著者
常盤 俊之 広瀬 大 野中 健一 石崎 孝之 廣岡 裕吏
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.jjom.H30-01, 2018-05-01 (Released:2018-06-09)
参考文献数
14

ボタンタケ科子嚢菌類,Hypomyces tremellicola ならびにSphaerostilbella micropori を本邦より採集分離し,形態的特徴を記載した.この2 種は日本新産種であり,S.micropori は原産地以外からの初報告である.
著者
常盤 俊之 広瀬 大 野中 健一 三川 隆
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.5-14, 2023-05-01 (Released:2023-07-22)
参考文献数
45

日本産多孔菌類子実体に寄生するCladobotryum属菌を調査した結果,日本新産種であるC. arthrobotryoidesならびにC. caribense, C. protrusumを報告した.Cladobotryum arthrobotryoidesは,小歯状に発達した分生子形成細胞からシンポジオ状に単生する2隔壁の分生子が特徴的である.Cladobotryum caribenseは長連鎖性で釣鐘型の分生子を形成する.Cladobotryum protrusumは,分生子形成細胞は出芽型,分生子が淡緑性の色調を特徴とする赤色色素産生菌である.
著者
大園 享司 広瀬 大 Takashi Osono Dai Hirose
出版者
同志社大学ハリス理化学研究所
雑誌
同志社大学ハリス理化学研究報告 = The Harris science review of Doshisha University (ISSN:21895937)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.41-51, 2020-04-30

樹木の生葉に由来する内生菌が枯死葉からも出現しその分解に関与することが知られている。本総説では、樹木の葉リターの分解に関わる内生菌の分類と生態を集約した。内生菌の葉リターにおける出現、定着、遷移、存続と、分解プロセスへの貢献についてまとめた。環境DNAを対象とした分子生物学的手法を用いた予備的な研究から、亜熱帯林と熱帯林の樹木葉でのリグニン分解に果たす内生菌の役割は小さいことが示唆された。
著者
常盤 俊之 広瀬 大 野中 健一
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.111-117, 2021-11-01 (Released:2021-12-28)
参考文献数
37

日本産イグチ類子実体に寄生するSepedonium属菌を調査した結果,日本新産種であるS. chalciporiとS. laevigatumを発見した.S. chalciporiはコショウイグチを寄主とし,輪生状に発達したフィアライドと表面構造が樽状の疣状突起となる厚壁胞子が特徴的である.また,S. laevigatumは,顕著に長いフィアライドと表面構造が緻密な結節状の厚壁胞子により特徴づけられる.
著者
長尾 侑架 大園 享司 広瀬 大
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.85, 2011

葉や茎を変形させてアリ類を営巣させ、それらのアリ類と密接な相利共生関係を結ぶ植物をアリ植物という。アリと菌類の共生関係として、ハキリアリ類との栽培共生がよく知られている。近年では、アリ植物やその共生アリとのあいだにユニークな関係を持つ菌類が相次いで発見されており、植物―アリ―菌類の三者間相互作用系に注目が集まっている。演者らは、アジア熱帯に分布するアリ植物のオオバギ―シリアゲアリ共生系を材料として、この相互作用系を明らかにする目的で研究を進めている。本発表では、<I>Macaranga bancana</I> 茎内のアリの巣から出現する菌類の多様性と機能についての予備調査の結果を報告する。2009年6月にマレーシアのランビルヒル国立公園において、内側がアリ室として利用され黒色化した茎(直径1cm、長さ2cm、軸方向に半分割)20片を採取した。これら試料片を20℃の湿室内で2週間培養し、出現した菌類の形態観察とDNA塩基配列(ITS領域、28S)により分類群を検討した。その結果、9分類群の菌類が得られた。<I>Nectria haematococca</I> と<I>Lasiodiplodia theobromae</I> の2種はいずれも20試料片中13片(出現頻度65%)ともっとも高頻度で出現した。<I>L.theobromae</I> はマンゴーやカカオの病原菌として知られるが、本種の黒色菌糸はアリ室内部の黒色化に関与している可能性がある。<I>Isaria takamizusanensis</I> はアリ室に共生するカイガラムシの関連菌と推察される。このほか昆虫関連菌と考えられる分類群や、リター菌・土壌菌である<I>Aspergillus niger</I> などが分離された。加えて、アリ植物の葉に見られるfood bodyおよびアリからも菌が分離されており、その結果も合わせて報告する。今後はこれらの菌類種のアリ室における生態的な役割を調べるとともに、オオバギ属の他の植物種を対象とした菌類多様性の比較調査を行う予定である。
著者
秋山 綾乃 広瀬 大 小川 吉夫 一戸 正勝
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.45, 2011

ブルーチーズは, 代表的なカビ付け成熟型チーズのひとつで, その生産には<I>Penicillium roqueforti</I>が用いられている.生産過程でのこの菌の添加は, 特有の臭いとテクスチャーを生むことになる.ブルーチーズとして有名なのは, ロックフォールト(フランス), フルム・ダンベール(フランス), ゴルゴンゾーラ(イタリア), スティルトン(イギリス)などで, 今日では, これらの他にもデンマーク, ドイツ, スイスなどのヨーロッパ諸国において, また, 日本においても<I>P. roqueforti</I>を用いたカビ付け成熟型チーズが生産されている.これら多様な原産地と製法の相違は, いくつかの遺伝的に変異した<I>P. roqueforti</I>がブルーチーズ生産に用いられていることを予想させる.本研究では, 市場で入手した34種のブルーチーズの各々から<I>P. roqueforti </I>を分離し, beta-tubulinのイントロンを含む部分塩基配列(447塩基対)を基にその遺伝的変異を近隣結合法により解析した.分離された34株は, 2つのクレードに分割され, 一方のクレードは, 4種のロックフォールから分離された4株を含29株から成り, もう一方のクレードはフルム・ダンベールから分離された1株を含む5株から成っていた.ロックフォールとフルム・ダンベールの2つは, 最も古くから生産されているブルーチーズで, その歴史はローマ時代にまで遡るといわれている.これら古くから生産されている2つのチーズの生産で異なる系統の菌株が使用されていることは興味深い.ただし, これら2つの系統間で異なる塩基配列数は2塩基のみで, 近縁の<I>P. roqueforti</I>がブルーチーズの生産に用いられているものと考えられる.ブルーチーズの風味やテクスチャーの相違は使用する原乳や共存する微生物の相違によってもたらされると思われる.