著者
永田 俊彦 笠原 千佳 木戸 淳一 篠原 啓之 西川 聖二 石田 浩 若野 洋一 加藤 良成 郡 健二郎
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.504-509, 1995-09-28
被引用文献数
3 1 2

尿路結石と歯石には,成分や発現年齢においていくつかの共通点が認められる。本研究では,尿路結石を有する人の歯石沈着程度を明らかにするために,尿路結石患者40名および結石の既往のない対照被験者57名の口腔内診査を行い,歯石沈着指数を調べることによって,両群を比較検討した。さらに,尿路結石患者の尿中成分と歯石沈着指数の相関についても検索した。歯石沈着指数は,OHI指数に基づいた前歯および大臼歯6部位を検査するCI-S指数を採用した。結石群のCI-Sは1.10±0.09(平均値±標準偏差値)であり,対照群の0.37±0.05と比べ3.1倍と有意に高い値を示した。また,下顎前歯舌側部に限定して指数を調べた場合でも,結石群1.63±0.15,対照群0.60±0.11と,2.7倍の有意な高値を示した。この現象は男女の性別にかかわらず認められた。一方,尿中Ca量およびPi量とCI-Sとの相関を調べたところ,これらの間には何ら相関関係は認められなかった。以上のように,尿路結石患者は,結石をもたない人に比べて,歯石沈着量が多いことが明らかとなり,尿路結石患者の尿中Ca量およびPi量と歯石の沈着程度には関連がなかった。今回の調査結果は,尿路結石および歯石形成機構には何らかの密接な関連があることを裏付ける興味深い結果であると言うことができる。
著者
澤田 聡子 苔口 進 宮本 学 澤田 弘一 藤本 千代 綿城 哲二 弘末 勝 清水 明美 周 幸華 栗原 英見 新井 英雄 高柴 正悟 村山 洋二
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.475-485, 1998-12-28
参考文献数
31
被引用文献数
4

DNAプローブを用いたコロニーハイブリグイゼーション法による細菌同定は,簡便性と定量性に優れ,病原性細菌の検出・同定法として用いられている。本研究では,歯周病細菌同定により特異性を持たせるために,この方法を応用して,近年,細菌の系統分類に用いられるようになった細菌16SリボソームRNA(rRNA)遺伝子をDNAプローブとして利用した。歯周病細菌のActinobacillus actinomycetemcomitans, Porphyromonas gingivalisおよびPrevotella intermediaの16S rRNA遺伝子塩基配列から菌種特異的な可変領域を検索し, DNAプローブを作成した。このDNAプローブの上記3菌種16S rRNAに対する特異性をノーザンハイブリダイゼーション法で確認した。また,これらのDNAプローブが他の口腔細菌種に対して交差反応性がないことをドットブロットハイブリダイゼーション法で確認した。そこで,これらのDNAプローブを,上記3菌種の標準菌株を用いたコロニーハイブリダイゼーション法による細菌同定に取り入れ,その同定手技を確立した。さらに,この同定法を,歯周ポケットプラークから上記3菌種を検出・同定する実用に供した。
著者
徳本 圭伊子 土田 和範 河村 誠 中村 正一 長谷川 健二 岩本 義史
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.923-930, 1985-12-28
被引用文献数
2 1

25〜57歳の歯周炎を有するボランティア8名を対象に,水性基剤にテトラサイクリンを配合した軟膏(TG軟膏)および基剤のみのプラセボを,2週間に8回,ルートキャナルシリンジを用いてポケット内に直接投与し,その効果を,2日,1週間,2週間,4週間後に細菌学的に検索した。また臨床的にも検討を加えた。その結果,TG軟膏を局所投与した部位は,2日目から全菌数が有意に減少した。さらにspirochetesの割合の有意な減少と,coccoid cellsの割合の有意な増加が見られ,菌叢が有意に変化していた。これに対しプラセボ投与部位では,全菌数は1週間目と2週間目で有意な減少が見られたものの,4週間目では初診時と差のないレベルに戻っていた。spirochetes, coccoid cellsの割合は実験期間中有意差がなく,菌叢は変化しなかった。臨床的には,TG軟膏投与群は,4週間目までに歯周に関する各指標の改善が見られた。
著者
関野 愉 相羽 玲子 相羽 寿史 塚原 武典 田代 俊男 岡本 浩
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.283-288, 2001-09-28
参考文献数
42
被引用文献数
2

