著者
村田 一朗 小栗 優貴 白石 愛
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.15-27, 2021-09-28 (Released:2022-07-02)
参考文献数
34

本研究の目的は,性的マイノリティの包摂を目指した教科横断単元の構成原理を明らかにすることである。本研究の背景には,性的マイノリティの包摂にあたってはマジョリティ側への教育も必要であり,特に社会と個人の両面から性規範を問い直していく必要があるという公教育としての課題がある。そこで,社会科と保健体育科の研究者・実践者が協働し,教科教育学の抱える開発研究の方法論的課題を乗り越えながら,教科横断単元の開発・実践・検証を行った。本研究の成果は,以下2つである。1つ目は,クィア・ペタゴジーに基づいた「目標原理:社会と自己の2つの視点からの包摂」「内容選択原理:マジョリティが作り出す性規範」「学習過程原理:相対化・構築・脱構築の螺旋的過程」といった単元構成原理を提起できたことである。2つ目は,教科を横断した開発研究の手続きとその実際を事例として示したことで,教科教育学の新たな可能性を見出したことである。