- 著者
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湯浅 勲
小島(湯浅) 明子
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- pp.165, 2006 (Released:2008-02-28)
【目的】食物繊維による大腸ガンの予防メカニズムとして、発ガン物質の吸着や希釈による腸管上皮への曝露の減少、食物繊維中のフィチン酸による鉄ラジカルのキレートあるいは胆汁酸の抱合による排泄などが考えられているが、その詳細についてはいまだ明らかにされていない。本研究では食物繊維が腸内細菌による発酵・分解によって生成される短鎖脂肪酸に着目し、ヒト大腸ガン細胞(HT-29)の増殖におよぼす影響について検討した。【方法】HT-29細胞は10%FBSを含むDMEM培地に播種し、細胞を付着させた後、培地交換をおこない実験に供した。短鎖脂肪酸はナトリウム塩を用い、蒸留水に溶かした後、最終濃度が1または2mMになるように添加した。細胞生存率はTrypan-blue法を、細胞周期はLaser Scanning Cytometerを用いて測定した。【結果】食物繊維の発酵・分解により生成される酢酸、プロピオン酸と酪酸についてヒト大腸ガン細胞の増殖におよぼす影響について調べたところ、酪酸が最も強くガン細胞の増殖を抑制した。また、その抑制は細胞周期をG2/M期で停止させることによって誘導されることが明らかとなった。一方、酪酸と同時に活性酸素の消去酵素であるカタラーゼを添加すると、細胞増殖能は回復することから、酪酸によるガン細胞増殖の抑制作用には活性酸素が関与していることが示唆された。【考察】腸内細菌による食物繊維の発酵・分解によって生成される酪酸は、強いヒト大腸ガン細胞増殖抑制効果を有することが明らかとなった。また、その有効濃度は大腸内で生理的に産生される濃度(約10 mM)以下であった。これらのことから、食物繊維による大腸ガン抑制のメカニズムに酪酸が関与する可能性が示唆された。