数種類の洗口剤を用いて,初期のプラーク形成抑制効果に関して臨床的検討を行った。歯周疾患の徴候のない25〜35歳の成人8名を被験者とした。実験開始前,14日間にわたり専門家による歯面清掃と口腔衛生指導を行った。実験開始時から全ての機械的歯面清掃を中止し,洗口剤10mlで1日2回1分間の洗口を4日間行った。実験開始時と4日後,全歯面に対してPlaque lndex(P1I)を用い診査を行った。4日目の診査後,専門家による歯面清掃と被験者自身によるブラッシングを再開し,10日後に再ぴ歯面清掃を中止し,他の洗口剤により4日間洗口を行った。以上の方法で,1)蒸留水(DW),2)0.12%グルコン酸クロル・ヘキシジン水溶液(CHX),3)酸化電位水(AW),4)0.1%フッ化第一スズ水溶液(SnF_2),5)0.02%塩化セチルピリジニウム含有洗口剤(CPC)の5種類の洗口剤を用いて検討を行った。全歯面におけるP1I 値は CHX で0.75,AW 1.21,SnF_2 1.20,CPC 1.55,DW 1.61であった。これらを比較検討したところ,CHX と他の全ての洗口液,AW と CPC とDW,SnF2とCPCとDWの間に統計学的有意差が認められた。また,全ての洗口剤において前歯部のp1I 値は小臼歯部,大臼歯部のものよりも低く,頬舌側面のp1I値は隣接面よりも低かった。
著者
岡部 俊秀 佐藤 聡 鴨井 久一
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.255-271, 1995-06-28
参考文献数
46
被引用文献数
4 1

歯間ブラシの毛丈,ワイヤー径,刷掃回数,歯間ブラシ圧の因子がプラーク除去効果に及ぼす影響を検討するため,9種類の歯間ブラシを作製し,模型上で隣接面の人工プラーク除去量を測定し比較検討を行った。その結果,1)歯間ブラシ圧が高くなるに従いプラーク除去量が増加し,30, 40gにおいて有意に高かった。歯間ブラシ圧が40g以上になると,プラーク除去量が有意に低かった。2)毛丈5mmの歯間ブラシが,3mm, 7mmに比較しプラーク除去量が有意に高かった。3)ワイヤー径0.25mmの歯間ブラシに比較し,ワイヤー径0.30mm, 0.35mmの歯間ブラシのプラーク除去量が有意に高かった。4)歯間ブラシの刷掃回数が増えるごとにプラーク除去量が有意に増加した。
著者
千原 敏裕 永井 淳 阿久津 功 本行 博 高橋 慶壮 清水 尚子 谷本 一郎 島袋 修 藤田 直子 宮本 学 高柴 正悟 後藤 弘幸 西村 英紀 磯島 修 清水 秀樹 栗原 英見 野村 慶雄 村山 洋二
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.204-212, 1992-03-28

早期発症型歯周炎を発症している家族(母親とその娘2人)の歯周病病態を宿主防御細胞機能に重点を置いて解析した。母親(40歳)は急速進行性歯周炎,娘A (14歳)は限局性若年性歯周炎,そして娘B (13歳)は単純性歯肉炎と臨床診断した。好中球機能は,母親が遊走能において低かった。CD4陽性細胞検出率およびT4/T8は母娘全員が高い値を示した。CD3抗体で刺激したときのTリンパ球増殖活性は,娘Bが低かった。HLAフェノタイプは,母娘で共通してDQw1とw3およびDRw10とw12を検出した。Actinobacillus actinomycetemcomitansに対し母親,娘Aおよび娘Bが,Porphyromonas gingivalisに対し母親と娘Bが,Fusobacterium nucleatumに対し母親が高いIgG抗体価を示した。本家族の歯周病発症機序は,本研究において調べた生体防御機能の諸機能所見だけから,明確にできるものではなかった。歯周病の病態解析には,さらに幅広い生体防御機構のネットワークを念頭に置く必要がある。
著者
池田 克已 楠 公仁 大澤 一茂 栗橋 豊 小野寺 修 金 容彰 岩川 吉伸 西本 正純
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.654-661, 1986-06-28
被引用文献数
3

