著者
小澤 洋介 品川 高廣
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2021-OS-151, no.9, pp.1-11, 2021-02-22

ライブマイグレーションでは,仮想マシンを動作させたままメモリの内容を移行元から移行先へと同期させるため,移行元で仮想マシンが書き込んだメモリ領域を動的に検知して再転送する必要がある.従来の書き込み検知はページ単位でおこなわれているが,Intel はまもなくサブページ書き込み保護と呼ばれるページより細かい粒度でのメモリ保護が出来る機構を導入予定であり,これをライブマイグレーションに応用することでメモリ転送量の削減やマイグレーション時間の短縮が期待できる.一方,この機構は書き込み時にダーティビットをセットする代わりにページフォルトを発生させるため,実行時の CPU オーバーヘッドの増加が予想される.本研究では,様々なワークロードにおける書き込み操作のトレースからメモリ転送量の削減効果や CPU オーバーヘッドの大きさを分析し,ライブマイグレーションにおけるサブページ書き込み保護機構の有効性を評価した.エミュレータを用いた評価の結果,メモリ転送量の削減によりマイグレーション時間は多くのワークロードにおいて従来方式よりも短縮できることや,あるワークロードではサブページ書き込み保護のみがマイグレーションを完了させられることが分かった.また,CPU オーバーヘッドは,ページのゼロクリア命令を検出して書き込み検知の最適化をおこなうことにより 8.3%~54.5% 程度に抑えられることが分かった.
著者
井家 益和 小澤 洋介
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.137, no.3, pp.150-153, 2011 (Released:2011-03-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

自家培養表皮「ジェイス」は,ヒト細胞を用いた日本初の再生医療製品であり,2007年に承認された.自家培養表皮は,患者自身の皮膚を原材料として作製した表皮細胞シートである.ジェイスの製造は,3T3-J2細胞のフィーダーと,ウシ胎児血清や増殖因子を添加した培地を用いて表皮細胞を培養するGreen法を採用しており,数cm2の皮膚から体表をすべて覆う面積の表皮細胞シートを製造することができる.ジェイスを広範囲熱傷の熱傷創面に適用すると,表皮細胞が生着することによって創が閉鎖される.ジェイスの生着は,移植部位の状態に大きく影響されることがわかっている.生着を阻害する要因には,感染,炎症,物理的刺激,細胞傷害性物質などが考えられる.ジェイスの有効性を発揮させるために,わが国の医療現場に適した移植手技が標準化されることが望ましい.再生医療製品では,細胞毒性が低い併用薬の選択が求められることから,薬理学的なサポートも重要である.