著者
小尾 淳
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
no.19, pp.17-32, 2013

90年代初頭の経済自由化以降、インドは大きな社会変容を遂げつつある。本論文では、社会変動期のインドにおける宗教性を、「宗教のパトロネージ」の概念から捉える。交通インフラの向上に伴い、長距離の移動が格段に容易となったことを受け、都市郊外や海外へ有名寺院の一行が赴き、見世物化した宗教儀礼の巡業など、ダイナミックな宗教的移動が顕著に見られる。本論文の事例となる宗教芸能「バジャナ・サンプラダーヤ」(賛歌の伝統)の巡業や巡礼ツアーも、高い「移動性」に依拠して成立している。これらの需要を生み出し、経済的な受け皿となっているのは宗教活動に寄付を惜しまない中産階級や企業である。現代インドの宗教の特徴の一つとして「移動性」が顕著であること、宗教活動自体が新たな階級表現と捉えられることを指摘する。