著者
柵山 尚紀 小林 昭広 小嶋 基寛 池田 公治 松永 理絵 河野 眞吾 伊藤 雅昭 齋藤 典男
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.170-175, 2016 (Released:2016-02-22)
参考文献数
23
被引用文献数
1

S状結腸癌とその術後肝転移に日本住血吸虫卵が併存した症例を経験したので報告する.症例は72歳,男性.貧血,便潜血陽性を主訴にS状結腸癌と診断され,手術治療目的に当院紹介受診となった.S状結腸癌type2 cSS N1 H0 P0 M0 cStage IIIbの診断で,腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.術後病理診断は,S状結腸癌 pSE,pN1,pM0 pStage IIIa with Schistosoma japonicum eggであった.虫卵の分布は切除腸管全般にわたっており,癌との関連性は否定的であった.術後,9ヵ月後に肝転移を発症し腹腔鏡下肝部分切除術を施行.術後病理所見は転移性肝癌でも癌部非癌部にかかわらず虫卵の併存を認めた.患者は生活歴に山梨県甲府市に在住があった.本症例では虫卵が死卵であり活動性もないことから日虫症に対する治療は施行せず,術後化学療法も通常通り施行した.