著者
小室 昌志
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.61-87, 2012-11

本稿では,私立大学という組織・機関の特徴を概観しつつ,私立大学職員に対する人事制度,とりわけ人事評価制度に焦点を当て考察を行った。考察の結果,まずは次の4点を指摘した。(1)私立大学は,「評価」に極めて不慣れであり,「評価文化」が未発達であること。評価結果を踏まえた自発的なPDCAサイクルが欠落しており,方針管理もできていない状況にあること。(2)職員に人事評価制度を導入している私立大学は少なくはないが,その結果を賃金に反映させる査定を実施しているところは少数派であること。(3)人事評価制度は,人材育成を大きな目的としていること。(4)人事評価の結果をダイレクトに賃金へ反映させることは少なく,賃金は依然として昇進・昇格によって決められていること。その上で,私立大学3校を対象にした事例分析に基づく考察を行った。考察の結果,人事評価制度においても方針管理がなされていないことを指摘し,この指摘を踏まえ,人事評価制度の目的・意義について,筆者なりの見解を示した。