱に長時間を要する煮豆が日常的に家庭調理へと受け入れられるための方策として,多量に煮豆を調製した後冷凍保存を行い,必要に応じて解凍することで利用しやすくなる可能性があると考えた。本研究では黒大豆を蒸留水および調味液に浸漬後煮熟調製した黒豆を用い,冷凍保存が煮熟大豆の軟化に及ぼす影響を物性測定,官能評価および子葉組織の観察から検討した。その結果,黒豆の破断強度は未冷凍の場合,調味液煮豆が水煮豆よりも大きかった。水煮豆・調味液煮豆のいずれにおいても冷凍保存により,破断強度が低下し,破断曲線から数値化したz値もわずかに高くなる傾向がみられた。光学顕微鏡およびSEM観察において2週間冷凍保存すると,水煮豆・調味液煮豆共に細胞間に間隙がみられ,細胞壁の分離が認められた。冷凍保存に伴う軟化現象は,細胞組織の状態の変化により生じることが推察された。官能評価の結果,水煮豆・調味液煮豆共に冷凍2週間後には有意に軟らかく,ねっとり感が強くなった。黒豆の冷凍保存は,家庭における調理の簡便化につながると考えられる。
著者
市川 朝子 下村 道子
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.210-216, 2007 (Released:2013-02-19)
参考文献数
17

Egg sols diluted with various liquids are easily converted to soft and smooth gels by heating. In this paper, effects of various salts on the properties of the diluted egg and egg white gels were discussed. With univalent NaCl or KCl, the breaking strength of gels were lower than with divalent MgCl2 or CaCl2, though increased gradually with added salt concentration. The amounts of liquid released by syneresis from gels with divalent salt were significantly large compared with univalent salt.Moreover, the breaking strength of gels with same charge showed same behavior, by adjusting to the same pH value of the sols.The results of saltiness sensory evaluation test by Probit method of egg white gels with various concentration salts added were as for lows: The hardness of gels showed little influence on the saltiness. With other salts substituted to 5% of NaCl, the saltiness was weakened with MgCl2 or CaCl2 contrasting to little ef fect with KCl.
著者
下村 道子 島田 邦子 鈴木 多香枝
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.484-488, 1976-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5

魚肉 (マアジ肉) を純水, 2%食塩水その他の溶液中で30℃から100℃の間, 10度間隔の温度で加熱した場合の魚肉の変化を調べた.結果は次のようである.1) 加熱溶液へのたんぱく質の溶出は, 40℃から50℃にかけて増加し, 50℃から60℃では, あまり変らないか, また減少する場合も見られ, 60℃から70℃では再び増加がみられた 食塩水やしょうゆ水では, たんぽく質の溶出率が高くなり, 清酒を加えると, やや抑えられる傾向がみられた.2) 加熱溶液が水の場合, そのアミノ酸分析においてエキス分に含まれているアミノ酸とともに, 90℃で加熱した場合にはゼラチンに由来すると思われるアミノ酸が多く含まれていた.3) 加熱した魚肉の硬さは, 40℃から50℃にかけて著しく減少し, 50℃付近で最低となり, 60℃より100℃まで漸次増加した.調味料の影響はあまりみられなかった.4) 魚肉の凍結切片を水, 食塩水, 酒水および魚類用塩類溶液に入れ, 加熱し顕微鏡で観察したところ, 水では40~50℃で筋せんいの収縮が始まり, 70℃までさらに凝集がすすむのがみられた. 60℃をすぎると結締組織の溶解がみられた 食塩水に切片を入れると, 筋せんいは溶解したように拡がり, 加熱による変化はあまりみられなかった. 酒水では, 加熱しなくても筋せんいの収縮がみられ, 低湿でも変性が起こると思われた. 魚類用塩類溶液では, 食塩水に似た変化がみられた.
著者
吉松 藤子 下村 道子 岡田 洋子 宮沢 礼子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.471-476, 1977-10-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
5
被引用文献数
1

1) 産卵直後の新鮮卵のゆで卵は, 卵殻がむけにくく, 保存によりpHは上昇し, 2日後よりむけやすくなった.2) 新鮮卵にアルカリ性ガス処理を行い, pHを上昇させると卵殻はむけやすくなった.調理的見地より, アンモニアガスの処理がよく, 5%のアンモニア水で10分間の処理で効果があった.貯蔵卵に酸性ガス処理を行うと, pHは低下し, 卵殻はむけにくくなった.3) クチクラを剥離して保存すると, 無処理卵より卵白のpHの上昇が速く, 卵殻は26時間でむけやすくなった.4) ゆで卵の卵白の色については, 新鮮卵は不透明で白く, 貯蔵やアンモニア処理によって明るさL値が低下した。卵白のpHとL値との問には, 高度に有意な負の相関関係がみられた.5) ゆで卵の卵白の硬さは, 貯蔵日数により, またアンモニアガス処理により硬くなった.卵白の保水性は, 貯蔵日数, アンモニアガス処理により増した.硬さ, 保水性ともに, アンモニアガス処理は1日貯蔵したほどの効果があった.