著者
秋山 綾乃 広瀬 大 小川 吉夫 一戸 正勝
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.45, 2011

ブルーチーズは, 代表的なカビ付け成熟型チーズのひとつで, その生産には<I>Penicillium roqueforti</I>が用いられている.生産過程でのこの菌の添加は, 特有の臭いとテクスチャーを生むことになる.ブルーチーズとして有名なのは, ロックフォールト(フランス), フルム・ダンベール(フランス), ゴルゴンゾーラ(イタリア), スティルトン(イギリス)などで, 今日では, これらの他にもデンマーク, ドイツ, スイスなどのヨーロッパ諸国において, また, 日本においても<I>P. roqueforti</I>を用いたカビ付け成熟型チーズが生産されている.これら多様な原産地と製法の相違は, いくつかの遺伝的に変異した<I>P. roqueforti</I>がブルーチーズ生産に用いられていることを予想させる.本研究では, 市場で入手した34種のブルーチーズの各々から<I>P. roqueforti </I>を分離し, beta-tubulinのイントロンを含む部分塩基配列(447塩基対)を基にその遺伝的変異を近隣結合法により解析した.分離された34株は, 2つのクレードに分割され, 一方のクレードは, 4種のロックフォールから分離された4株を含29株から成り, もう一方のクレードはフルム・ダンベールから分離された1株を含む5株から成っていた.ロックフォールとフルム・ダンベールの2つは, 最も古くから生産されているブルーチーズで, その歴史はローマ時代にまで遡るといわれている.これら古くから生産されている2つのチーズの生産で異なる系統の菌株が使用されていることは興味深い.ただし, これら2つの系統間で異なる塩基配列数は2塩基のみで, 近縁の<I>P. roqueforti</I>がブルーチーズの生産に用いられているものと考えられる.ブルーチーズの風味やテクスチャーの相違は使用する原乳や共存する微生物の相違によってもたらされると思われる.