著者
小俣 武志 井上 肇 瀬山 義幸 山下 三郎
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.113-118, 1989 (Released:2007-02-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ラットの胃に酢酸潰瘍を作製し,2,10,40,80,180,365日目の時点で,その治癒過程における潰瘍部位と非潰蕩部位について,各種アミン含量とヒスチジンデカルボキシラーゼ(HDC)活性を比較検討した.その結果以下のことが明らかとなった,1)潰瘍部位のヒスタミン(HA)含量は非潰瘍部位と比較し,2,10日目で減少後,40日目で差がなくなり180日目で潰瘍部位ばかりでなく非潰瘍部位も正常対照群より増加した.2)セロトニン(5-HT)含量の変動はHAと同様であった.3)潰蕩部位のノルエピネフリン含量は非潰瘍部位と比較し,2,10,80,180日目で減少していた.4)潰瘍部位の HDC 活性は非潰瘍部位と比較し,2,10,40日目で減少し,180日目では正常対照群より減少したままであった.5)365日目に肉眼的に再燃,再発を確認したラットの潰瘍部位と非潰瘍部位のHA,5-HT含量は治癒したラットのその含量と差がなかったが,180日目と同様に高値を示していた.以上,胃粘膜中のHA,5-HT,HDC 活性の変動は慢性胃潰瘍の再燃,再発に係わる一因子となる可能性が推測された.