著者
兼児 敏浩 石橋 美紀 日比 美由紀
出版者
Japan Society for Health Care Management
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.399-403, 2009

患者ハラスメントを 「医療提供者に対する患者や患者家族による不当な要求や暴言、暴力 (セクシャルハラスメントも含む)」 と定義し、全国16の医療施設に協力を求め、実態調査を行った。116事例について把握できたが、想定よりも事例数が少なかった原因は患者ハラスメントに対する認識不足や収集システムの不備にあると推測された。患者ハラスメントはすべての部署・時間帯に発生しており、40代の男性が加害者となることが多かった。患者ハラスメントはまったくの言いがかりである場合は半分以下で患者の病状や些細な医療上のミスが誘引となる事例などが多く、半分以上が医療特有の原因に起因していると考えられた。被害者は女性看護師をはじめとして多くの職種に渡り、恐怖心や不快感のみならず厭世的な気分になることも多く、早急な対策が必要であると考えられた。
著者
池田 登顕 井上 俊之 菊谷 武 呉屋 朝幸 田中 良典 呉屋 弘美 佐野 広美 庄司 幸江 須藤 紀子 長島 文夫 藤澤 節子 佐藤 博之
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.185-189, 2016-03-01 (Released:2021-12-10)
参考文献数
17

在宅医療・緩和ケアカンファレンス(以下、本会という)は、北多摩南部医療圏にて多職種連携推進研修を開催してきた。今回、阿部らが開発した「医療介護福祉の地域連携尺度」を一部本地域に合わせて改変したものを用いて、本会の取組みを客観的に評価した結果、有用な知見が得られたので報告する。 調査は、75名を対象とし多職種が集まる本会以外の研修会への参加頻度も含め、過去3年間で、「本会の研修会参加6回以上」、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」、「多職種連携の研修会参加6回未満」の3群に分け、連携尺度スコアをKruskal-Wallis検定にて検証した。post-hoc testとしては、Scheffe法を用いた。 最終的に、15%以上の欠損値が存在した1名を除外した、74名の回答を分析した。過去3年間において、「本会の研修会参加6回以上」、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」、「多職種連携の研修会参加6回未満」の3群間における連携尺度スコアのKruskal-Wallis検定の結果、有意差がみられた。また、多重比較の結果「本会の研修会参加6回以上」群の連携尺度スコアは、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」群および「多職種連携の研修会参加6回未満」群と比較して有意に高かった(P<0.001)。 地域での多職種連携推進には、その地域で開催されている研修会へ年2回以上の参加が推奨されると考えた。
著者
中川 義章 野口 雅滋 竹村 匡正 吉原 博幸
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.511-518, 2009-03-01 (Released:2011-03-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1

DPC調査提出用データを有効利用する形で新たに開発した経営分析システムを用いて、中核市中病院Aが診断群別包括制度 (DPC) となる前後の分析を行った。病院A (一般病床数535床) ではDPC参入にあたり、経営戦略として病床稼働率にこだわらず病床回転率の上昇を単純な目標として掲げた。その結果、2005年と2006年10月の単月比較で病床稼働率が86.9%から75.0%へ減少したが病床回転率が1.6から2.0となり、平均在院日数も18.8日から15.5日へと短縮された。結果として一人一日入院単価が50,540円から53,313円へと増加し、材料費が年間8.5%縮減出来た。単年度病院医業収支は約0.5億円の赤字から約2.2億円の黒字となった。今回この収益構造の変化ともいえる大幅な変化の分析を試みたところ、黒字化した主たる要因は「病床回転率の向上」が副次的にもたらした診療形態の変化であり、外来誘導化であったことが明確となった。
著者
徳永 誠 渡邊 進 中根 惟武
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.324-328, 2006-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
4
被引用文献数
1

