著者
小池 敦資
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1134, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
4

飲食物中へのスクロースや異性化糖の使用により,フルクトースの摂取はここ数十年で顕著に増加している.フルクトースの過剰な摂取は肥満や非アルコール性脂肪肝疾患,糖尿病などの発症と強く相関している.フルクトースの摂取は,肝臓における脂質生合成を誘発し,アセチルCoAから脂肪酸の合成を促進する.さらにフルクトースは,腸内細菌によって短鎖脂肪酸に代謝される.しかし,食餌中のフルクトースから肝臓のアセチルCoAや脂質生合成に至る経路や短鎖脂肪酸の脂質生合成への影響については未解明な点が多い.ATPクエン酸リアーゼ(ACLY)はクエン酸からアセチルCoAに変換する酵素であり,糖代謝と脂肪酸生合成を結ぶ重要な酵素として知られている.本稿では,肝臓特異的にACLYをノックアウトしたマウス(LAKOマウス)を用いて,同位体標識したフルクトース(13Cフルクトース)による追跡実験を行うことによって,肝臓でのフルクトースからの脂質生合成に腸内細菌が関与することを明らかにした報告を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Jegatheesan P., De Bandt J. -P., Nutrients, 9, 230(2017).2) Jang C. et al., Cell Metab., 27, 351-361.e3(2018).3) Zhao S. et al., Nature, 579, 586-591(2020).4) Zagelbaum N. K. et al., Caldiol. Rev., 27, 49-56(2019).