著者
森部 利江 青野 恵 由木 大 廣島 俊輔 柿澤 恭史 小出 操
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.98-103, 2016-06-20 (Released:2017-03-21)
参考文献数
5

加齢に伴い,シルエットから毛髪がはみ出す「見た目のパサツキ」に悩む女性が多く存在することから,われわれは見た目のパサツキ抑制技術の開発を目指した。見た目のパサツキ悩みがあるエイジング女性では,悩みがない若年層と比べ,毛髪内部のL-ヒスチジン(L-His),L-アルギニン(L-Arg)量が低下していることを液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)での検討により明らかとした。そこで,「見た目のパサツキ」抑制には,毛髪内部のL-His,L-Arg量を増加させることが有効であると考えた。これらのアミノ酸を毛髪内部に効率よく浸透・滞留させるために,促進剤に着目した。促進剤として,毛髪膨潤作用,または多重膜形成作用のある物質を検討した結果,多重膜形成作用のあるセラミド様物質に高いアミノ酸の浸透・滞留促進効果を見出した。また,安定同位元素イメージングによってコンディショナー製剤に添加したL-His,L-Argが毛髪内部に浸透していることが確認できた。本検討により,毛髪内部のL-His,L-Arg量と「見た目のパサツキ」の相関,および,L-His,L-Argによる毛髪補修効果に関する知見が得られた。