著者
宮澤 克人 鈴木 孝治
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.577-581, 2004-08

尿路結石の再発予防に対して適切な飲料物を,市販の缶またはペットボトル飲料の成分分析により考察した.また尿路結石の既往がない正常男子6名を対象にビール350ml×3缶飲酒前後の24時間尿の尿生化学検査を行い,ビールの尿路結石形成への影響を検討した.麦茶,ミネラルウォーター,オレンジジュース,ワインは尿路結石形成・再発予防に対して適切な成分を含有していた.ビール飲酒により尿量は有意に増加し,尿浸透圧と尿中クエン酸排泄量は有意に低下したが,尿中尿酸排泄量の有意な増加は認めなかった.ビールに比べプリン体カット発泡酒は容認できる飲料物と考えられるが,尿中クエン酸排泄量低下のリスクがあり,食事同様バランスを考慮した摂取が必要であるThe incidence of upper urinary stones has been increasing since World War II in Japan. One of the causes is the change in dietary habit to a more westernized diet. The consumption of animal protein, fats and oils also correlates with the incidence of upper urinary stones. The results of numerous treatments for preventing formation of calcium stones are not sufficient, and the improvement of daily life habits and dietary advice have been proposed to be important. An increased intake of fluid is of great value for patients with stone diseases, irrespective of the stone composition. We discuss whether or not non-alcoholic and alcoholic beverages, are appropriate for prevention of stone diseases from the viewpoint of the contents of the beverages.
著者
石井 政憲 城戸 滉太 太田 力 柴田 寛之 山田 健太郎 鈴木 孝治 チッテリオ ダニエル
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.94-105, 2016-02-10 (Released:2016-02-13)
参考文献数
29

患者のすぐそばで行える医療診断 (その場診断) が重要であるという考えが,臨床現場において普及しつつある.近年,マイクロ流路を紙の上に設けることで,コストやユーザーの負担を抑えながら,実用に即した分析ができる検査チップを開発する研究が世界的に盛んである.2007年,Whitesidesらにより提唱されて以来注目を集め,現在ではmicrofluidic paper-based analytical devices (μPADs) の呼称が定着している.マイクロ流路と身近な素材である紙の組み合わせにより,複雑な操作を伴う分析や多重項目測定を,比色法や蛍光法,電気化学的手法などを用いて,低コストかつ簡便に行えるμPADsが数多く開発されている.μPADsは基材が紙であることから,主に印刷による作製技術が進歩を見せている.中でも,様々なデバイス生産で工業的にも活躍しているインクジェット技術が,μPADsの大量生産や機能性付与が可能なアプローチとして着目されている.本稿では,将来の実用化に期待の集まるμPADsの製作技術や応用例の現状について,特に汎用性の高いインクジェット技術に焦点を当てながら解説する.
著者
池田 龍介 鈴木 孝治 田中 達朗 谷口 利憲 白岩 紀久男 卞 在和 津川 龍三 中村 武夫 岩佐 嘉郎 田近 栄司
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.183-189, 1984-02

当科において1974年より1981年までの7年4ヵ月,富山県立中央病院泌尿器科において1961年より1981年までの20年11ヵ時間と経験した尿路結石のうち,赤外線分光分析が行なわれた1514結石についてマイクロコンピューターを用いて臨床的分析を試みた.男子930例,女子344例,年齢は1歳より90歳に及び平均は男子44.7歳,女子41.6歳であった.結石成分分析には日立赤外線分光光度計EPI-G3型を,マイクロコンピューターとしてはSHARP MZ-80Cを用い,年齢,性別,発生部位,内層成分,外層成分,血清電解質,尿中電解質などを入力し,color display, green display, printer, X-Y plotterに出力,表示させた.4年前に報告した300個の結石における成績と比較すると,若干の変化が見られ,年齢分布において腎結石,膀胱結石含有患者の老齢化の傾向が認められたIn our laboratories, more than 1,500 urinary calculi have been analyzed by infrared spectroscopy. These data were statistically analyzed by microcomputer. The most frequent type was calcium oxalate combined with calcium phosphate, followed by pure calcium oxalate and magnesium ammonium phosphate combined with calcium phosphate. In particular, the composition of magnesium ammonium phosphate combined with calcium phosphate increased as compared with that four years earlier. Four years ago, we spent one month to statistically analyze 300 urinary calculi. But in this study, only sixteen days was required to analyze 1,500 urinary calculi by using a microcomputer.
著者
江川 雅之 並木 幹夫 横山 修 鈴木 孝治 布施 秀樹 三崎 俊光
出版者
医学図書出版
雑誌
泌尿器外科 = Japanese journal of urological surgery (ISSN:09146180)
巻号頁・発行日
vol.17, no.8, pp.943-946, 2004-08-01

