著者
大橋 正孝 石川 圭介 片井 祐介 大場 孝裕
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第126回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.867, 2015 (Released:2015-07-23)

足を括るくくりわなの短所である、設置場所の選定が難しい、ツキノワグマの錯誤捕獲回避が困難、厳冬期凍結条件下では使用が困難、を克服するわなとしてヘイキューブを餌に誘引したニホンジカの首を括るわな(ただし、締め付け防止金具により首を締めることはない)を新たに考案、開発した。2013年の12月から2014年1月に富士山南麓の標高約1,000mのヒノキ林内約1km2のエリアで、1日あたり平均で9.5基のわなを33日間設置して捕獲を行った結果、24頭(成獣♀12頭、1歳3頭、当歳9頭)を捕獲した。捕獲効率は、0.73頭/日、餌付け期間7日間を加えると0.60頭/日で、わな1基1晩あたりでは0.079頭であった。場所の選定が容易で穴を掘る必要がないことから、わなの設置に要した時間は8±2分(平均±標準偏差)と短く、森林作業者が他の作業と並行して取り組み易いと考えられた。一方で、締め付け防止金具が緩み首が締まるなどの死亡個体も見られ、構造及び設置方法で注意すべき点が明らかになった。 なお、当該わなは、角のない個体を捕獲対象とし、各都道府県で、くくり輪の直径は12cm以内とする規制の緩和が必要となる。
著者
山田 晋也 大竹 正剛 大場 孝裕 山口 亮 大橋 正孝
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-5, 2013-12-20 (Released:2017-06-16)

We evaluated the stress in deer that were captured using corrals, foot snare traps, grand hunt, and sharp shooting by determining the cortisol and creatine kinase levels. The means of the cortisol levels were 2.5±1.3μg/dL, 11.3±5.3μg/dL, 2.1±2.5μg/dL, and 0.4±0.1μg/dL for deer captured using corrals, foot snare traps, grand hunt, and sharp shooting, respectively. The means of the creatine kinase levels for deer captured using corrals, foot snare traps, grand hunt, and sharp shooting were 93.5±129.1×10^3U/L, 253.6±303.3×10^3U/L, 46.6±70.1×10^3U/L, and 2.6±2.0×10^3U/L, respectively. The means of the cortisol levels of the deer captured using corral, grand hunt, and sharp shooting were significantly lower than that of the deer captured using foot snare traps (p<0.01). The mean of the creatine kinase levels of deer captured using corrals was significantly higher than that of the deer captured using sharp shooting (p<0.01), but was equal to that of the deer captured using foot snare traps and grand hunt.
著者
大場 孝裕 大橋 正孝 山田 晋也 大竹 正剛
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

鳥獣保護法が、鳥獣保護管理法に改正された。増え続けるニホンジカ(以下、シカ)に対しては、個体数削減のための管理、そのための捕獲事業の実施強化と、それを担う事業者制度の導入が明確化された。しかし、従前の銃やわなを用いた捕獲が困難な場所や状況も存在し、無理な捕獲強化は、人身事故の増加や、錯誤捕獲など他の動物への悪影響も懸念される。シカを減らすためには、従来の方法に加え、新たに安全で効率的な捕獲技術の開発が必要と考えた。<br> 反芻動物は、硝酸イオンを摂取すると、第一胃にいる微生物が、これを亜硝酸イオンに還元する。亜硝酸イオンは、血中で酸素運搬を担っているヘモグロビンと反応し、酸素運搬能力のないメトヘモグロビンに変える。進行すると酸素欠乏症に陥り、死に至ることもある。人間など単胃動物の酸性の胃では、亜硝酸イオンは増加しない。<br> シカ飼育個体の胃に硝酸イオンを注入し、致死量を明らかにした後、作成した硝酸塩添加飼料を採食したシカ野生個体の捕獲(致死)に成功した。この硝酸塩経口投与によるシカ捕獲について、インターネット上で行われた意識調査では、実用化すべきとの意見が過半数を占めた。
著者
大場 孝裕
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.335-340, 2020

