著者
相川 達也 山縣 邦彦 宮本 久仁子 津田 文男 高橋 雅春 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.163-165, 2009 (Released:2009-04-08)
参考文献数
5
被引用文献数
3 3

A 35-year-old woman who was 14 weeks pregnant visited a gynecology hospital to undergo a surgical abortion. Although she was not jaundiced, and had no signs of hepatitis, liver function was abnormal (ALT, 100 IU/L; AST, 96 IU/L). The serum obtained was negative for markers of hepatitis A, B, and C viruses. However, based on the positive results of non-routine IgM/IgA anti-HEV and HEV RNA assays, the patient was occasionally diagnosed with sporadic acute hepatitis E. The HEV isolate recovered from the patient was phylogenetically close to known genotype 3 HEV strains circulating in Japan, with the highest identity of 93.2%. We believe that testing for hepatitis E should be routine in Japan, in cases of suspected viral hepatitis.
著者
相川 達也 小島 眞樹 宮本 久仁子 上野 ちさと 高橋 雅春 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.352-361, 2008 (Released:2008-09-10)
参考文献数
44
被引用文献数
3 3

67歳の男性が結婚40年後にC型急性肝炎を発症した.その妻(68歳)がC型慢性肝炎患者であり,C型肝炎ウイルス(HCV)RNAが高力価陽性(>5,000 KIU/ml)であった.両者のHCV遺伝子型はともに1b型で,NS5B領域の1,087塩基長の配列において99.7%の一致率を示した.それに対し,これまでに報告されているHCV/1b株との一致率は最高でも96.7%に過ぎなかった.分子系統樹解析によっても,夫婦の持つHCV株は一つのクラスター(bootstrap値:100%)を形成し,同一株である可能性が強く示唆された.詳細な病歴聴取を行ったが,性交渉(月1, 2回)以外の感染経路はいずれも否定された.高齢夫婦間の感染には加齢に伴う生体側因子が関与していると考えられるが,高齢化社会を迎え,HCV感染者頻度の高い高齢者層でかかるHCV感染が起こる可能性を念頭に置く必要があると考え報告する.
著者
田辺 利男 水尾 仁志 矢崎 康幸 高橋 雅春 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.567-574, 2011 (Released:2011-09-29)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

我が国においてE型肝炎患者数が最も多い北海道におけるE型肝炎ウイルス(HEV)感染の地域差の有無を検討するため,釧路市721例および根室市687例の血清検体についてIgG型HEV抗体を測定し,既報の札幌市および北見市の住民での測定結果と比較した.抗体陽性率は釧路市で5.4%,根室市で2.0%であり,両市とも男性で有意に高率であった(釧路市,男性8.5% vs. 女性3.0%,P=0.0010;根室市,4.0% vs. 0.5%,P=0.0012).40歳以上の年代で各市の抗体陽性率を比較すると,釧路市と北見市,札幌市との間で有意差は認められなかったが(それぞれ7.9%,12.1%,6.4%),根室市では2.1%に過ぎず,北見市,札幌市および釧路市よりも有意に低率であった.道内4都市での感染率の地域差は地域産業および食文化の相違を背景にしたブタ肉・内臓消費量の違いに由来すると推測された.
著者
古山 準一 高木 秀雄 森園 竜太郎 水尾 仁志 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.430-436, 2023-09-01 (Released:2023-09-11)
参考文献数
23

60歳台,男性.X-12日から全身掻痒感を自覚.X-10日 某皮膚科受診しエピナスチン塩酸塩,ジフルコルトロン吉草酸クリームを処方された.X-8日 前医内科受診しAST 217 U/L,ALT 400 U/Lと肝機能異常を認め,IgA-HEV抗体(-)だった.X-1日 同院再診し肝障害の増悪を認め,X日 当科入院.IgA-HEV抗体は入院時未施行でX+7日に施行したIgA-HEV抗体が(+)と判明した.保存血清による精査の結果,IgG,IgM,IgA-HEV抗体およびHEV-RNAは,各々,X-8日(-),(-),(-),(+:subgenotype 4c)であり,X+2日(+),(+),(+),(+)であった.発症早期ではIgA-HEV抗体が陰性となることが稀にあり他の原因が否定的で肉などの喫食状況によってはIgA-HEV抗体の再検,HEV-RNAの検査を施行すべきであると考えられた.
著者
宮崎 慎一 野田 裕之 森田 照美 甲斐 弦 大廻 あゆみ 小林 富成 長嶋 茂雄 高橋 雅春 水尾 仁志 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.606-613, 2016-11-20 (Released:2016-11-29)
参考文献数
26
被引用文献数
3

