著者
小坂 健二 中村 隆一
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.93-100, 1983

筋電図反応時間(EMG-RT)は肢位変化によって変化することが知られている.例えば上腕三頭筋のEMG-RTは,促通肢位で短縮する.このEMG-RTの肢位依存性は,小脳障害患者で消失するがPNFによって一時的に回復する.このPNFの効果の神経機序を検討するために,サルの大脳皮質運動野刺激によって惹起されるEMGの潜時の肢位依存性について検討し,小脳核の破壊前と破壊後の肢位依存性の変化を比較検討した.さらに破壊後,皮質反復刺激を行なった.<br>皮質上肢運動野の連続電気刺激によるEMGの潜時は,肩のretraction肢位と比較するprotraction肢位で短縮した.この潜時の肢位依存性は,小脳核破壊によって消失した.試行間隔を短縮し,皮質刺激を反復すると,消失した肢位依存性は回復した.これらの神経機序については次のように考えられる.潜時の肢位依存性は,肢位変化による運動感覚入力が皮質運動野の興奮性を変化させた結果の現象である.小脳はこの運動感覚の入力系と運動の出力系に対してmodulatorとして作用しており,その破壊によって肢位依存性は消失する.この肢位依存性の回復には,試行間隔を短縮して皮質刺激を反復することでおこる上位中枢への運動感覚情報のより強力な入力が有効である.<br>このことからPNF治療には,最大抵抗下における随意運動の反復によって上位中枢への運動感覚入力を強化させることが重要である.
著者
安藤 正志 丸山 仁司 小坂 健二
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.10-13, 1995-01-31
被引用文献数
4

速く歩行させた(高速度歩行)後, また遅く歩行させた(低速度歩行)後, 快適歩行はどのように影響されるかを確認することを目的に, 健常成人30名(男12名, 女18名・平均年齢19.3歳)を対象として10m直線路上を歩行させた。1. 快適歩行を連続4回施行させ, それぞれの歩行所要時間, 歩幅そして歩行率を比較したところ, 再現性が確認できた。2. 高速度歩行後に快適歩行を再生させ, 事前に測定した快適歩行と比較したところ, 所要時間は一時的(5秒時)に短縮し歩幅, 歩行率は一時的に増大した。3. 一方, 低速歩行後の快適歩行では, 所要時間は増大し, 歩幅, 歩行率は減少した。しかしながら, これらの異なった歩行速度における干渉効果は時間経過とともに減弱してしまうことが確認できた。