<p>ニホンジカ捕獲強化の政策に伴い,わなによる捕獲数が増え,捕獲に占める割合も大きくなっている.わなの種類ごとの捕獲数はほとんど集計されていないが,箱わなや囲いわなに比べて安価で,1人で設置できる足くくりわなの使用が多いと推測される.捕獲具ごとの捕獲数の集計は,今後の課題である.足くくりわなによる捕獲は,ワイヤーロープで足を締め付ける.動物がわなに掛かってから,殺処分や放獣するまでの経過時間が長いことも多く,個体の損傷,ストレスが多い,アニマルウェルフェア上問題のある捕獲方法である.また,足くくりわなは,獣道に隠して設置し,荷重により作動するため,ニホンジカ以外の動物,特に大型哺乳類のクマ類,ニホンカモシカ,イノシシの意図しない錯誤捕獲を避けられない.実態把握のため,錯誤捕獲の報告を求めても,少なくとも処罰の対象となる条件が明確化されないと,正確な報告は期待できない.足くくりわな捕獲に伴う損傷とストレスの軽減,錯誤捕獲回避のための技術的改良に加え,足くくりわなに依存しないニホンジカ個体数管理技術の開発が必要である.</p>
著者
大場 孝裕
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.335-340, 2020 (Released:2020-08-04)
参考文献数
8
被引用文献数
3

ニホンジカ捕獲強化の政策に伴い,わなによる捕獲数が増え,捕獲に占める割合も大きくなっている.わなの種類ごとの捕獲数はほとんど集計されていないが,箱わなや囲いわなに比べて安価で,1人で設置できる足くくりわなの使用が多いと推測される.捕獲具ごとの捕獲数の集計は,今後の課題である.足くくりわなによる捕獲は,ワイヤーロープで足を締め付ける.動物がわなに掛かってから,殺処分や放獣するまでの経過時間が長いことも多く,個体の損傷,ストレスが多い,アニマルウェルフェア上問題のある捕獲方法である.また,足くくりわなは,獣道に隠して設置し,荷重により作動するため,ニホンジカ以外の動物,特に大型哺乳類のクマ類,ニホンカモシカ,イノシシの意図しない錯誤捕獲を避けられない.実態把握のため,錯誤捕獲の報告を求めても,少なくとも処罰の対象となる条件が明確化されないと,正確な報告は期待できない.足くくりわな捕獲に伴う損傷とストレスの軽減,錯誤捕獲回避のための技術的改良に加え,足くくりわなに依存しないニホンジカ個体数管理技術の開発が必要である.
著者
大場 孝裕 小松 鷹介
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第128回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.771, 2017-05-26 (Released:2017-06-20)

一夫多妻型あるいは乱婚型の配偶システムを採るニホンジカ(cervus nippon)の個体数管理を行う場合、メスの数が重要となる。特に個体数削減を図る場合には、雌雄の行動の違いを踏まえ、メスを選択的に捕獲できれば効果的である。 静岡県では、ニホンジカの行動特性を踏まえた捕獲の効率化を図るため、県内各地でGPS首輪を装着し、季節移動や行動範囲、集中的に利用する環境などを把握してきた。 富士山では、オス3頭のカーネル法による95%行動圏は259.6±127.5ha、集中的に利用していたと見なせる50%行動圏は40.5±27.2haであった。メス4頭の95%行動圏は147.5±59.9ha、50%行動圏は21.4±13.1haであった。個体数が少なく有意ではないものの、オスの方が広い傾向にあった。南アルプスでは、オス6頭の95%行動圏は150.0±111.9ha、50%行動圏は22.7±14.1haであった。メス4頭の95%行動圏は112.6±40.5ha、50%行動圏は18.9±5.9haで、やはりオスの方が広い傾向にあった。交尾期にメスのいる場所へオスが移動し滞在していること、若いオスが比較的広い範囲を移動していることが要因として考えられた。