著者
小林 里瑳 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.524-531, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
16

本論文は,土地所有者による土地の売買と来訪者による逐次的滞在場所選択を離散的選択モデルで定義したサブモデルからなる地区スケールを対象とした土地-交通モデルを提案した.特に土地売買行動は,売手地主と買手地主それぞれの推定購入額と推定売却額を効用関数に導入することで,相互推論によるマッチング行動を仮定し,従前の土地市場モデルで扱われてきた均衡価格を明示しない取引構造の記述を試みた.構築したモデルは,2時点の実データを用いた実証分析及び構造推定を用いた推定により,計算可能であることを確認した.提案モデルは,都市開発や都市政策が歩行者の行動や土地所有者の土地取引行動に与える影響の測定やシミュレーションに応用可能性を持つと考える.
著者
小林 里瑳 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.674-681, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
22

本研究の目的は,長期にわたる土地所有形態に対する地主の投機的な行動を考慮した非集計的フレームワークを提案することにある.本論文では,ランダム効用最大化理論に基づくロジットモデル型の動的離散選択モデルを適用することで,時間割引率の推定が可能な動学的土地所有形態選択モデルを定式化した.提案したモデルのパラメータは,道後温泉地区の土地台帳をデジタイズする事で得た家単位の地主毎の土地所有履歴という実データを用いて推定した.推定結果より,時間割引率から地主の近視眼的な土地所有選択,また,道後温泉地区における主要な建築物である外湯施設からの距離パラメータからは時代によって選好する土地の位置が異なる事が明らかになった.
著者
小林 里瑳 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1245-1252, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究では,近代地方都市における界隈形成のメカニズム解明に向けて,土地所有形態選択問題として統計的モデルを用いた全く新たな都市形成史分析手法の提案を試みた.モデル構築において,所有筆=土地とその所有形態の同時選択確率を記述可能なCNL型の離散選択モデルを提案し,所有形態の選択に関して地主の態度の異質性を仮定した潜在クラスモデルを導入した.パラメータ推定には,隠れ変数を含む選択確率の対数尤度関数最大化問題の求解に適していることから、機械学習の代表的な手法の一つであるEMアルゴリズムを用いた.道後温泉本館周辺を対象に,旧土地台帳と付属図という近代史料をモデル推定可能な形式に変換する方法提案を行い,集積や継承,撤退といった近代地方都市の土地所有の変容の実態解析が可能なデータベース構築に成功した.さらに,非集計分析と提案したモデルを用いてパラメータ推定を行うことで,近代地方都市の地主の土地所有形態の選択に異質性があり,時間の経過とともに地租や立地条件といった要因が土地所有形態の選択に及ぼす影響が大きく変容していることを統計的に示すことができた.
著者
小林 里瑳 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.251-258, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
28

本研究は,土地所有履歴を時間と空間両スケールで集約化し分析することによる,地域における新陳代謝メカニズムと空間変容の相互作用への理解を目的としている.研究を通じて以下の点を明らかにした.1)土地の所有形態分布はランクサイズルールに従い,寡占地主は分散して所有していた土地を取引を通じて集約する一方で,多くの地主が短期的所有を行なっている.2)寡占地主の土地再配分が地域の公共事業と関連し,地域の特徴的な空間を形成している.3)地割の変化しない街区がある一方で地割の大きく変化した街区が以降の土地利用に影響を与えている.