歯周疾患の治療を行うための基礎となる疫学的調査を従来, あまり行なわれていない精神病患者を対象に行い, その患者における歯周疾患の罹患状況, 歯科治療に対する意識調査およびその予防対策などについて精神科医と共に検討してみた。対象は山梨療養所に入院加療中の精神病患者219名で, 歯周疾患の罹患状況は219名全員に, そしてそのうち42名に詳細な口腔内診査, 44名に対して歯科治療に対する意識調査, そしてその中の12名には刷掃指導を行った。その結果, 精神病患者の歯周疾患罹患率は, 一般正常成人に比べて高く, さらに, 歯科治療に対する意識調査では一般正常成人との間に差は認められなかったが, 刷掃指導に対するモチベーションは刷掃の理論づけ (意識的) を行うよりも, 「磨きなさい」と言う動作的な指導から行ったほうが効果的であった。また, 精神病患者に対する刷掃指導は, 精神科領域の治療の一助にもなることが示唆された。
著者
大森 みさき 今井 理江 佐藤 修一 堀 玲子 長谷川 明
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.43-48, 2000-03-28
参考文献数
18
被引用文献数
11 5

日常, 特に口臭を認めない日本歯科大学新潟歯学部の学生および職員30名の口臭の変動を口腔内の揮発性硫黄化合物の濃度を測定するポータブルサルファイドモニター (Halimeter RH17&reg;Interscan社, アメリカ) を用いた揮発性硫黄化合物量測定と官能試験によって1日5回 (朝食前, 朝食後, 昼食前, 昼食後, 夕食前) 経時的に測定しその日内変動を調べた。また, そのうち8名に対し経時的に口腔内診査を行い, 安静時唾液量, 唾液pH, プラーク, 舌苔の付着などを調べ, 口臭と臨床的パラメータの関連についても検討を行った。<BR>その結果, 性別による口臭に差がないことが明らかになった。また, 朝食前では何らかの口臭を認めることが示され, 食事の摂取によって減少する傾向がみられた。臨床的パラメータと口臭との関係では朝食前において舌苔付着量とハリメーター値との間に有意な関係が認められたが, 他のパラメータとでは有意ではなかった。これらの結果から舌苔が生理的口臭に影響を与えていることが示唆された。
著者
大串 勉
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.307-318, 1980
被引用文献数
1

The purpose of this investigation was to find out the relationship between volatile sulphur compounds in incubated whole saliva and that in mouth air, and between the former and cellular elements in whole saliva in periodontal patients.<br>The subjects were divided into the following three groups based on clinical findings and intensity of odour measured by olfactory panel of trained judges; the periodontal patients with halitosis (P-H group), the periodontal patients without halitosis (P-N group) and the normal subjects (N group)<br>The test samples used this investigation were unstimulated whole saliva and that were incubated at 37&deg;C.<br>The amount of valatile sulphur compounds produced from incubated whole saliva and that in mouth air were measured by gas chromatograph equipped with flame photometric detector, while the number of leucocytes and epithelial cells in whole saliva were counted by Klinkhamer's technique.<br>The degradation of leucocytes and epithelial cells in incubated whole saliva were observed using smear speciments staind with hematoxylin and eosin.<br>Results were as follows<br>1. The average number of leucocytes in whole saliva were 11764/cmm in P-H group, 3085/cmm in P-N group and 434/cmm in N group. Obvious differences were observed among three groups. The average number of epithelial cells in whole saliva were 1381/cmm in P-H group, 1157/cmm in P-N group and 310/cmm in N group. There were no differences between P-H group and P-N group.<br>2. The methyl mercaptan produced from incubated whole saliva in P-H group was detected earlier in time and largier in quantity than other two groups.<br>3. In P-H group, obvious correlation was observed between number of leucocytes in whole saliva and methyl mercaptan contents in mouth air, however, no correlation was observed between number of epithelial cells in whole saliva and methyl mercaptan contents in mouth air. In all subjects, obvious correlation was observed between number of leucocytes and the highest value of methyl mercaptan contents produced incubated whole saliva, however, no correlation was observed between number of epithelial cells and the highest value of methyl mercaptan contents produced incubated whole saliva.<br>4. Number of leucocytes in whole saliva were observed high correlation with gingival score, bleeding, discharge of pus and pocket depth, but no correlation between plaque score.<br>5. Leucocytes in incubated whole saliva degraded rapid and they were almostly not observed in 4 hours after incubation, however, degradation of epithelial cells were observed about 8 hours after incubation.
著者
笠毛 甲太郎
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.12-22, 1997-03-28
参考文献数
35