外来患者170例において待ち時間と満足度を組み合わせた外来患者調査を行った。許容できる待ち時間の平均は、受付18分、診察待ち37分、検査23分、計算会計10分、病院滞在時間68分であり、診察待ち、検査、病院滞在時間では、許容時間よりも実際かかった時間の方が長かった。実際かかった時間が許容範囲内であった患者の割合は、診察待ち時間で45%、病院滞在時間で38%であった。満足度でも「診察待ち時間」が最も満足度が低く5段階評価の平均は3.0点であった。外来受診への満足度は、医師の診察への満足度や診察待ち時間への満足度と強い相関があった。外来待ち時間調査の際、患者の考える許容待ち時間と満足度を同時に調査すれば、待ち時間の数字だけでは捉えきれない患者の評価がわかる利点がある。
著者
稲垣 春夫
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.312-315, 2008-09-01 (Released:2011-03-16)
参考文献数
5

顧客満足 (CS) とは「顧客の抱える問題をいち早く解決すること」によって得られる。よって、健康上の問題を抱える患者は病院にとって顧客と言える。また、CSはその範囲を拡大してCS (患者・家族の満足)、DS (連携先の医療機関、福祉施設等の満足)、ES (自院の職員の満足) の三つの顧客満足と捉えることが出来る。組織のマネジメントとは提供するモノやサービスの質を保証することであり、病院のマネジメントは医療の質を向上し、三つの顧客満足を達成することと定義される。トヨタ記念病院は三つの顧客満足の考え方を「利用される方々の笑顔が私たちの誇りです」として理念の最初に掲げるとともに、CSを病院マネジメントの根幹に置いている。さらに、日常業務の達成のために方針管理の手法を用いているが、トヨタ自動車の方針管理は職員の人材育成に重きが置かれており、能力育成主義と呼ばれるべきものである。当院の実施した医療の質向上のための方策の一部である、組織横断的業務活動の推奨、臓器別センター制の導入および、臨床指標の設定と活用について若干の説明を加える。
著者
東 禎二 梅村 俊彦 下川 和輝 山田 浩司
出版者
Japan Society for Health Care Management
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.350-355, 2007

医療現場におけるIT化の進展に伴って、電子カルテを始めとして関連する部門システムおよびそのデータベースであるマスタの数も増加している。特に医薬品に関わるマスタ (以下薬品マスタ) はオーダリングシステム、医事システムはもとよりほぼすべての部門システムに関連しており、その不整合は在庫管理だけでなく、安全管理面でも問題となり得る。<BR>当院では1999年11月物流システムの導入によりそのマスタ管理ツールを用いて物流、医事、オーダリングの3システムについて一元管理を実施してきた。しかし2003年9月の電子カルテおよび関連する部門システムの導入により薬品マスタも増加し、またマスタ情報がタイムリーに各部門に伝わらないことによるマスタメンテナンスの作業遅延が実務医療に支障をきたすことも想定された。さらに当院では電子カルテに連携した薬品在庫管理を目指しており、管理精度の向上が必須課題となっていることからも運用を含めたさらなる改善が必要となった。<BR>そこで同時期に更新される物流システムのマスタ管理ツールを全面改良し、同時に従来の伝票運用から院内Eメールおよび院内イントラネットの共有ファイルを活用した運用に変更した。結果トータル作業時間と登録完了までの所要日数の実質的な短縮が可能となった。<BR>本稿では、当時は未解決であった調剤システムとの連携部分が完了したので、その報告をする。
著者
稲葉 正敏 太田 和子 垣内 祥宏
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.139-143, 2010-09-01 (Released:2018-10-17)
参考文献数
6

内服薬に関する投薬エラー発生防止を目的に、病棟に担当薬剤師を配置し、内服薬の新しい管理方法を看護師と共に立案・試行した。新管理方法の導入により、誤投薬、過量投与、配薬忘れの回避などが認められ、内服薬に関する投薬エラー発生件数を約4分の1に減少させることができた。看護師に対するアンケート調査から、「配薬業務にかかる時間が減少し、他業務に専念できるようになった」、「配薬業務に対する意識が高まった」など新管理方法を支持する回答が得られた。 病棟での薬剤師による内服薬の新管理方法は、投薬の安全性向上だけでなく、看護業務の効率化、患者サービスの向上にも貢献できると考えられた。
著者
栗原 綾子 田隝 博樹 上島 健太郎 井上 忠夫
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.201-204, 2010

