著者
小宮 明代
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.162-174, 1998-06-28
参考文献数
49
被引用文献数
5

チェアーサイドで簡単に迅速に使用可能な簡便DNAプローブ法を開発し,歯周炎局所のPorphyromonas gingivalis, Actinobacillus actinomycetemcomitansの検出率およびprobing depth (PD), bleeding on probing (BOP)の臨床評価との関連性により臨床応用の可能性を検討した。本法の特色は,チェアーサイドで行うことを目標とし,ハイブリダイゼーションおよび洗浄を行う際に可及的に恒温槽を使用しないですませられるよう工夫した。したがって,100℃加熱DNAプローブを試料DNAと直接10分間反応させ温度が自然に下降しアニーリングする様にした。また75℃0.2×SSC/0.1%SDSで洗浄効率を高めた。操作は24-well plate上で約2時間で終了し検出限界は細菌数10^4個/試料であった。被験者は歯周炎患者55名(14〜69歳)468部位とし,初期治療後,9名58部位の歯周ポケットを検索した。培養法との一致率はP. gingivalis 88%, A. actinomycetemcomitans 67%であった。P. gingivalis検出率とPDおよびBOPの間に有意な関連性が認められた(χ^2 test: p<0.001)。A. actinomycetemcomitans検出率とPDとの有意な関連性は35歳以上で認められたが(χ^2 test: p<0.001), BOPとの有意な関連性はなかった。A. actinomycetemcomitansは10歳代で最も高頻度で検出された。10歳代PD 3mm以下の症例でP. gingivalisは検出されなかったが,A. actinomycetemcomitansは22%に認められた。P. gingivalisの検出率は臨床症状改善部位のみで有意に減少し(χ^2 test: p<0.01), A. actinomycetemcomitansは治療後有意には減少しなかった。本簡便DNAプローブ法は,迅速診断,歯周治療法の選択,細菌学的な治療効果判定のチェアーサイドテストとして臨床的に有効であると示唆された。