著者
小堀 爲雄 宮島 昌克 高山 純一 辻本 哲郎 北浦 勝 飯田 恭敬
出版者
金沢大学
雑誌
自然災害特別研究
巻号頁・発行日
1986

1.初積雪日から数日間の平均気温,積雪量の変動から,ひと冬の積雪量を推定する方法を開発した。すなわち、過去の記録において、初積雪日から25日間の平均気温,積雪量のフーリエスペクトルの形状の変化に注目することにより、ひと冬の累積積雪量が3000cm以上である大雪と、1000cm以下の小雪,その中間の平年という3つのパターンに分類することができた。今後は、初積雪日以前のデータも利用するなどして、さらに短期間でひと冬の積雪量を予測できるように改善する必要がある。2.不完全剛結節点を木造家屋の仕口部に適用して屋根雪荷重作用時の木造家屋のたわみ解析を実施した。その結果、軒先部の巻き出れなどが軒先部に及ぼす影響を定量的に評価することができた。また、このことが最適屋根雪下ろし時期を決定する際に非常に重要なポイントであることもわかった。3.家庭からの排熱の利用という観点から、台所の換気扇から排出される温風を利用して、軒先部の屋根雪を融かす装置を作成し、実験を行った。しかし、今冬は暖冬で積雪量が非常に少なかったので、その効果を十分に検討するまでには至らなかった。しかし、2.で得られた成果を考慮すると、この装置は屋根雪下ろしの軽減に大きく貢献するものと期待される。4.生活道路の除排雪を効率的に行うための一手段として、住民参加による生活道路の除排雪順位決定システムを提案し、実際の道路網への適用を試みた。その結果、本システムを用いることにより、行政側と住民,あるいは住民同士の除排雪順位に対する合意形成が得られることが明らかになった。しかし、本システムにより、得られる順位が必ずしも物理的に最適な除排雪順位と一致しているとはいえないので、今後は、システムの最適化も考慮した方法に改善する必要がある。5.以上の成果を踏まえて、路上積雪と屋根雪の合理的除排雪システムについて考察し、今後さらに究明すべき課題を提示した。