鳥取県の山間部に居住する92歳の一人暮らしの男性が急性E型肝炎を発症した.患者には海外渡航歴や輸血歴はなく,発症前3カ月以内の豚レバーやホルモン,猪や鹿などの動物の肉や内臓の喫食歴,魚介類の生食の既往も無かった.しかし,7~8年前から猪胆(乾燥した猪の胆囊)を猟師より入手し,胆囊粉末を冷水に溶き,その胆汁液を生薬として飲用していたことが判明した.飲み残しの胆汁液はなかったが,保管されていた猪胆18個中7個からHEV RNAが検出され,患者から分離された3a型HEVと塩基配列が99.8%一致するHEVが同定された.加えて,リン酸緩衝液で溶出した10%胆汁液のHEV RNAタイターが4.6×105 copies/mlに達するものもあり,猪胆からの感染が強く疑われた.猪の肉やレバーの喫食後のE型肝炎症例はこれまでに多く報告されているが,猪胆が感染源と考えられる症例の報告は今回が初めてである.
著者
岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.9, pp.1826-1832, 2018-09-10 (Released:2019-09-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

1 0 0 0 OA 3)A,E型肝炎

著者
岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.433-438, 2017-03-10 (Released:2018-03-10)
参考文献数
10
著者
石綿 翔 高木 均 星野 崇 長沼 篤 坂本 直美 小板橋 絵里 相馬 宏光 乾 正幸 工藤 智洋 小川 晃 田原 博貴 金古 美恵子 岡本 宏明
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.624-629, 2012 (Released:2012-04-05)
参考文献数
11

症例は70歳代女性.全身倦怠感,肝機能障害(ALT 2565IU/l)を主訴に入院.A,B,C型肝炎,EBV,CMV,自己免疫性肝炎は否定.2カ月ほど前から摂取し始めた菊芋によるDLSTで陽性を示し,薬物性肝障害(診断スコア8点)と診断された.その後保存血清でHEV-RNA陽性と判明し,E型肝炎と診断された.DLSTには偽陽性があり薬物性肝障害診断にHEV screeningの導入が必須と考えられた.
著者
岡本 宏明
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.177-187, 2009 (Released:2009-02-05)
参考文献数
54
被引用文献数
2

E型肝炎はアジア·アフリカの流行地域に限らず,先進国を含め広く世界各地で発生している.わが国でも3型や4型の土着HEV株による散発性E型肝炎は古くからあったが,今世紀に入ってその存在が認識された.国内の飼育ブタでHEV感染が蔓延している事実が明らかになるとともに,ブタや野生動物の肉·内臓摂食後の発症事例や劇症肝炎による死亡例の存在もあって,E型肝炎がにわかに注目を集め,診断や疫学に関する研究が急速に進んだ.その結果,本症における動物由来感染(zoonosis)の重要性が,わが国において,世界に先駆けて認知された.加えて,効率的な感染培養系も確立され,HEVのウイルス学も急速に進展しつつある.
著者
小林 剛 佐藤 賢 山崎 勇一 大山 達也 堀口 昇男 柿崎 暁 草野 元康 山田 正信 横濱 章彦 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.2215-2220, 2016-11-10 (Released:2017-11-10)
参考文献数
19
被引用文献数
2

52歳,女性.多発性骨髄腫に対して自家末梢血幹細胞移植後,複数回輸血を行った.定期受診の際に肝機能障害が認められ,精査目的で入院.HEV(hepatitis E virus)-IgA抗体陽性からE型急性肝炎と診断し,肝庇護療法にて軽快,退院とした.喫食歴からは感染源は特定できず,輸血による感染を疑った.輸血に使用したロットの保存血清からHEV-RNAが検出され,患者検体とHEVの塩基配列が一致したため,輸血によるE型肝炎と診断した.
著者
岡本 宏明 真弓 忠
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.259-271, 2000-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
53
被引用文献数
1 3