著者
小林 嵩 品川 昭夫 市来 征勝
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.93-"131-6", 1968-02-15
被引用文献数
3

亜熱帯湿潤気候地帯にある奄美群島の主要な島である奄美大島, 徳之島, 沖永良部島, 与論島および喜界島の5つの島の土壌について1962年以来先きの琉球列島の土壌の研究に引つづき調査研究を行って来た.この内, 奄美大島および徳之島の土壌についてはすでに第2報として報告した.本報告は残りの3つの島である沖永良部島, 与論島および喜界島の土壌について地質母材を異にする土壌すなわち, 国頭礫層, 琉球石灰岩(珊瑚石灰岩), 島尻層, 古生層および火成岩として花崗岩などに由来する土壌の断面形態並びに一般理化学的性質について行った研究成積である.成績の概要を述べると次の如くである.1.土壌断面調査島尻層に由来する土壌を除いて各島の土壌は地質母材の如何にかかわらず, その表層(A属)は腐植の集積によって土色は灰褐色または暗褐色を呈し, その下層(B層)は赤褐邑, 黄褐色, 黄赤色, 赤色など赤味色の強い土色を示し, 赤黄色土の性格を示している.島尻層に由来する土壌は表層は上記と同様な土色を示しているが, 下層土は灰青色, 灰黄色など灰味色を示している.各地質母材に由来する土壊の表層は腐植の集積と植物根の発達によって, 粗しょうで, 粒状または果粒状構造をしているが, 下層は緻密で硬く, 可塑性および粘性が強く, 乾くと固結し, 塊状構造を示している.2.理学的組成各島とも各地質母材に由来する土壌はいずれも粘土にとみ, 土性はLiCまたはHCで, 多くがHCである.島尻層に由来する土壌は細砂にとみ, 土性はLiCが多い.沖永良部島の花崗岩に由来する土壌は粗砂および細砂とも多く, とくに下層に多い.土性はSLが多い.礫は各地質母材に由来する土壌はいずれも極めて少ない.粘土分は表層に少なく下層に多い傾向がある.3.化学的性質1)反応琉球石灰岩に由来する土壌には塩基性を呈するものが多いが, 同時に酸性の強い土壌も各島に多く存在している.喜界島の島尻層に由来する土壌にも塩基性を示すものと酸性を呈するものとがある.その他の地質母材に由来する土壌は殆んど強い酸性反応を示している.2)塩基置換容量沖永良部島土壌の総平均B.E.C.は表層土が15.32m.e., 下層土が12.56m.e.であり, 与論島土壌のそれはそれぞれ16.98m.e., 15.25m.e., 喜界島土壌のそれはそれぞれ20.18m.e., 19.25m.e.であって, 沖永良部島の土壌が最も小さく, 喜界島の土壌がもっとも大きいB.E.C.を示しかつ, 各島とも下層土の方が小さい.3)置換性塩基各島に分布している琉球石灰岩や喜界島の島尻層に由来する土壌には置換性塩基の含量の高いものが多く, これらの石灰飽和度は64〜74%であるが, また塩基含量の少ないものも多く, その石灰飽和度は13〜40%である.その他の地質母材に由来する土壌の石灰飽和度は12〜35%で顕著に小さい.喜界島の島尻層に由来する土壌は徳之島の泥灰岩土壌と同じく多量の置換性苦土を含んでいる.置換性加里含量はいずれの土壌も少ない.4)炭素率沖永良部島の土壌の表層土の総平均炭素率は10.6,与論島の土壌のそれは10.2,喜界島の土壌のそれは9.7で, 三島の土壌の表層土の炭素率は略同じ大きさである.これを奄美大島の12.1,徳之島の12.0に比べると小さい.土壌の炭素率は下層にゆくに従って小さくなっている.5)窒素および腐植各島の土壌の表層土の窒素および腐植の含量は平均して沖永良部島の土壌がそれぞれ0.17%, 3.14%, 与論島のそれがそれぞれ0.19%3.22%, 喜界島のそれがそれぞれ0.23%, 4.12%であって喜界島のものが顕著に多い.しかし, 前2島のそれらは奄美大島や徳之島の土壌に比べるとほぼ同程度の含量である.6)燐酸吸収係数各島の土壌の表層土および下層土の燐酸吸収係数をみると, 沖永良部島の土壌はそれぞれ590,670,与論島のそれはそれぞれ531,623,喜界島のそれはそれぞれ590,763であって, 喜界島の下層土がやや大きい値を示しているが, 他は略同じ大きさである.この値を奄美大島および徳之島の土壌の燐酸吸収係数と比べると略同じ大きさである.喜界島の島尻層に出来する土壌の燐酸吸収係数は表層土の平均が482,下層土のそれが547で, 他の地質母材に由来する土壌に比べて顕著に小さい.7)有効燐酸各島の未耕地の土壌には有効燐酸は殆んど含まれていない.ただ, 燐砿石を産する与論島の琉球石灰岩地帯の一部の土壌には未耕地土壌にも有効燐酸が含まれている.耕地土壌にはやや多量に含まれている.4.以上の如く, 与論島, 沖永良部島および喜界島の各島で特に未耕地として残されている地区の土壌の殆んどが強酸性, 塩基欠乏, 重粘質など不良な理化学的性質を持っている.従ってこれらの地区を将来農地として開発する場合は, まず土壌の不良性を改善する必要がある.このため, これらの島々に広く分布している石灰質の砂丘砂の客入は土壌の理化学的性質の改良に大いに役立ちうるもので, その活用が望まれる.
著者
田中 和樹 キム ビョンゴン 小林 嵩 ベッカリ アブデルモウラ 難波 忍 西村 公佐 キム フーン チャン ユン 鈴木 正敏
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J101-C, no.2, pp.107-118, 2018-02-01

現在の1000倍以上のトラヒックが見込まれる5G以降の無線通信システムでは,ミリ波等の高い周波数帯の小セル局を多数設置して大容量トラヒックを収容する必要がある.小セル一局あたりの通信速度は数十Gbpsと想定され,光アクセス回線の大容量化は喫緊の課題である.更に,既に商用展開が進んでいるC-RAN構成は5G以降も有望なアーキテクチャーと考えられるものの,従来の光アクセス回線の伝送方式は通信速度の十数倍の伝送容量を必要とするため,代替技術が望まれる.光を搬送波として無線信号をアナログ波形のまま伝送するアナログRoF (A-RoF)伝送方式は,伝送帯域を大幅に低減可能で,有望な技術の一つである.本論文では,最初にA-RoF技術の既存適用例として,CATV伝送システムに用いられているIF-over-Fiber (IFoF)伝送方式を紹介する.更に,IFoF・A-RoF方式を無線基地局収容光回線へ適用した場合のシステム構成例を示す.続いて,数値シミュレーションによりIFoF伝送方式が適用可能な伝送条件の範囲を明らかにする.商用のLTE無線基地局及び実フィールドに設置された光ファイバを用いた実験を行い,数値シミュレーション結果との比較を行うとともに,IFoF伝送方式の商用システムへの適用可能性を示す.