1987年から1996年に, 北陸地区で治療された457例の臨床病期B前立腺癌について調査し, 特に内分泌療法(248例)と前立腺全摘除術(199例)を比較した. この2群間では, 全生存率, 疾患特異的生存率ともに差はなく手術の優位性は示されなかった. 組織型別では, 内分泌療法が施行された高分化癌(56例)で癌死症例は認められなかったが, 低分化癌(49例)の予後は不良であり全摘群との間に有意な差が認められた. 臨床病期B前立腺癌に対する標準治療法として, 米国ではNCI-PDQが, ヨーロッパではEAU Guidelinesなどに代表される, エビデンスに基づくガイドラインが示されている. NCI-PDQでは, リンパ節郭清を伴う前立腺全摘除術や外照射療法に加え, careful observationなどが推奨されている. 内分泌療法は, neoadjuvant hormone therapy(NHT)がclinical trialとして施行可能である. 一方ヨーロッパでは, 期待余命10年以下の高および中分化癌でwatchful waiting, 低分化癌で放射線療法が推奨されている.
著者
松田 智行 上岡 裕美子 木下 由美子 鈴木 孝治 伊藤 文香 浅野 祐子 富岡 実穂
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P3204, 2010

【目的】安心できる在宅療養を送るためには、在宅療養者と家族に対する被災予防と災害時の対処方法の準備が必要である。災害時の対処については、在宅療養者と家族、住民の自助と共助だけではなく、訪問看護ステーション(以下、訪問看護)、市町村、保健所を中心とした地域ケアシステムによる支援が必要である。そこで、本研究は、訪問看護師の協力を得て、地震時要援護者(以下、要援護者)となる在宅療養者の避難方法を検討した。今回は、避難方法を検討した5例のうち1例について報告する。なお、避難方法とは、被災予防への準備と、自宅から避難所までの避難練習とした。<BR>【方法】対象は、要援護者、避難を支援する家族と協力可能な近隣者(以下、支援者)、訪問看護師とした。本例の要援護者は、在宅療養期間が9年間の30歳代半ばの男性であった。主な疾患は、交通事故による脳挫傷であった。支援者は、母親と叔母であった。<BR>方法は、要援護者の避難方法の実施にあたり、自宅を訪問し、1)から3)の手続きに基づき実施した。<BR>1)事前調査<BR>要援護者の生活機能を把握するため、調査票を作成した。調査項目は、支援状況、居宅環境(主な生活の場所、自宅から避難所までの距離、移動と移乗機能、住宅環境)、療養状況(医療用器具の装着の有無、コミュニケーション)、身体運動機能(筋力、関節可動域、姿勢保持と体位変換能力)、希望する避難方法とした。<BR>2)避難方法計画の立案<BR>事前調査を基に、要援護者と支援者、訪問看護師、研究者(理学療法士、作業療法士、保健師各1名)が、避難方法計画を立案した。<BR>3)被災予防の説明と避難練習の実施<BR>避難方法計画を基に、要援護者と支援者に対して、被災予防への準備を説明し、避難練習を実施した。なお、避難練習経路は、自宅から避難所へ向かい、片道5分程度で移動できる範囲とし、避難練習の様子は、ビデオで撮影した。<BR>【説明と同意】対象者に対して、研究の内容を書面にて説明し、同意を得た。なお、本研究は、茨城県立医療大学倫理委員会の承認を受け、実施された。<BR>【結果】要援護者の支援状況に関して、訪問看護週3回、訪問診療週1回、短期入所月10日間を利用していた。居宅環境に関して、主な生活の場所は、寝室であった。自宅から避難所までの距離は、約2.5kmであった。移動と移乗機能は、ベッド移乗全介助であった。3年前は、移動式リフターを使用し、ティルトアンドリクライニング式車椅子(以下、車椅子)に乗車していた。住宅環境は、寝室から玄関までは段差がなかった。玄関は、幅が150cmであり、戸外まで既設スロープが設置されていた。