著者
宮野 竜太朗 住江 玲奈 菅谷 文人 林 京子 武内 嵩幸 福岡 友梨江 脇坂 長興 井上 肇 梶川 明義
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.137-145, 2018 (Released:2018-11-30)
参考文献数
23
被引用文献数
1

(序論)多血小板血漿(PRP)の育毛への効果を検討するためにPRPがヒト培養毛乳頭細胞に及ぼす影響を分子生物学的に検討した。(方法)培養毛乳頭細胞にPRPを添加し,一定時間培養後に線維芽細胞成長因子(Fibroblast Growth Factor; FGF)-2,血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor; VEGF),骨形成タンパク質(Bone Morphogenetic Protein; BMP)-2,Wnt5a,Ephrin(EFN)A3の遺伝子発現を定量PCRで測定した。また,エクソソーム除去PRPが前記遺伝子群の発現に及ぼす影響を同様に測定した。(結果)PRPは毛乳頭細胞のFGF-2,VEGF,BMP-2の遺伝子発現を2時間で無添加対照に比較して有意に増加させた。FGF-2,Wnt5aは24時間後で有意に増加したが,VEGFは有意差を認めなかった。BMP-2は有意に発現が低下した。EFNA3は変化なかった。エクソソーム除去PRPも,これら遺伝子群の発現に変化を認めなかった。(考察)毛乳頭細胞への発毛関連遺伝子群の発現増強が退行期の毛包の活性化を促しているものと推察された。特に持続的Wnt5aの発現と,BMP-2の短期的強発現とその後の消退は,毛乳頭の分化誘導と萎縮を抑制している可能性を示唆した。(結論)PRPは,萎縮毛包の再生ではなく,遺残する毛包に作用し育毛に関与すると結論された。
著者
小俣 武志 井上 肇 瀬山 義幸 山下 三郎
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.113-118, 1989 (Released:2007-02-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ラットの胃に酢酸潰瘍を作製し,2,10,40,80,180,365日目の時点で,その治癒過程における潰瘍部位と非潰蕩部位について,各種アミン含量とヒスチジンデカルボキシラーゼ(HDC)活性を比較検討した.その結果以下のことが明らかとなった,1)潰瘍部位のヒスタミン(HA)含量は非潰瘍部位と比較し,2,10日目で減少後,40日目で差がなくなり180日目で潰瘍部位ばかりでなく非潰瘍部位も正常対照群より増加した.2)セロトニン(5-HT)含量の変動はHAと同様であった.3)潰蕩部位のノルエピネフリン含量は非潰瘍部位と比較し,2,10,80,180日目で減少していた.4)潰瘍部位の HDC 活性は非潰瘍部位と比較し,2,10,40日目で減少し,180日目では正常対照群より減少したままであった.5)365日目に肉眼的に再燃,再発を確認したラットの潰瘍部位と非潰瘍部位のHA,5-HT含量は治癒したラットのその含量と差がなかったが,180日目と同様に高値を示していた.以上,胃粘膜中のHA,5-HT,HDC 活性の変動は慢性胃潰瘍の再燃,再発に係わる一因子となる可能性が推測された.