著者
市川 雷師 守屋 達美 保坂 辰樹 福西 智子 沖崎 進一郎 小川 顕史 鈴木 貴博 松原 まどか 高田 哲秀 田中 啓司 藤田 芳邦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.495-500, 2010 (Released:2010-08-19)
参考文献数
19
被引用文献数
2

症例は65歳の男性.2型糖尿病で食事療法,インスリン療法を受けていたが,HbA1cは7~9%台であった.2008年9月下旬感冒を契機に食思不振となり,インスリン注射を中断した.10月12日意識障害,異常行動を主訴に当院を受診し,糖尿病性ケトアシドーシス(Diabetic ketoacidosis:以下DKAと略す)の診断で入院した.第2病日から腹痛を訴え,腹部CTで門脈ガスを認めた.腸管壊死を疑い上腸間膜動脈造影を行なったが,血栓や閉塞はなく非閉塞性腸管虚血症(Nonocclusive mesenteric ischemia:以下NOMIと略す)と診断した.血管拡張薬の持続投与も効果なく,第3病日緊急手術を施行し救命できた.NOMIは特徴的所見がなく診断が困難であり死亡率も高い.DKAでは腹痛を訴える症例が少なくなく,鑑別としてNOMIも念頭に置き診療にあたる必要がある.