アーリーコロナイザーズ (early colonizers) の1つで多くの歯周病関連細菌の定着の足がかりになっていると考えられている<I>Actinomyces viscosus</I>の菌体表層成分から, 歯周病関連細菌で成人性歯周炎の有力な原因菌とされている、<I>Porphyromonas gingivalis</I>に対する付着関連物質の1つと考えられる, SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて200kDaを超える高分子量物質 (AvAF) を分離した。分離はSephacryl S-400HRによるろ過, HiTrap Octyl Sepharose 4FFによる疎水性クロマトグラフィー, HiTrap Qによる陰イオン交換クロマトグラフィーにより行った。得られたAvAFの蛋白質あたりの<I>P. gingivalis</I>に対する共凝集阻害活性は12倍に上昇し, 回収率は2.5%であった。AvAFには糖も検出されたことから糖蛋白であることが示唆された。その活性は加熱処理, プロテアーゼ処理に耐性であったが, 過ヨウ素酸処理に感受性があった。よって, AvAFの活性は糖に存在することが明らかとなった。またAvAFは<I>Prevotella intermedia</I>, <I>Fusobacterium nuclea-tum</I>, <I>Capnocytophaga ochracea</I>の<I>A. viscosus</I>に対する共凝集においても阻害作用を示した。
著者
小野寺 健
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.971-983, 1990-12-28
被引用文献数
8

本研究では実験的歯周炎を誘発し,オキシタラン線維の動態を検索した。成犬ポメラニアン11頭を用い,実験群は,歯肉縁下グルーブを形成し縫合糸で結紮し,1,3,6ヵ月経過させた結紮群と,結紮6ヵ月後に縫合糸を除去し,1,3,6ヵ月経過させた除去群とした。その結果,1.病理組織学的に,実験群は辺縁性歯周炎の発症,進行,治癒過程を示した。形態計測学的に,1)上皮・結合組織成分比率は,歯頸部で,結紮群では増加,除去群では減少傾向を示した。2)血管の数・面積は,ポケット底部で,結紮群では増加傾向を,除去群では減少傾向を示した。3)骨成分比率は,歯頸部で,実験群では減少傾向を示した。2.オキシタラン線維は,病理組織学的に,歯肉と歯根膜で,異なる分布・走行を示し,結紮群では,対照群および除去群と比して,オキシタラン線維は長く,数も多かった。形態計測学的に,オキシタラン線維の長さの平均および総和は,結紮群では増加傾向を,除去群では減少傾向を示した。
著者
飯山 正夫 吉田 和史 堀内 博
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.166-172, 1999-06-28
参考文献数
17
被引用文献数
6

本研究の目的は,デジタル画像解析を用いて歯肉発赤状態認識を解明し,歯肉発赤状態の自動認識アルゴリズムの開発のための基礎データを得る事である。10年以上の臨床経験を有する歯科医師9名に対し歯肉デジタル画像4枚を順にモニター画面で提示し,健全/概ね健全,軽度の炎症,発赤状態の著しい重度炎症の3つのカテゴリーに相当する範囲を指定させた。画像は,RGBカラー画像(Red,Green,Blue 各 8 bits)で画素数は2,268×1,764 pixels,記憶容量は約11MBであった。範囲選択の際,形態にはとらわれず歯肉色だけで判断するように確認した。指定された範囲の画素数,R,G,Bそれぞれの平均グレーレベル値を測定し記録した。カテゴリー間の有意差の検定には,Student's t-testを用いた。また,発赤の顕著な歯肉デジタル画像を三原色それぞれのグレーレベルで表示する3枚の画像(R,G,B画像)に分離し,肉眼でみた発赤状態との比較を行った。その結果,R,G,B値での健全/ほぼ健全群と軽度炎症群間でのt値(P値×10つは,それぞれ3.12(2.3),4.16(0.65),3.29(1.4)であり,軽度炎症群と重度炎症群間は,4.45(0.2),9.18(-0.00001),9.45(-0.00001)であった。また,歯肉各所の発赤状態のコントラストで原画像と最もよく相関した画像は,三原色分離画像の中でG画像であり,歯肉発赤状態の視覚認識においてG値の関与が高い事が明らかになった。今後,修正を加えたG値を用いて歯肉発赤認識アルゴリズムの開発を行う予定である。
著者
角田 正健 渡辺 祐作
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.1128-1134, 1988-12-28
被引用文献数
6 1