療養状況に関して、医療用器具は、気管カニューレ、腸ろう、膀胱ろうを装着していた。コミュニケーションは、痛みに対する表出は可能であったが、言語理解は、困難であった。身体運動機能に関して、頸部と四肢の随意運動は困難であり、肩、股、膝関節可動域は、45度以上の屈曲は困難であった。姿勢保持は、座位は困難であり、体位交換は、自力では行えなかった。<BR>避難方法計画の立案過程において、母親は、地震時、要援護者をベッドに臥床させ、ベッドを押して移動する方法を考えていた。理学療法士が、背もたれを最大限に傾斜させた車椅子に乗車させ、戸外に移動する方法を提案し、母親の賛同を得た。この方法を、避難方法計画とし、実際に支援者が避難練習を行い、戸外まで安全に避難をすることができた。さらに、被災予防への準備として、日常品の備蓄、家具の転倒防止と落下物の防止による身体保護と避難経路の確保について説明した。<BR>支援者の地震時の避難に対する認識は、避難練習実施前は、「地震時には避難ができるか心配である。」であったが、実施後は、「避難が可能であることを知り、自信がついた。」と変化した。<BR>【考察】本例では、支援者が、実施可能な避難方法を考え難い状況であった。その中で、理学療法士が避難方法を提案し、避難練習を行い、安全に実施することができた。その結果、支援者は、避難をすることが可能であることを認識し、避難に対する自信を得ることができたと考える。安心できる在宅療養を送るためには、被災時の避難方法について検討し、実施することが、有効な手段であると考える。本研究は、訪問看護師の協力により実施したが、より広範囲な地域ケアシステムによる支援も含めた避難方法を検討する必要がある。そのため、今後は、訪問看護、市町村、保健所に、避難練習の記録映像を貸出ができるようにする予定である。<BR>本研究は、科研費(20659364)の助成を受けたものである。<BR>【理学療法学研究としての意義】地震時の理学療法士の関与は、避難所における活動に関する報告があるが、自宅から避難所までの避難方法に関する報告は少ない。在宅療養者の要援護者に対する避難方法を検討することは意義がある。
著者
松田 智行 上岡 裕美子 伊藤 文香 鈴木 孝治 富岡 実穂 木下 由美子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.449-459, 2011
参考文献数
14
被引用文献数
1

【目的】地震を想定した災害時要援護者(以下,要援護者)に対する避難支援の地域ケアシステムを構築することを目的に,移動に障害を有する要援護者の避難訓練を報告し,避難支援に対する理学療法士の必要性を提言する。また,避難訓練の事例集(以下,事例集)を作成し,事例集が地域の保健医療専門職にどのような点で有用であるのかを検討する。【方法】要援護者5名に対して,研究者らが独自に作成した調査票と実施手順をもとに避難訓練を実施した。さらに,茨城県内の市町村と保健所,訪問看護ステーションの149名に,5事例の事例集を配布し,郵送にて利用方法に関する質問紙調査を行った。【結果】5事例のうち,自力での避難が困難な2事例について詳細な報告を行う。2事例に対して,停電を考慮した避難方法を指導し,屋外への避難訓練が実施できた。質問紙調査は,22件(回答率14.9%)の回答があり,事例集の主な活用方法は,要援護者とその家族,専門職種への避難支援教育の教材であった。【結論】地域ケアシステム構築に向けて,避難を可能にするために地震発生前からの理学療法士の関与は重要である。さらに,事例集は,避難支援教育の教材として有用である可能性が示された。
著者
石川勲 近澤 芳寛 佐藤 一賢 奥山 宏 今村 秀嗣 羽山 智之 山谷 秀喜 浅香 充宏 友杉 直久 由利 健久 鈴木 孝治 田中 達朗
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医大誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.522-530, 2005
被引用文献数
1

