著者
川上 紳一 小嶋 智 小井土 由光
出版者
岐阜大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

岐阜大学附属中学校と長良中学校の生徒を対象に、天体望遠鏡(スピカ)による金星の満ち欠けの観察を取り入れた授業を実践した。この間、岐阜大学では天気の良い日は可能な限り金星の観察を行い、得られた画像をその日のうちにホームページで公開し、生徒たちの観測への動機づけや観察結果の確認のため使用した。まとめの授業では、継続的な観察結果を踏まえ、モデルによって観察事実が合理的に説明できるか検証した。また、宵の明星の観察を基に、明けの明星になった金星の姿を予想し、さらなる観察で確認を行った。今回の実践では内合通過前後で観察を行うことで、有意義な授業を展開できた。一方、月の満ち欠けについては、岐阜大学附属小学校4年生を対象に、天体望遠鏡(スピカ)と双眼鏡による月の観察を行った。天体望遠鏡の視野の中に月を導入すること、望遠鏡のピント合わせなど、小学4年生には困難な課題を提示したが、多くの子どもが観察に成功した。とりわけ、せっかく月が見えるようになったのにすぐ月が視野からはずれることに気づいた子があり、授業での交流で月が動いているかどうかが問題となった。その結果、次の授業までにもう一度観察して確かめる課題へと発展した。結局、多くの子どもが月が東から西へ動いていること、日ごとに東へ移動すること、月の地形やクレーターの存在に気がついた。岐阜大学のホームページでは、月の満ち欠け、地形やクレーターを紹介したホームページを作成し、興味をいだいた子どもたちにより深い学習へと発展できるようにした。天体望遠鏡による月の観察を取り入れた指導法については、今後も授業で実践し、改良していく必要がある。このほか、小中学校で学習する理科(特に2分野)の学習や高等学校「理科総合B」の学習を支援する教材をホームページに多数掲載した。
著者
川上 紳一 小井土 由光 小嶋 智
出版者
岐阜大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

本研究の究極の目的は,初等中等教育現場で使われる教科書に添ったデジタル学習教材を開発し,実際の授業で活用して評価し,より洗練された教材として完成させることである.今年度の主な成果は次のようである。(1)天文分野については,岐阜市立伊奈波中学校、岐阜県加茂高等学校と連携して,天体望遠鏡(スピカ)の製作を取り入れた授業実践を行った.今年は月面の継続観察をテーマにし、まとめの授業ではクレーター形成実験を行った。また、人工衛星の観察を取り入れた星座学習に関連したコンテンツ開発として,国際宇宙ステーションから見た地球の3Dシミュレーションに衛星雲画像を表示できるようにした.(2)気象分野については,平成17年度に岐阜大学構内に設置されたインターネット百葉箱を活用し,天気の移り変わりに関する教材を開発した.(3)地質分やでは,すでに開発している「デジタル偏光顕微鏡」で表示できる岩石や鉱物の種類を大幅に増やした.(4)チョウの食草を植えた花壇を整備し,さまざまなチョウの生態や幼虫の成長のようすを教材化した.とりわけ、昆虫図鑑の充実をはかり、1500種類の昆虫の生態図鑑を作成した。(5)沖縄珊瑚礁の生物の画像を収集し,無せきつい動物の生態に関するコンテンツを開発した.掲載した動物種は100種類に達した。(4)地質分野では、伊豆大島、ハワイ諸島の火山地形や地質を取材し、火山学習用web教材を作成した。歯科印象剤とココナツパウダーを用いた火山噴火モデルを作成し、岐阜市立長良中学校で授業実践を行い、地学現象の空間スケールや時間スケールを理解することができる教材の有効性を実証した。