- 著者
-
鈴木 孝治
小松 広和
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究では、元来、最も高感度な分析の一つと位置付けられる質量分析(MS)の感度をさらに増大させると同時に、より確実な定量分析法とするため、LC-MS向きの最適なラベル化試薬を多数開発した。こようなラベル化試薬(MSプローブ)はすでにいくつかを開発していた。しかしながら、本来、MSプローブはもっとポテンシャルがあり、その応用展開はもっと広いはずべきものであり、基礎研究に戻り、さまざまな物質の質量分析に有用なMSプローブの設計を、応用を見据えて検討した。主なMSプローブに関する研究は、以下のようである。1)低分子(イオン)測定用MSプローブの開発研究金属イオン分析用質量分析試薬として、多価重金属カチオン用の配位分子の構造とMS用ラベル化試薬としての性能の相関を詳しく調べた。この場合、KHM1〜10は再合成し、KHM11-36は新たに設計した。また、ヘテロ分子構造のジュエルペンダントリガンドや、フルオロイオノフォア(KMG/KCM分子など)の質量スペクトルを検討して、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、チアクラウンエーテル、その他非環状のヘテロ原子を含むポリエーテルなどの金属配位に富む10種を超える金属カチオン用の質量分析試薬を開発した。さらに、対イオンとして存在するアニオン測定用MSプローブKHM11〜15も検討した。2)高分子(主としてタンパク質)測定用MSプローブの開発研究高分子用のLC-MS用ラベル化試薬として、光解裂型MSプローブを合成し、分子構造と質量スペクトルの関係を詳細に検討した。この場合CREST研究で開発したエステル型分子のMSプローブではなく、エーテル型分子のMSプローブを新たに合成した。これは前者では光解裂により、アニオン性のカルボン酸型になってしまうが、後者の新プローブでは,その問題を解決でき、その結果感度の増加が図れた。このプローブは、光解裂後、ESI-MSで測定できるほか、MALDI法でも十分な再現性や定量性がみられた。このMSプローブは、さまざまな高分子化合物の分析に適するラベル化試薬であり、質量スペクトルを活用して生体、環境などのあらゆる物質情報を入手するのに効率のよい手段を提供するものである。