著者
千国 幸一 長妻 常人 田畑 利幸 門間 美千子 斎藤 昌義 小沢 忍 小堤 恭平
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.340-346, 1994
被引用文献数
6 1

ウシの成長ホルモンは127番目のアミノ酸でLeu/Valの多型が存在する.この多型の原因となる塩基配列の違いを決定するため,黒毛和種,ホルスタイン種,ヘレフォード種,アバーデンアンガス種から成長ホルモン遺伝子のイントロン4とエキソン5を含む652bpの領域をPCRによって増幅し,塩基配列を決定した.その結果,127番目のアミノ酸に対するコドンはA型(Leu)がCTG,B型(Val)がGTGで,1塩基の違いによる多型であることが明らかとなった.黒毛和種においてはさらに,別の部位で新たな多型が認められた.この変異は172番アミノ酸のコドンがACGからATG(C型)となるもので,コードしているアミノ酸はThrからMetに変化する.上記の4品種と褐毛和種について,Alu I切断とドットハイブリダイゼイションを用い遺伝子型を決定した結果,黒毛和種と褐毛和種にはA型(Leu<sup>127</sup>,Thr<sup>172</sup>),B型(Val<sup>127</sup>,Thr<sup>172</sup>),C型(Val<sup>127</sup>,Met<sup>172</sup>)の3種が存在し,分析したホルスタイン種,ヘレフォード種,アバーデンアンガス種には,C型が認められなかった.これらのことから,C型遺伝子は黒毛和種と褐毛和種の共通祖先のB型遺伝子に生じた変異であると考えられた.遺伝子頻度は59頭の黒毛和種で0.500(A),0.144(B),0.356(C)であった.これらの遺伝子型と枝肉形質との間に明確な関連は認められなかった.