著者
小玉 かおり
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.221-224, 2012-03-01 (Released:2020-06-26)
参考文献数
4

近年、医療機関の機能分化が進められ急性期病院の在院日数短縮の流れは加速しており、地域の医療、介護、福祉などの多機関多職種が連携し患者が円滑に在宅医療に移行するためのシステム作りが課題となっている。急性期病院では退院後の患者の生活をイメージできないまま医療や看護が行われ、退院支援・退院調整の必要な入院患者の特定が出来なかったり遅れたりする状況があり対策の必要性があった。 今回、医師や看護師およびコメディカル等に退院後の患者家族の様子をフィードバックし、訪問診療医や訪問看護師等と意見交換する場としての退院後フィードバックカンファレンスを試みた。2009年度に2回開催したところ各回40名前後の参加があり、院外からは訪問診療医と訪問看護師およびケアマネジャーが参加した。診療科の特徴的な退院支援・退院調整事例を取り上げ退院後の様子を画像で伝えるなど、急性期病院の職員が患者の退院後の生活に関心を持ち理解しやすいように工夫した。その結果、急性期病院職員が退院後の患者家族の様子を知る機会となり、訪問診療医や訪問看護師等との相互理解や信頼関係構築に役に立つという結果を得ることができた。
著者
小玉 かおり 伊藤 俊弘
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.574-581, 2019-09-15 (Released:2019-10-04)
参考文献数
19

目的 本研究は,がん患者の休職関連要因およびQOLを明らかにし,わが国のがんと就労の問題に対する示唆を得ることを目的とする。方法 北海道内で通院治療中の成人がん患者(20~64歳)に,自記式質問票による調査を実施した。調査項目は基本属性,がん関連属性およびQOL(SF-12v2日本語版)とした。 就労者を休職群と仕事継続群に分類し,QOLは8下位尺度とこれらから集計した3つのコンポーネントサマリーを比較検討した。各がん関連因子に対する休職の有無の関連について,基本属性の傾向スコアを算出して調整変数とし,このスコアを休職の有無とともに独立変数へ投入することで,がん関連属性に対する休職の有無をロジスティック回帰分析または重回帰分析を用いて検討した。結果 有効回答が得られた147人のうち就労者は79人で,このうち休職群が29人(36.7%),仕事継続群が50人(63.3%)であった。休職関連要因について傾向スコアを用いたロジスティック回帰分析にて解析した結果,「告知から6か月未満」における休職群のオッズ比は「6か月以上」に対し17.9倍高いことが示された(P=0.001)。また,「手術を受けていない者」は「手術を受けた者」よりもオッズ比が3.9倍高くなる傾向が示された(P=0.011)。 休職群のQOLは,8項目中7項目で国民標準値よりも低値を示した。仕事継続群との比較ではすべての項目で休職群の平均値が低く,このうち6項目は有意な低値を認め,とくに日常役割機能(身体・精神)に顕著であった。休職群のコンポーネントサマリーは,仕事継続群よりも役割/社会的側面(RCS)および身体的側面(PCS)のスコアが有意に低値であった。結論 就労中のがん患者を休職群と仕事継続群に分け,休職関連要因およびQOLを検討した。その結果,休職群は「がん告知から6か月未満」および「手術を受けていない者」が関連しており,さらに休職群のQOLは仕事継続群に比して低く,とくに身体的側面(PCS)と役割/社会的側面(RCS)が低いことを認めた。以上から,がん患者の就労支援には,これらの特性に配慮することが必要であることが示唆された。