著者
小島 望
出版者
川口短期大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は,森・川・海と人と暮らしのかかわりのなかで,地域で長く受け継がれてきた「伝統 知」の掘り起しを行ない,同時に,自然環境が開発等人為的影響によってどのように変化してきたかについて,①現地での聞き取りやアンケート調査,②文献検索によって明らかにすることが目的である.調査地はおもに,熊本県人吉市(球磨川流域),徳島県那賀町の2ヵ所を中心とするが, 隣接する周辺地域や,特徴的な伝統的農林水産業を営んでいる場所についてはこの2ヵ所に限らず調査を行なっている.①現場での聞き取りから,例えば球磨川流域では,かつての人々の暮らしが詳細にみえてきた.かつてこの地には「水害」という言 葉はなく,台風や集中豪雨の際には,川と上手くつき合ってきた歴史や知恵が集積されている.数々の「伝統知」を集めることができた.しかし,科学的な災害対策,特に河川工学的治水対策が中心となった特に戦後以降は,それら「伝統知」は通用しなくなり,姿を 消していった.球磨川に幾つものダムができて以来,同時に,地域住民と川との関係が変化していったのは当然であろう.このような 背景があったからこそ,川辺川ダム計画は中止されたといえる.那賀町(旧木頭村)においては,山や川と深く関りをもった伝統的な暮らしを探ることによって,戦後の経済成長政策が中山間地を犠牲に成り立っていたかを考察するための材料を得ることができた.また,拡大造林や下流域のダムの影響など近代化によって「伝統知」が失われつつあったが,ダム建設反対運動を通して,かつての人と自然のつき合い方が問われたという事実が見い出すことができた.②収集した様々な資料によって,日本各地での伝統的な川や山と人の暮らしの比較検証を行なうことで,今後の農林水産業のあり方 や,ダムを中心とする河川構築物が水産業へいかに大打撃を与えたのかについての様々な情報を得ることができた.
著者
小島 望
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 = Japanese journal of conservation ecology (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.61-69, 2006-06-25
参考文献数
42
被引用文献数
2

セイヨウオオマルハナバチ排除活動(在来および外来マルハナバチのモニタリング)が2004年5月21-23日に北海道日高地方南部の鵡川町と厚真町で行なわれ、36人、延べ人数90人が参加した。排除活動中に捕獲または目撃された頭数を用いて外来種と在来種の比率を調べた結果、エゾオオマルハナバチに対するセイヨウオオマルハナバチの比率は前年度の約30倍に達した。本排除活動は、(1)セイヨウオオマルハナバチの実質的な抑制効果に加え、(2)研究者と市民の交流の場とすること、(3)次世代の人材育成を意識すること、(4)協賛企業を募ることを目的とした。外来種対策にとって最も重要な点は、ボランティア調査員を含め市民の参加を促し、研究者と協働することによって外来種問題を深く理解することにある。市民と研究者が協働で行なう外来種排除活動は、環境教育的な側面から外来種問題を訴える効果的な普及啓発の方法となり、かつ情報共有のための有力な手段となると考える。