著者
小原 洋昭 中島 毅 兜 正則
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.107-110, 2014 (Released:2014-07-18)
参考文献数
10

片頭痛患者が後頭部の痛みを主訴に来院し,MRAにて椎骨動脈解離と診断された症例を報告する.症例は38歳,女性で,3年前から,主に月経前に左後頭部に前兆と随伴症状を伴う拍動性の頭痛が生じるようになったが,痛みは市販の解熱鎮痛薬を内服することでその都度軽快していた.今回も夕食中,急に同部位に拍動性の頭痛が出現したため,鎮痛薬を服用したが症状の軽快があまりみられず,また,いつもの症状とは異なる“つっぱる感じ”が続くため,不安になり同日救急外来を受診した.診察では神経症状はなく,また単純CTでも異常はみられなかったが,MRAにて左椎骨動脈解離と解離部での内腔の閉塞,偽腔による動脈瘤の形成を認めた.脳動脈解離は椎骨動脈に発生することが多いが,頭痛の性状からは片頭痛などの一次性頭痛と鑑別することは困難である.そのため,後頭部の痛みを訴える患者が受診した際には二次性頭痛も念頭に置いて診察し,単純CTにて異常がみられない場合でも,疑わしければMRAを施行することが必要である.
著者
瀧波 慶和 三田 建一郎 長井 篤 山川 淳一 小原 洋昭
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.358-361, 2017 (Released:2018-02-07)
参考文献数
10
被引用文献数
1

77歳男性,主訴:左下顎部痛と重だるさ。左下顎部を中心に痛みがあり,近医で三叉神経痛第3枝領域と診断された。カルバマゼピンの処方により一時的に痛みは治まったが,再度同部位の焼けつくような痛みが出現し,当院ペインクリニック外来に紹介となった。1日に数十回の瞬間的な強い発作があり,うつ気分,食欲不振,意欲低下,口渇,下肢冷感,皮膚乾燥,舌診では紅色,やや腫大し,辺縁歯痕,舌尖紅,白苔。脈診で沈,腹診では腹力は虚(2/5)で心下痞,小腹不仁を認めた。下顎神経ブロックにより痛みは一時消失するが再燃を繰り返す状態で,この間も重だるさは継続していた。初診から35ヵ月後に,重だるさに対して抑肝散エキス7.5g/分3を処方したところ重だるさは消失した。1年6ヵ月経過した現在も下顎神経ブロックおよび鎮痛剤なしで経過している。