著者
伊藤 漸 小浜 一弘 近藤 洋一 竹内 利行
出版者
群馬大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

モチリンは消化管粘膜から分泌されるペプチドホルモンで消化・吸収の終了した空腹時に約100分間隔で血流中に放出され、先ず胃・上部十二指腸に一連の強収縮をひきおこし、これが順次下部消化管に伝播して、空腸・回腸に溜った胃液・腸液を大腸の方に押しやる働きをする。モチリンによる消化管平滑筋収縮作用は、動物種によって大きく異なる。例えば、ブタやイヌから抽出したモチリンは、ラット,モルモットの消化管には全く作用しない。イヌに投与すると空腹時強収縮をひきおこし、この作用はアトロピンによって抑制されるので、モチリンの作用はアセチルコリンを介していることが予想される。ところがin vivoのウサギの実験ではこの強収縮は観察できない。しかしウサギ腸管平滑筋条片をマグヌス管につるして筋の収縮を調べるとモチリンによる筋収縮を確認でき、しかもアトロピンでは抑制されず、モチリンの平滑筋への直接作用が考えられる。但し単離筋細胞を用いた培養実験では、アセチルコリンは筋収縮をひきおこすが、モチリンでは筋収縮を確認できていない。我々は、ウサギ平滑筋膜上にモチリン受容体の存在を想定して、膜分画への ^<125>Iーモチリンの結合実験を行った。 ^<125>Iーモチリンは膜の粗分画を用いると結合を認めたが、精製した膜分画を用いると結合が認められなかった。そこで我々は、モチリンが直接平滑筋に働くのではなく、神経に作用しアセチルコリン以外の伝達物質を介して筋に働いている可能性を考慮しているが、同時に、1) ^<125>Iーモチリンの比放射能活性を高める 2)13位のMetをLeuに置換して酸化をうけにくくさせる 3)第7位のTyrを除き、カルボキシル端にTyrを付加したモチリンを合成する,等の工夫により、生物活性がヨ-ド化によっても十分保持できるモチリンの作成を行なった。現在これらの修飾モチリンを用いて平滑筋膜分画との結合実験を継続している。