- 著者
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筆保 弘徳
吉田 龍二
山口 宗彦
永戸 久喜
室井 ちあし
西村 修司
別所 康太郎
及川 義教
小出 直久
- 出版者
- Meteorological Society of Japan
- 雑誌
- 気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.98, no.1, pp.61-72, 2020 (Released:2020-03-26)
- 参考文献数
- 36
- 被引用文献数
-
1
5
本研究は、2009年から2017年にかけて北西太平洋で発生した熱帯低気圧(TC)において、トロピカルストームの強度に発達する前に減衰した熱帯低気圧(TD)の特性と環境場の条件を調査した。特に、大規模な流れパターンと関連させて、トロピカルストームの強度まで発達した熱帯低気圧(TS)と比較した。流れパターンは以下の5つに分類した。シアライン(SL)、東西風合流域(CR)、モンスーンジャイア(GY)、偏東風波動(EW)、および既存のTCからのロスビー波応答で発生したパターン(PTC)である。ベストトラックデータと早期ドボラックデータを用いて、476例のTC事例のうち、263例のTDが検出された。CRまたはPTC(EW)のパターンで発生したTCは、他のパターンと比較してトロピカルストームの強度に達する(達しない)割合が多い。夏と秋のCR、GY、およびEW(PTC)のTDの平均位置は、同じパターンのTSよりも西(東および北)に偏っていた。TDの周囲の環境場パラメータはTSよりも発達に不向きな傾向があり、CR、EW、PTC(SL、GY、PTC)で大気(海洋)の環境場パラメータに有意な差がある。流れパターンで分類したトロピカルストームの強度に達するための環境場条件は以下のようにまとめられる。SLとGYはより高いtropical cyclone heat potential、CRはより弱い鉛直シア、EWはより湿潤な場、そしてPTCはより高い海面温度と先行のTCが強いことである。