<p> 血液凝固に影響を与える薬剤(ACD:anti-coagulation drug)を服用中の患者が安全に検査・手術を受けるには、薬剤の適切な休薬が必要である。</p><p> 近年、多くのジェネリック薬が発売されており、他の医療機関での処方薬剤のチェックでは薬剤師の介入が不可欠である。</p><p> 国際医療福祉大学三田病院脊椎・脊髄センターにおける患者服用薬チェック業務は、検査・手術の入院が決定したら、外来受診の際に薬剤師がACDの鑑別と休薬期間の指導を行っている。</p><p> 今回、2009年1〜3月の3ヶ月間に脊椎・脊髄センターで検査・手術入院した患者を対象とし、薬剤師による患者服用薬チェック業務の実績調査を行った。対象患者は283名(平均年齢:60.7歳)、その内ACDを服用している患者は121名(平均年齢:69.2歳)で服用率は42.8%であった。本調査期間におけるACDの服用ミスによる検査・手術の延期や中止は1例もなく、薬剤師によるACDの患者服用薬チェック業務の意義が高いことが改めて確認できた。</p>
著者
兼児 敏浩 石橋 美紀 日比 美由紀
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.399-403, 2009-09-01 (Released:2013-08-26)
参考文献数
6
被引用文献数
1

患者ハラスメントを 「医療提供者に対する患者や患者家族による不当な要求や暴言、暴力 (セクシャルハラスメントも含む)」 と定義し、全国16の医療施設に協力を求め、実態調査を行った。116事例について把握できたが、想定よりも事例数が少なかった原因は患者ハラスメントに対する認識不足や収集システムの不備にあると推測された。患者ハラスメントはすべての部署・時間帯に発生しており、40代の男性が加害者となることが多かった。患者ハラスメントはまったくの言いがかりである場合は半分以下で患者の病状や些細な医療上のミスが誘引となる事例などが多く、半分以上が医療特有の原因に起因していると考えられた。被害者は女性看護師をはじめとして多くの職種に渡り、恐怖心や不快感のみならず厭世的な気分になることも多く、早急な対策が必要であると考えられた。
著者
小玉 かおり
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.221-224, 2012-03-01 (Released:2020-06-26)
参考文献数
4

近年、医療機関の機能分化が進められ急性期病院の在院日数短縮の流れは加速しており、地域の医療、介護、福祉などの多機関多職種が連携し患者が円滑に在宅医療に移行するためのシステム作りが課題となっている。急性期病院では退院後の患者の生活をイメージできないまま医療や看護が行われ、退院支援・退院調整の必要な入院患者の特定が出来なかったり遅れたりする状況があり対策の必要性があった。 今回、医師や看護師およびコメディカル等に退院後の患者家族の様子をフィードバックし、訪問診療医や訪問看護師等と意見交換する場としての退院後フィードバックカンファレンスを試みた。2009年度に2回開催したところ各回40名前後の参加があり、院外からは訪問診療医と訪問看護師およびケアマネジャーが参加した。診療科の特徴的な退院支援・退院調整事例を取り上げ退院後の様子を画像で伝えるなど、急性期病院の職員が患者の退院後の生活に関心を持ち理解しやすいように工夫した。その結果、急性期病院職員が退院後の患者家族の様子を知る機会となり、訪問診療医や訪問看護師等との相互理解や信頼関係構築に役に立つという結果を得ることができた。
著者
深野 久美 七井 裕子 芳賀 克夫
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.364-368, 2008-09-01 (Released:2011-03-16)
参考文献数
12

