著者
田辺 利男 水尾 仁志 矢崎 康幸 高橋 雅春 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.567-574, 2011 (Released:2011-09-29)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

我が国においてE型肝炎患者数が最も多い北海道におけるE型肝炎ウイルス(HEV)感染の地域差の有無を検討するため,釧路市721例および根室市687例の血清検体についてIgG型HEV抗体を測定し,既報の札幌市および北見市の住民での測定結果と比較した.抗体陽性率は釧路市で5.4%,根室市で2.0%であり,両市とも男性で有意に高率であった(釧路市,男性8.5% vs. 女性3.0%,P=0.0010;根室市,4.0% vs. 0.5%,P=0.0012).40歳以上の年代で各市の抗体陽性率を比較すると,釧路市と北見市,札幌市との間で有意差は認められなかったが(それぞれ7.9%,12.1%,6.4%),根室市では2.1%に過ぎず,北見市,札幌市および釧路市よりも有意に低率であった.道内4都市での感染率の地域差は地域産業および食文化の相違を背景にしたブタ肉・内臓消費量の違いに由来すると推測された.
著者
宮崎 慎一 野田 裕之 森田 照美 甲斐 弦 大廻 あゆみ 小林 富成 長嶋 茂雄 高橋 雅春 水尾 仁志 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.606-613, 2016-11-20 (Released:2016-11-29)
参考文献数
26
被引用文献数
2

鳥取県の山間部に居住する92歳の一人暮らしの男性が急性E型肝炎を発症した.患者には海外渡航歴や輸血歴はなく,発症前3カ月以内の豚レバーやホルモン,猪や鹿などの動物の肉や内臓の喫食歴,魚介類の生食の既往も無かった.しかし,7~8年前から猪胆(乾燥した猪の胆囊)を猟師より入手し,胆囊粉末を冷水に溶き,その胆汁液を生薬として飲用していたことが判明した.飲み残しの胆汁液はなかったが,保管されていた猪胆18個中7個からHEV RNAが検出され,患者から分離された3a型HEVと塩基配列が99.8%一致するHEVが同定された.加えて,リン酸緩衝液で溶出した10%胆汁液のHEV RNAタイターが4.6×105 copies/mlに達するものもあり,猪胆からの感染が強く疑われた.猪の肉やレバーの喫食後のE型肝炎症例はこれまでに多く報告されているが,猪胆が感染源と考えられる症例の報告は今回が初めてである.
著者
阿部 敏紀 相川 達也 赤羽 賢浩 新井 雅裕 朝比奈 靖浩 新敷 吉成 茶山 一彰 原田 英治 橋本 直明 堀 亜希子 市田 隆文 池田 広記 石川 晶久 伊藤 敬義 姜 貞憲 狩野 吉康 加藤 秀章 加藤 将 川上 万里 北嶋 直人 北村 庸雄 正木 尚彦 松林 圭二 松田 裕之 松井 淳 道堯 浩二郎 三原 弘 宮地 克彦 宮川 浩 水尾 仁志 持田 智 森山 光彦 西口 修平 岡田 克夫 齋藤 英胤 佐久川 廣 柴田 実 鈴木 一幸 高橋 和明 山田 剛太郎 山本 和秀 山中 太郎 大和 弘明 矢野 公士 三代 俊治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.384-391, 2006-08-25
被引用文献数
18 50

極く最近まで殆んど不明状態にあった我国のE型肝炎の実態を明らかにする目的で,我々は全国から総数254例のE型肝炎ウイルス(HEV)感染例を集め,統計学的・疫学的・ウイルス学的特徴を求めてこれを解析した.その結果,[i]HEV感染は北海道から沖縄まで全国津々浦々に浸透していること;[ii]感染者の多くは中高年(平均年齢約50歳)で,且つ男性優位(男女比約3.5対1)であること;[iii]我国に土着しているHEVはgenotype 3とgenotype 4であるが,後者は主に北海道に偏在していること;[iv]年齢と肝炎重症度との間に相関があること;[v]Genotype 3よりはgenotype 4による感染の方が顕性化率も重症化率も高いこと;[vi]発生時期が無季節性であること;[vii]集積症例全体の約30%は動物由来食感染,8%は輸入感染,2%は輸血を介する感染に帰せしめ得たものの,過半の症例(約60%)に於いては感染経路が不明のままであること;等の知見を得た.<br>
著者
古山 準一 本城 信吾 森園 竜太郎 森田 康太郎 代田 充 長谷川 公範 内沢 政英 水尾 仁志 河上 彩恵 高木 秀雄
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.84-91, 2010-02-25
被引用文献数
1

症例は,75歳,男性.C型肝硬変症,肝細胞癌(HCC)にて当院通院中.2008年3月より血便を生じ,下部消化管内視鏡検査にて出血性直腸静脈瘤と診断.2008年7月HCCの治療目的にて入院.HCC治療時の上腸間膜動脈・脾動脈造影門脈相では遠肝性側副血行路は認めず,下腸間膜動脈造影にて下腸間膜動脈は直腸壁を造影し,その後排血路の一部として直腸静脈瘤が造影され下腸間膜静脈より脾静脈へと排血されていた.その後,直腸静脈瘤に対して内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)・硬化療法(EIS)併用療法を施行.直腸静脈瘤の口側端で,腸管壁外へ流出すると考えられた部位へEVL施行後,透視下でEISを施行.その後,造影CTにて直腸静脈瘤の血流は消失した.本症例は,血管造影にて直腸静脈瘤の血行動態を把握後にEVL・EIS併用療法を施行する事によって安全に治療しえた1例であったので報告する.<br>