口臭を客観的に評価する方法としてガスクロマトグラフの応用は極めて有効である。しかしながら,その設備の大きさ,価格などの点で日常臨床での応用には問題点が多い。そこで今回我々は,臨床のチェアーサイドで簡単に使用でき,口臭のレベルをメチルメルカプタンを指標として,ppm濃度で表現出来る口臭検知器を開発した。この口臭検知器は,酸化第二錫を半導体とした臭いセンサーを用い,揮発性硫黄化合物をキャッチした際に生じる電流変化を,マイクロコンピューターにて演算処理して,ppm濃度で液晶表示するものである。口臭患者の呼気をガスクロマトグラフ並びに口臭検知器で分析比較した結果,両者はほぼ同じ値を示し,測定精度の高いものであった。このような成績から,口臭検知器は簡便かつ客観的に口臭のレベルを判定することができ,日常臨床において有用なものであった。
著者
鈴木 邦治 藤川 謙次 岸田 修 高橋 健作 村井 正大 鈴木 直人 前野 正夫 大塚 吉兵衛 鈴木 貫太郎
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.101-109, 1991-03-28
被引用文献数
12

ヒトの歯槽骨に由来する骨芽細胞様細胞の特性を調べるために,歯槽骨片をコラゲナーゼ処理した後に増殖してくる細胞群(E-AB)と,無処理の骨片から増殖してくる細胞群(N-AB)とに分け,両細胞群の細胞特性を比較検討した。細胞数当りのアルカリホスファターゼ活性値は,E-ABの方がN-ABの約7倍高い値を示した。一方,両細胞群の酸性ホスファターゼ活性値は同程度の値であり,N-ABのアルカリホスファターゼ活性値の50%以下の値を示した。また,酒石酸耐性酸性ホスファターゼ活性値は,両細胞群共に酸性ホスファターゼ活性値の約25%程度であった。両細胞群が合成・分泌するタンパク質を^<14>C-proline標識して比較すると,分子量200K以上およびプロコラーゲン・コラーゲンの分子領域に取り込みの多いタンパク質を認めたが,28Kおよび34K付近のバンドはE-ABの方が明瞭であった。マトリックス層にはその他に40〜50K領域に数種のバンドを認めた。
著者
池野 直人 本間 博 石川 純
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.350-361, 1976-09-28
被引用文献数
1

It has been reported that the physical character of the diet influences on the periodontium, and soft food has a tendency to cause gingivitis more than hard food. On the other hand, sucrose has an important role for plaque formation, and so it seems logical to consider that sucrose may also have an influence to cause gingivitis, but very few study has performed to clarify the relationship betwees sucrose and gingivitis. The aim of the present study was to investigate the effect of the soft food containing sucrose on the gingiva and to establish an experimental method to cause gingivitis quickly with food control. One adult male Macaca irus monkey was used and the schedule of this experiment was as follows : 1. Preliminaly period (12 days, Hard food, Scaling and Brushing on every 2 days) 2. Control period (30 days, Soft food without sucrose) 3. Preliminaly period (12 days, Hard food, Scaling and Brushing on every 2 days) 4. Experimental period (30 days, Soft food with 20% sucrose) The result of this study indicated that the gingival inflammation during the experimental period was developed more severly and more fast than that of the control period.
著者
川瀬 俊夫
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.347-352, 2001-12-28
被引用文献数
3 1