医療事故に関わった医療従事者のサポートの必要性は従来から述べられているが、病院が系統的なサポートを実践するための手順を示したマニュアルの報告は少ない。今回、国立病院機構本部九州ブロック事務所では、事故当事者に対するサポートマニュアルを作成したので、その内容を紹介する。(1) 幹部管理者は事故直後から現場を積極的に支援し、現場スタッフが行った的確な行動を認める発言に心がける。(2) 最初の家族への説明は、主治医や看護師長、幹部管理者等で行い、事故当事者となった看護師や経験の浅い医師等は同席させない。(3) 事故当事者に過失があるかどうかは、十分な検証作業が終るまで結論を出さない。(4) 院内で事故当事者を含めて事故の検証委員会を開催し、厳正に、且つ、配慮を持って事故を検証する。(5) 検証作業で事故当事者の過失が明らかになっても、幹部管理者は事故当事者を非難・叱責するような言動を慎む。事故当事者と事故を振り返り、同じような事故を再び起こさないためには、どうしたらいいかを話し合う。上記内容を、12回に及ぶ研修会で管内の病院職員に周知したが、病院職員からは病院、ブロック事務所への信頼感が増したとの声が多く寄せられた。従って、本マニュアルは、病院職員の組織への信頼感醸成に有用であると考えられる。今後、本マニュアルが事故当事者の離職率の減少などに貢献したか検討していきたい。
著者
宮越 浩一 高橋 静子 古田 康之 夏目 隆史
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.114-118, 2010-09-01 (Released:2018-10-17)
参考文献数
9

医療機関においては転倒事故に対する十分な対策が求められる。今回われわれは簡便な転倒対策を構築する目的で、入院初期に得られる複数の所見より転倒転落を予測する因子の抽出を試みたので報告する。 2008年11月より3ヶ月間の間に当院に入院した連続症例を対象とした。転倒転落を予測する因子として17項目からなるチェックリストを看護師により入院初期(24時間以内)に評価した。本チェックリストは年齢、3項目の身体機能、5項目の精神機能、3項目の複合要因、5項目のその他の因子より構成されている。このチェックリストは当院の既存のチェックリストに、先行研究で指摘されているいくつかの転倒予測因子を追加することにより作成した当院独自のものである。 対象となったのは2,258例であり、このうち転倒転落に至ったのは55例であった。ロジスティック回帰分析による多変量解析を行った。ここでは転倒転落の既往がある、座位バランス不良、ふらつきがある、貧血、介助が必要にも関わらず一人で動こうとする、の5項目が抽出された。Receiver Operating Characteristic曲線では、曲線下面積が0.776となっていた。予測精度は感度0.709、特異度0.799であり、入院初期に得られる情報のみからある程度のスクリーニングが可能であった。今後さらに簡便かつ精度の高い転倒予測手法の構築を進めたいと考える。
著者
大重 育美
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.134-138, 2010-09-01 (Released:2018-10-17)
参考文献数
9

2000年に厚生労働省による「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」が始められ、生活習慣病の一次予防・二次予防の施策が進められてきた。しかし、中間報告では糖尿病有病者・予備軍の増加、肥満者の増加(20歳〜60歳男性)や野菜摂取量不足など目標値に届かず、一部の指標では悪化していることが明らかになった。生活習慣病に対する食習慣の影響も大きいことも周知で、特に食行動の異常として、外的な環境に影響を受けやすく食事も早食いや荒嚼みが多く生活のリズムの乱れで朝食を摂らずに夜間遅い時間に摂る人などが肥満者に多いことが特徴とされている。このように、生活パターンの乱れに伴う食習慣による影響が考えられる職業として、夜勤のある看護職に焦点を当てた。そこで、夜勤という勤務体系が、普段の食習慣、運動習慣、飲酒習慣、身体状況にあたえる影響について年代別に実態調査を行った。夜勤による影響は食習慣にみられ、年代別では20歳代および50歳代に顕著であった。
著者
高橋 健 小林 成禎 広瀬 洋 杉山 恵一 高井 國之 川口 雅裕 白鳥 義宗 野田 俊之 冨田 栄一
出版者
Japan Society for Health Care Management
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.443-447, 2007

