著者
小泉 久仁弥 花輪 壽彦 石野 尚吾 大塚 恭男 角田 裕
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.137-140, 1994-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
5

脊髄癆による神経痛は難治であるが, 香川解毒剤加味方が奏効した症例を経験した。症例は55歳の女性。昭和37年頃より, 全身, 特に両下肢に最も多く生じる持続的な痛みが出現した。改善しないため, 昭和50年福島医科大学附属病院にて脊髄癆と診断された。駆梅療法の後に, 全身の痛みに対して鍼治療や種々の薬剤を使用していた。しかし, 次第に鎮痛効果が弱くなったため, 平成4年5月7日当研究所漢方診療部に紹介された。既往歴と全身所見より香川解毒剤加味方を処方したところ, 次第に非ステロイド系消炎鎮痛剤坐薬の鎮痛作用が増強した。一時足の痛みが増強したため附子と大黄を増量したところ, 全く痛みはなくなり, 坐薬も中止した。平成5年1月に再度上腕の痛みが出現し, 附子, 大黄を再度増量したところ, 次第に疼痛は軽減した。梅毒に対し, 駆梅療法の後の治療に漢方薬の活用が期待できると考えられた。