金沢医科大学腎移植チームでは,1975年3月より2005年6月30日までの約30年間に,260例の腎移植を行ってきたが,この間における移植成績の向上には隔世の感がある。これには長年にわたる経験の積み重ねに加え,免疫抑制療法や急性拒絶反応に対する治療法の飛躍的な進歩が深く関わっていると思われる。そこで我々が行ってきた腎移植の成績はどのように変化してきたか,また移植腎が生着し,現在も外来に通院中の患者について現状はどうかまとめてみた。腎移植260例の内訳は,生体腎移植212例,死体腎移植48例で,生体腎移植は透析導入直後の例で多く,死体腎移植は長期透析例で多かった。また提供者をみると生体腎移植では親が多く,死体腎移植では若い人から高齢者まで様々であった。30年にわたる移植時期を10年ごとに区切って,その間の移植成績をみると,すなわち,免疫抑制薬としてステロイドとアザチオプリンを使用した最初の10年,それに続き,ステロイド,アザチオプリン,シクロスポリンを使用した次の10年,さらに,ステロイド,ミコフェノール酸モフェチル,シクロスポリンまたはタクロリムスを使用したここ10年に分けて,5年腎生着率を比べてみると,それぞれ68.3%(n=89),73.0%(n=86),93.7%(n=37)と大きく向上してきている。1975年に行われた最初の4例は現在も生着し,腎機能も良好である。またこの間12例の患者が18児を出産した。外来通院中の134例について高血圧の頻度は86.6%で,うちコントロール良好例は86.2%,糖尿病の頻度は18.7%で,うちコントロール良好例は80.0%であった。以上より金沢医科大学における腎移植の成績は良く,生活習慣病関連事項もコントロール良好と言える。近年では,移植数の減少が最大の問題点となってきている。死体腎移植に対するさらなる理解と啓発・提供者の増加,生体腎移植における適応の拡大(ABO不適合移植,夫婦間移植)がなによりも求められるところである。
著者
栗原 一嘉 鈴木 孝治
出版者
日本分析化学会
雑誌
ぶんせき (ISSN:03862178)
巻号頁・発行日
vol.328, pp.161-167, 2002-04-05
参考文献数
12
被引用文献数
4
著者
安田 幸雄 黒田 尚宏 堀 有行 相野田 紀子 大原 義朗 鈴木 孝治
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医科大学雑誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.408-412, 2005-12
被引用文献数
1

