- 著者
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小柳津 英知
- 出版者
- 富山大学
- 雑誌
- 高岡短期大学紀要 (ISSN:09157387)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, pp.191-205, 2005-03
- 被引用文献数
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石油化学工業の生産額の大半を占めるプラスチックは基礎原料(エチレン)、中間原料(モノマー)、最終製品(ポリマー)の製造過程に分ける事ができる。このプラスチックの製造では「統合の経済」、「規模の経済」、「範囲の経済」の三つが働くため、石油化学工業の国際競争力を考える場合には、現状の経営成果のみならず、これらの要因が発揮される生産体制かどうかを検討する事が重要である。我が国の石油化学コンビナートの生産規模は、1990年以降に完成したアジアや中東の80万トン水準に比較して、50万トン以下が大半である。そのため「規模の経済」の面で競争力は劣ると考えられる。次に、原料立地の中東に比較すると「統合の経済」の面でも競争力は劣ると考えられる。これまではナフサを原料としたプラントはエタンを原料としたプラントに比較して「範囲の経済」の面で競争力を持ってきたが、そのメリッ.トは失われつつある。さらに我が国の石油化学コンビナートは米国のような近接立地によるネットワーク化がなされておらず全国に分散・孤立立地というデメリットを持つ。さらに貿易政策の面では我が国の汎用樹脂には従量税が課せられ、国内メーカー保護の色彩が強かったが、2004年以降は低い従価税に移行し、輸入拡大が予想される。このような中、我が国の石油化学コンビナート内の企業間関係は、事業の統廃合、合併の進展で大きく変わりつつある。以上から、単純な企業集積のメリット.を説く産業クラスター論を我が国の石油化学コンビナートに適用しようとするのは無理がある。我が国の石油化学コンビナート再編の望ましい方向は、国内の生産規模を縮小し、「規模の経済」で有利な海外プラントへの投資を進め、輸入拡大を進めることが、国民経済の観点から望ましいと考えられる。