著者
石井 一 佐藤 ハマ子 小尾 英樹
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

1.ヒドラゾン化合物の合成と確認図1でn=1,3,5,7のアルキル鎖を有するヒドラゾン(SAAH)および図2の5-ブロモ-,3,5-ジブロモ-及び5-ニトロ置換ヒドラゾン(SSAH)を合成し、元素分析、IR、NMRスペクトル、融点測定を行って合成したヒドラゾンの構造と純度を確認した。2.抽出平衡の実験(1)合成したヒドラゾンの酸解離定数(Ka)及び分配定数(K_D)を求めた。SAAHのK_D値はアルキル鎖を長くすると増加し(炭素原子1個当りlog K_Dで0.64)、Ka値もアルキル鎖を長くすると増加した。SSAHの場合も、ブロモあるいはニトロ基の導入はKa値及びK_D値に対して極めて有効であった。(2)レアメタルとしてPr,Eu,Yb(一括してLn)を選び、各ヒドラゾンを用いて抽出実験を行い、錯体の結合比、半抽出pH、抽出定数(Kex)を求めた。その結果、いずれのLnもTBP及びClO^-_4の存在下で(Ln^<3+>)(HL^-)_2(TBP)_3(ClO^-_4)錯体として1,2-ジクロルエタンに抽出された。電子吸引性の導入は錯体のKex値の増大に極めて有効であった。3.抽出速度の検討図1でn=7のヒドラゾン(SOH)とYb(III)との抽出反応を速度論的に検討した。その結果、SOHによるYb(III)の抽出は二通りの反応経路、すなわち、Yb^<3+>+HL^-→P及びYb・TBP^<3+>+HL^-→Pで進行し、水相中で1:1錯体の生成反応が律速段階であることがわかった。以上の結果より、合成した一連のヒドラゾン化合物の中では、図2でX及びYにブロモ基を導入したヒドラゾン(DBSAH)がランタノイドの抽出剤として最もバランスのとれた有用な抽出剤であることを実証した。