- 著者
 
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             宮崎 慎一
             
             野田 裕之
             
             森田 照美
             
             甲斐 弦
             
             大廻 あゆみ
             
             小林 富成
             
             長嶋 茂雄
             
             高橋 雅春
             
             水尾 仁志
             
             岡本 宏明
             
          
 
          
          
          - 出版者
 
          - 一般社団法人 日本肝臓学会
 
          
          
          - 雑誌
 
          - 肝臓 (ISSN:04514203)
 
          
          
          - 巻号頁・発行日
 
          - vol.57, no.11, pp.606-613, 2016-11-20 (Released:2016-11-29)
 
          
          
          - 参考文献数
 
          - 26
 
          
          
          - 被引用文献数
 
          - 
             
             
             3
             
             
          
        
 
        
        
        鳥取県の山間部に居住する92歳の一人暮らしの男性が急性E型肝炎を発症した.患者には海外渡航歴や輸血歴はなく,発症前3カ月以内の豚レバーやホルモン,猪や鹿などの動物の肉や内臓の喫食歴,魚介類の生食の既往も無かった.しかし,7~8年前から猪胆(乾燥した猪の胆囊)を猟師より入手し,胆囊粉末を冷水に溶き,その胆汁液を生薬として飲用していたことが判明した.飲み残しの胆汁液はなかったが,保管されていた猪胆18個中7個からHEV RNAが検出され,患者から分離された3a型HEVと塩基配列が99.8%一致するHEVが同定された.加えて,リン酸緩衝液で溶出した10%胆汁液のHEV RNAタイターが4.6×105 copies/mlに達するものもあり,猪胆からの感染が強く疑われた.猪の肉やレバーの喫食後のE型肝炎症例はこれまでに多く報告されているが,猪胆が感染源と考えられる症例の報告は今回が初めてである.