著者
大場 孝裕 小松 鷹介
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第128回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.771, 2017-05-26 (Released:2017-06-20)

一夫多妻型あるいは乱婚型の配偶システムを採るニホンジカ(cervus nippon)の個体数管理を行う場合、メスの数が重要となる。特に個体数削減を図る場合には、雌雄の行動の違いを踏まえ、メスを選択的に捕獲できれば効果的である。 静岡県では、ニホンジカの行動特性を踏まえた捕獲の効率化を図るため、県内各地でGPS首輪を装着し、季節移動や行動範囲、集中的に利用する環境などを把握してきた。 富士山では、オス3頭のカーネル法による95%行動圏は259.6±127.5ha、集中的に利用していたと見なせる50%行動圏は40.5±27.2haであった。メス4頭の95%行動圏は147.5±59.9ha、50%行動圏は21.4±13.1haであった。個体数が少なく有意ではないものの、オスの方が広い傾向にあった。南アルプスでは、オス6頭の95%行動圏は150.0±111.9ha、50%行動圏は22.7±14.1haであった。メス4頭の95%行動圏は112.6±40.5ha、50%行動圏は18.9±5.9haで、やはりオスの方が広い傾向にあった。交尾期にメスのいる場所へオスが移動し滞在していること、若いオスが比較的広い範囲を移動していることが要因として考えられた。