医学教育評価には客観試験が多用されている。中でも多肢選択問題(MCQ)は単位時間当たり多くの問題を出題できるため,信頼性が高い。また事前に合格ラインを決定できること,事後に問題の良否を検討できることも優れた特徴である。しかし,臨床能力の評価法としての妥当性はやや劣る。医師国家試験(国試)にはMCQが使用されており,信頼性の高さは認められている。また近年の出題基準の改訂により妥当性も向上していると考えられる。国試にはAタイプ,Kタイプ,Xタイプの3種類が使用されているが,Aタイプが最も知識レベルを正しく反映し,Kタイプが多くなるほど正答率は上がり,Xタイプが多くなるほど正答率は大きく下がると推測される。共用試験のコンピュータ試験(CBT)トライアルにはMCQのうち,AタイプとRタイプが使用されている。Rタイプは臨床問題解決能力を評価するのにより適した方法と考えられている。CBTはいつでもどこでもテストが受けられることを目指している。この条件を満たすためには,膨大な数の問題をプールしておくだけでなく,異なる問題セットで受験者を適正に評価する方法論が必要となる。項目反応理論(IRT)はこの目的で開発された新しいテスト理論で,受験者の絶対評価を目指している。このテストが実施されるようになると,医学教育は変貌を余儀なくされるものと予想される。
著者
鈴木 孝治 小松 広和
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、元来、最も高感度な分析の一つと位置付けられる質量分析(MS)の感度をさらに増大させると同時に、より確実な定量分析法とするため、LC-MS向きの最適なラベル化試薬を多数開発した。こようなラベル化試薬(MSプローブ)はすでにいくつかを開発していた。しかしながら、本来、MSプローブはもっとポテンシャルがあり、その応用展開はもっと広いはずべきものであり、基礎研究に戻り、さまざまな物質の質量分析に有用なMSプローブの設計を、応用を見据えて検討した。主なMSプローブに関する研究は、以下のようである。1)低分子(イオン)測定用MSプローブの開発研究金属イオン分析用質量分析試薬として、多価重金属カチオン用の配位分子の構造とMS用ラベル化試薬としての性能の相関を詳しく調べた。この場合、KHM1〜10は再合成し、KHM11-36は新たに設計した。また、ヘテロ分子構造のジュエルペンダントリガンドや、フルオロイオノフォア(KMG/KCM分子など)の質量スペクトルを検討して、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、チアクラウンエーテル、その他非環状のヘテロ原子を含むポリエーテルなどの金属配位に富む10種を超える金属カチオン用の質量分析試薬を開発した。さらに、対イオンとして存在するアニオン測定用MSプローブKHM11〜15も検討した。2)高分子(主としてタンパク質)測定用MSプローブの開発研究高分子用のLC-MS用ラベル化試薬として、光解裂型MSプローブを合成し、分子構造と質量スペクトルの関係を詳細に検討した。この場合CREST研究で開発したエステル型分子のMSプローブではなく、エーテル型分子のMSプローブを新たに合成した。これは前者では光解裂により、アニオン性のカルボン酸型になってしまうが、後者の新プローブでは,その問題を解決でき、その結果感度の増加が図れた。このプローブは、光解裂後、ESI-MSで測定できるほか、MALDI法でも十分な再現性や定量性がみられた。このMSプローブは、さまざまな高分子化合物の分析に適するラベル化試薬であり、質量スペクトルを活用して生体、環境などのあらゆる物質情報を入手するのに効率のよい手段を提供するものである。
著者
津川 龍三 江原 孝 池田 龍介 下 在和 鈴木 孝治
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.1111-1117, 1991-07-20
被引用文献数
2

1978年,透析歴7年の24歳男子に両腎に多発した嚢胞と,さらに右側に腎癌を発生した例を経験し,調査の結果Dunnillの報告したacquired cystic diseaseと判明した。以後現在までに計8例を経験した。平均年齢は1例を除き32歳と若く,透析歴は8年,男女比は7:1である。うち2例は両腎摘除後に腎移植を行い,1例は生着生存中であり,1例は拒絶反応により再透析となり,子宮体癌+卵巣癌による癌性腹膜炎で死亡した。また1例は腎移植後良好な機能を有しつつ8年後に固有腎に腎癌が発見され摘除した。これらの症例を病理学的にみると,病変は1〜3cmの球形で腎内に限局し,Robson-I(わが国の腎癌取扱い規約T-1)に相当し,組織学的に多くは淡明細胞癌であった。興味深い所見は,癌病変以外の同側,さらには他側の嚢胞壁上皮に多層化,乳頭状増殖をみることである。治療としては,腎摘除を行った。2例を除いて6例は腰部斜切開とした。副腎は含めず,いわゆる単純摘除とした。全例再発転移はない。acquired cystic diseaseと腎癌の合併の原因は不明であるが,1) ある種の代謝物の蓄積による発癌性,2) 免疫監視能の低下が考えられ,いずれも透析例に該当する考え方であり,免疫抑制剤が使用される移植は,2)が該当しよう。慢性腎不全患者については透析,移植を問わず,固有腎にも常に注目し,定期的にCT,超音波検査を実施し,早期発見,早期摘除が重要である。