著者
小林 照夫
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.111, pp.3-23, 2007

本稿の考察は、複数の港を組織して成立したフォース・ポーツ・オーソリティ(the Forth Ports Authority)の事例が、東京湾諸港の問題としてのポート・オーソリティ論だけではなく、日本の多くの港の経営を考えるうえでの参考事例になるのではないかと言うことで言及した。そのための考察の手順としては、スコットランド産業革命期までの交易の中心であったフォース湾沿岸域の産業社会を、社会経済史の手法で回顧・展望する中で、かつての重要港湾リース(Leith)やグランジマウス(Grangemouth)をはじめとした現在のフォース・ポート・オーソリティを構成する諸港、グラントン(Granton)、バァントアイランド(Burntisland)、カーコーディ(Kirkcaldy)、メスィル(Methil)の史的意義を論じることにした。そうした考察を通して、フォース湾に所在するそれぞれの港とフォース・ポーツ・オーソリティの機能と役割について位置づける。
著者
小林 照夫
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.119, pp.73-98, 2010

イングランドにおいては、議会主導の政治体制を誘導したのは、「ピューリタン革命」と「名誉革命」である。そして、イングランドではこの二つの革命を通して市民革命が実現した。そのイングランドの特徴は、市民革命を史的事象として実在させながらも、旧体制での権力の象徴であった国王(女王)が国家の首長として機能した点にある。そして、その首長の権力を議会が牽制した。その結果、イングランドの近代化は、議会と国王(女王)が「イギリス近代化車」の両輪として機能し、他の西欧諸国とは異なる近代に向けての独自の絶対王政を歩みはじめた。ブリテン島のもうひとつの王国、スコットランドの移行期となると、その特徴を明確に位置づけることは難しい。何故なら、スコットランドでは移行期の一つの政治体制である絶対王政が、イングランドほど鮮明に形づくられたものではなかったからである。特に、1603年以降の同君連合時代は、スコットランドから国王を送り込みながら、イングランド王国の政治体制に引きずり込まれた形になった。イングランドが17世紀を通して、封建制から近代への移行を自らのものにしたのに対して、スコットランドではそうした史的歩みが見えなかった。17世紀はスコットランドにとって不幸な時代だったのか。1707年の「合邦」は不幸な時代の帰結なのか。本稿では、そうした素朴な問題意識に基づき、17世紀のスコットランドの宗教と政治を主題としつつ、スコットランドの宗教改革の史的現実、一王・二議会制下でのスコットランドとイングランドの関係を、比較史の座標の中で考察することにする。
著者
小林 照夫
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.113, pp.147-168, 2008

「神戸淡路大震災」、「中越地震」と言った大地震をはじめ、日本の各所では大小の地震が発生している。一部の地震学者が言うように、日本は「地殻大変動の時代に入った」のではないかと、危機感を抱いている人も多い。そうした状況を反映して、昨今の町内会の課題は、「自主防災」にあると言っても過言ではない。勿論、それは、地震の脅威に対する地域社会の取り組みであるが、その背景では、NPO「帰宅難民の会」の誕生をみると、戦後の郊外住宅団地の造成に伴う日本的職と住の遠隔地化による震災時の危機感が、強く作用しているように思える。そこで、本稿では、同一コミュニティ内での職住一体化乃至は近接のタウンづくりが現在でも都市構造の本質をなしている英国の都市の歴史を検証しながら、日英地域社会比較文化論と題して、コミュニティの在り方について言及を試みることにした。