著者
伊高 静 吉本 敦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第128回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.71, 2017-05-26 (Released:2017-06-20)

太陽パネル設置による発電は、二酸化炭素の排出量が非常に少ない自然エネルギーとして注目を集めている。一方、山林を伐採して太陽パネルを設置する地上型メガソーラーの急増については、景観の損失や、森林喪失による生態系への悪影響・土砂流出等が懸念されている。本研究は、山間地における太陽パネル設置の総合的な評価を可能にする判断材料を提供するため、それぞれの炭素量収支を明らかにする事を目的とした。具体的には、太陽パネル生産・運搬・設置・メンテナンス・パネル解体・廃棄にまつわる炭素収支を先行研究とメーカーからの聞き取り調査から明らかにした。さらに、太陽光発電に相当する電力を、化石燃料による発電に置き換え、その炭素量を明らかにした。また、仮想林分における施業による炭素収支を、数理最適化の手法を用いて算出した。収穫量・収穫頻度を制約条件に、樹齢に応じた炭素収支が、最小~最大になる解を、様々な施業パターンを想定して算出した。現実には、山間地利用における森林経営とソーラーパネル設置を総合的に判断することの難しさは、比較のための「物差し」が1つではないことにある。発表では、「炭素収支」という見地から議論したい。
著者
大場 孝裕 小松 鷹介
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第128回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.771, 2017-05-26 (Released:2017-06-20)

一夫多妻型あるいは乱婚型の配偶システムを採るニホンジカ(cervus nippon)の個体数管理を行う場合、メスの数が重要となる。特に個体数削減を図る場合には、雌雄の行動の違いを踏まえ、メスを選択的に捕獲できれば効果的である。 静岡県では、ニホンジカの行動特性を踏まえた捕獲の効率化を図るため、県内各地でGPS首輪を装着し、季節移動や行動範囲、集中的に利用する環境などを把握してきた。 富士山では、オス3頭のカーネル法による95%行動圏は259.6±127.5ha、集中的に利用していたと見なせる50%行動圏は40.5±27.2haであった。メス4頭の95%行動圏は147.5±59.9ha、50%行動圏は21.4±13.1haであった。個体数が少なく有意ではないものの、オスの方が広い傾向にあった。南アルプスでは、オス6頭の95%行動圏は150.0±111.9ha、50%行動圏は22.7±14.1haであった。メス4頭の95%行動圏は112.6±40.5ha、50%行動圏は18.9±5.9haで、やはりオスの方が広い傾向にあった。交尾期にメスのいる場所へオスが移動し滞在していること、若いオスが比較的広い範囲を移動していることが要因として考えられた。
著者
武 正憲 神宮 翔真 佐方 啓介 伊藤 太一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第128回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.792, 2017-05-26 (Released:2017-06-20)

利用者の好む森林景観を把握することで,良好な自然体験を提供できるような適切な登山道整備や管理計画の実施が可能となる。しかし,自然体験が少ない大学生の場合は,これまで好まれるとされてきた森林景観と認識が異なる可能性がある。近年,GPSロガーの低価格化や携帯電話にGPS機能が初期搭載されるようになり,行動記録の取得が容易になった。本研究は,筑波大学生2・3年生向け野外実習での富士山村山古道登山活動を通じて,参加学生が取得したGPS記録を元に,大学生の印象に残った森林景観認識を明らかにすることを目的とした。村山古道は廃道になった参詣道を地元有志が再整備した登山道である。実習で利用した標高1100mから2693m(宝永山)の区間は,原生林,人工林(国有林),参詣道時代の史跡,林業従事者の作業跡,台風による倒木跡などの多様な森林景観が存在する。参加学生は,体力および登山経験に応じた班ごとに,印象に残った地点の位置情報を記録した。記録地点の密度分析により,登山道上の倒木,森林限界,台風による倒木跡,史跡などの大きな景観変化点は記録密度が高い一方,人工林内の林相変化点では記録密度が低いことが示された。