著者
小林 麻実
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.545-554, 2011 (Released:2011-12-01)
参考文献数
3
被引用文献数
2

2003年東京都港区に私立会員制図書館として創設されたアカデミーヒルズ六本木ライブラリーの理念と実践を紹介する。著者は,図書館の意義を「過去の先人の残した知見や同時代の他者が持つ知識・経験といった情報を共有することにより,新たなイノベーションを個人が創り出していく場」ととらえ,新しい学びや協働を育む「場」を社会人に対して提供してきた。組織を離れた個人としてのつながりや情報交換が図書館内に生まれるように8年にわたってさまざまな工夫を重ねている。その結果としてラーニングコモンズやコワーキングという言葉が生まれる以前に,その内容を実践してきた。
著者
小林 麻実
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.231-237, 1997-05-01
被引用文献数
2

米ユナイテッド・テクノロジーズ社の図書館・情報サービス機関, アトリスは, これまで独立採算組織として, 世界16万人社員に向け, イントラネット・サービスを含む独自のサービスを開発・提供し続けてきた. 根底にある「社員の生産性向上」という使命を達成するため, 組織の内外からの様々な評価を求めてきた. デジタル革命の進む今日, 図書館機能のアウトソーシングを行なう機関や, 利用者へのアンケート, 他の先進企業図書館との競合の中から, ヴァーチャル・ライブラリーこそが利用者の利益と判断したアトリスは, 全図書館の閉鎖と大幅な組織変更を実施し, UTCインフォメーション・ネットワークへと名称変更した. このように競争の中から自己の役割を新たに創り出していくことが, 企業図書館員に求められている.
著者
小林 麻実
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.52-57, 2006-02-01

アカデミーヒルズ六本木ライブラリーの創設は, 誰からも理解されず賛同も得られなかった個人の夢を, 諦めずに粘り強く抱き続けて現実に移した苦闘の歴史である。既存の海外・国内の図書館の事例を全く真似することなく, ゼロベースでライブラリーの本来あるべき姿・存在意義をただ一人で研究してきた個人のクリエイティビティの帰着点ともいえる。したがって独自のアイデンティティを構築しているのは当然である。このようなアイデンティティの構築過程においては, いまだ誰も見たことのない世界, および想像のつかない顧客層を自ら作り出していく信念を維持できるか, 与えられた環境をその信念とどのように適合させていくことができるか, という2点が鍵となる。