著者
井家 益和
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.118-123, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
15

自家培養表皮ジェイスはヒト細胞を用いた日本初の製品であり,重症熱傷の創閉鎖に使用される。2009 年に保険収載されて 5 年が経過し,これまでに全例を対象とした市販後調査によって多くの情報が蓄積されつつある。自家培養表皮の製造で非受傷部位から採皮された面積は平均 8 cm2,1 患者の使用枚数は平均 24 枚であり,採皮面積に対して 240 倍程度の面積の創面を覆うことができた。受傷から採皮までは平均 8.6 日であり,採皮時期が遅延した症例で培養工程に細菌汚染が発生したことがあった。これまでの調査では,自家培養表皮の移植前に人工真皮を用いて移植床を形成する症例が,屍体同種皮膚を用いるより多かった。最近は自家網状分層植皮と自家培養表皮を同時移植するハイブリッド法も増えている。今後は,自家培養表皮を用いた熱傷治療において,自家植皮と併用する意義を検証するとともに,人工真皮や屍体同種皮膚で再構築した移植床に対する手法を標準化する必要がある。
著者
井家 益和 小澤 洋介
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.137, no.3, pp.150-153, 2011 (Released:2011-03-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

自家培養表皮「ジェイス」は,ヒト細胞を用いた日本初の再生医療製品であり,2007年に承認された.自家培養表皮は,患者自身の皮膚を原材料として作製した表皮細胞シートである.ジェイスの製造は,3T3-J2細胞のフィーダーと,ウシ胎児血清や増殖因子を添加した培地を用いて表皮細胞を培養するGreen法を採用しており,数cm2の皮膚から体表をすべて覆う面積の表皮細胞シートを製造することができる.ジェイスを広範囲熱傷の熱傷創面に適用すると,表皮細胞が生着することによって創が閉鎖される.ジェイスの生着は,移植部位の状態に大きく影響されることがわかっている.生着を阻害する要因には,感染,炎症,物理的刺激,細胞傷害性物質などが考えられる.ジェイスの有効性を発揮させるために,わが国の医療現場に適した移植手技が標準化されることが望ましい.再生医療製品では,細胞毒性が低い併用薬の選択が求められることから,薬理学的なサポートも重要である.
著者
井家 益和 畠 賢一郎
出版者
一般社団法人 日本臓器保存生物医学会
雑誌
Organ Biology (ISSN:13405152)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.57-65, 2015 (Released:2015-09-10)
参考文献数
21

The various types of cells exist in three-layer structure, i. e., epidermis, dermis and subcutaneous tissue of human skin. Keratinocytes, melanocytes, Langerhans cells and Merkel cells are in the epidermis, fibroblasts, mast cells, histiocyte, plasma cells and dermal dendrocytes in the dermis, and adipocytes in the subcutaneous tissue. The dermal fibroblasts are isolated by outgrowth derived from dermis tissue for primary culture and can be repeatedly passaged with serum-containing medium. The epidermal keratinocytes are obtained from trypsinization of fullthickness skin biopsy. The serum-containing medium with some growth factors and feeder layer of 3T3 cells, so called Greenʼs method, can offer an environment for the preferable proliferation of keratinocytes. The keratinocytes cultured with serum-free medium become differentiated under increased calcium concentration. The melanocytes are easily cultured in the commercial medium without serum. But the melanocytes cultured with keratinocyte by the Greenʼs method can only reconstruct an intercellular function. Cells obtained from human skin are useful tools in various cell therapies.