歯周病治療の多くは,歯周組織再生を目指し,再生医工学を応用している。GTR膜を用いた歯周組織再生法は早い時期から臨床の現場で行われている。生体材料学的見地からGTR膜を評価し,非吸収性の膜から吸収性の膜への開発がなされてきた。その中でも,異種動物由来の成分を材料にしているものから,人工合成による材料に移行している,あるいはその気配が感じられる。一例をあげればポリ-L-乳酸に期待がもたれている。これと平行して,GTRの一つであるエナメル基質タンパク質(エムドゲイン^<[O!R]>)による再生療法が開発され,臨床的には良好な成績を収めている。術式は異なるものの,歯根膜の組織性幹細胞の動態が鍵を握っている点では共通している。すなわち,この組繊性幹細胞がどのように歯周組織の線維芽細胞,骨芽細胞そしてセメント芽細胞に分化するのかを,ニッチェの概念を導入し,その実態に迫る必要がある。エナメル基質タンパク質が作用するには,第一に,歯根膜の細胞の存在が必須である。それは歯根膜の細胞自ら,多くの組織再生因子を産生しているので,エナメル基質タンパク質はこれらの因子を介して骨髄由来の間葉系幹細胞に働き,歯根膜の組織性幹細胞を骨系の細胞に分化誘導するものと思われる。
著者
織井 弘道 森谷 良智 難波 幸一 海老原 直樹 川本 和弘 伊藤 公一 村井 正大
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.495-502, 1997-12-28
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究は,チタン製インプラントにプラークや歯石が付着した場合を想定し,日常臨床で用いられている種々の清掃法によってチタン表面を処理し,それが培養細胞の初期付着に対してどのような影響を及ぼすのかについて検討したものである。実験材料として,チタンを99.5%以上含むチタン板を実験に供試した。チタン表面にプラークや歯石が付着したことを想定し油性マジックを塗り,それを手用キュレット型スケーラー(HSc),超音波スケーラー(USc),歯面研磨装置(QJ),ラバーカップ(RC:歯面研磨剤を併用),プラスチックスケーラー(PSc)で除去した後の表面粗さ(中心線平均粗さ)を計測した。なお,未処理のチタン板をコントロール(C)とした。次に,そのチタン板を滅菌後,チタン表面にヒト歯槽骨由来骨芽細胞およびヒト歯肉線維芽細胞を播種し,通法に従い3, 6, 12および24時間培養を行い,走査電子顕微鏡により付着細胞数のカウント,細胞形態の観察を行った。その結果,チタン板の表面粗さには,HSc-QJ, HSc-RC, HSc-PSc, HSc-C, USc-QJ, USc-RC, USc-PSc,およびUSc-C間において統計学的有意差が認められた(p<0.05)。走査電子顕微鏡観察によると,HSc, UScによって処理したチタン板上の細胞はCと比較して発育が悪く,付着細胞数も減少傾向にあった。QJでは付着細胞数において減少傾向が見られたが,細胞形態自体にはさほど影響は見られなかった。RC, PScでは細胞形態,付着細胞数ともに良好な結果が得られた。よって,in vitroにおいて,培養細胞の付着様相は粗いチタン表面よりも,平滑なチタン表面のほうが良好であることから,チタン表面がプラークで汚染された場合の清掃法として,プロフィーペーストとラバーカップの併用あるいはプラスチックスケーラーによる方法は,有効であることが示唆された。
著者
難波 幸一 織井 弘道 森谷 良智 内山 寿夫 吉沼 直人 伊藤 公一 村井 正大
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.477-483, 1996-12-28
参考文献数
32
被引用文献数
2

本研究は,チタン表面に形成されたプラークを安全でかつ効果的に除去することのできる清掃法を確立することを目的とし,ラバーカップ,ポリッシングブラシに,各種ポリッシングペースト,浮石沫,水をそれぞれ組み合わせた清掃法が,チタン表面に対してどのような影響を及ぼすのかについて比較検討した基礎的実験である。実験材料として,チタン99.5%以上のチタン板を実験に供試した。チタン表面に油性マジックを塗り,各種清掃法でこれを除去した後の表面粗さを計測した。次に,チタン板を保持装置に固定し,口腔内に装着しプラークを付着させた。このプラークを各種清掃法で除去し,走査型電子顕微鏡を用いてチタン表面性状およびプラークの除去状態を観察し,プラーク付着スコアで評価した。チタンの表面粗さは,全ての清掃法とコントロールの間に統計学的に有意差は認められなかった。また,チタン表面性状およびプラークの除去状態は,48時間口腔内に装着しプラークを蓄積したコントロールと比較し,全ての組み合わせにおいて統計学的に有意差が認められた。この研究結果から各種清掃法は,全ての組み合わせにおいてチタン表面性状を変えることなく短時間でプラーク除去が可能であり,またラバーカップよりもポリッシングブラシを使用した清掃法がプラーク除去効果の高いことが示された。
著者
佐藤 勝 林 敦子 加登 基弘 新田 裕 並河 勇 白木 雅文 勝谷 芳文 岩山 幸雄 平田 健一 木村 健一
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.407-415, 1985-06-28
被引用文献数
2 1

ヒトの口腔内には鞭毛虫類としてTrichomonas tenax (T. tenax)が生息し,歯周疾患の進展と共にその検出率が高くなることが経験的に知られている。しかし本原虫は培養,純培養が困難であるため,その病原性や生物学的性状は不明である。我々はT. tenaxの培養用に新培地を開発し,この培地がT. tenaxの分離,増殖にも優れていることを確認したので今回は,ヒトの歯肉縁下歯垢中における本原虫の分布と検出率を疫学的に調査した。その結果,T. tenaxの検出率と,被検者の年齢,ポケットの深さ,歯肉炎の程度および歯垢集積量の間には密接な関連性が認められた。また歯周療法がT. tenaxの消長に及ぼす影響を検討したところ,臨床症状の改善に伴ってT. tenaxの検出頻度は低下した。