岐阜地域は、岐阜市と近隣医師会が地域診療を担当し、中核となる病院が複数設置された人口約80万人の医療圏である。この医療圏において各々の病院で一疾患に対し、異なる様式の地域連携クリティカルパスが運用されると、複数病院と連携しているかかりつけ医には不都合である。このため、岐阜地域の既存の連携体制を基に、2006年8月、各病院と岐阜市医師会の連携を担当する医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、事務職を中心とした岐阜医療連携実務者協議会を設置し、統一地域連携クリティカルパスを作成し運用する試みを行った。<BR>連携ネットワーク構築を先行した展開において、協議会が各病院の専門医の意向を確認し、地域連携クリティカルパスの作成対象疾患をウイルス性慢性肝炎と心筋梗塞とした。続いて、両疾患の専門医と、院内クリティカルパスの専門グループの参加を得て、両疾患地域連携クリティカルパスのワーキンググループを立ち上げ、統一規格の基で地域連携クリティカルパスを作成し、2007年5月、「岐阜地域医師会連携パス」として岐阜地域のかかりつけ医に向けて広く公開した。<BR>「岐阜地域医師会連携パス」の目的は、対象疾患の安定維持と異常所見の早期発見、役割を分けた地域完結型医療の確実な実施、ならびに質の保持された地域における医療の均一化とした。地域連携クリティカルパスの評価と改定は、各ワーキンググループが行い、連携部門は運用の支援・モニターと、ネットワークの維持・安定を担当することとした。
著者
高橋 泰 斎藤 奈々 野末 睦
出版者
Japan Society for Health Care Management
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.410-414, 2009

医師・看護師・医療技術職で構成されていたクリティカルパス委員会へ、診療情報管理士が加わり運用方法の改善を行った。診療情報管理士が加わった当初は、看護師主体の運用の補助業務をするに止まり、診療情報管理士加入による利点は多くなかった。そこで、診療情報管理士がより主体的に関わる事とし、従来の運用方法、運用状況、臨床結果から運用規定とバリアンス規定の作成を実施した。運用の主な変更点として、クリティカルパス様式及び情報管理を、各診療科管理から全診療科一元管理へ変更した。院内 LAN システム上でクリティカルパスの様式を確認印刷が出来るようにした事で利便性が向上した。又、クリティカルパス使用時に得られた情報は、病歴システム上の情報と統合された。その結果、クリティカルパス使用患者の情報は6種類から51種類に増加した。次に、バリアンス規定を作成した。バリアンス規定作成後はバリアンス報告数が増加し、使用クリティカルパスあたりのバリアンス発生クリティカルパス比率は増加した。又、診療情報管理士により、あるバリアンスに関する問題提起がされ、それに基づいて診療科ではクリティカルパス内の再検討を行った。その結果、そのバリアンスはχ 2 乗検定をもって有意に減少した。このように、診療情報管理士がクリティカルパスの運用に積極的に関わる事で、多職種の職員が共同使用するクリティカルパス運用において改善がなされた。
著者
藤本 俊一郎 合田 雄二 平井 有美 大橋 智明
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.371-378, 2009-09-01 (Released:2013-08-26)
参考文献数
4

DPC対象病院においては診療報酬が包括支払いであるため、コスト管理とともに報酬の範囲内で必要な治療を行うことが経営上要請される。当院ではクリティカルパスを用いて診療の標準化・効率化を図ってきたが、さらに原価情報を分析するため、患者別原価計算システムを構築した。医事会計システム、DPC ソフト、電子クリティカルパスソフトからの情報を原価計算システムに集積し、人事・給与データを活用して分析した。未破裂脳動脈瘤クリッピングのクリティカルパス使用患者12例で原価計算を行い、収入は22,194,125円、原価は5,538,825円、収益は16,655,300円、収益率は75%であり、1人当たりの収益は1,387,941円であった。原価計算・収益原価構造グラフでの検討で収益の大部分は手術による収益であることが明らかになった。平均在院日数は入院期間Ⅱの範囲内で、DPC 収入も出来高収入を上回っており、未破裂脳動脈瘤クリッピングのクリティカルパスはDPCに対応できていると判断した。 クリティカルパスと患者別原価計算を融合することは、臨床的ベストプラクティスと経済的ベストプラクティスを可視化することができ、医療の質向上と経営基盤の確立に貢献できると考える。
著者
池田 俊也 小林 慎
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.521-525, 2008-03-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
15

60歳男性の高コレステロール血症患者 (HL患者) の予後に関するマルコフモデルを構築し、一般的なHL患者と重症HL患者の2種類の患者に対する複数のHMG-CoA還元酵素阻害剤 (スタチン) 治療の費用対効果を評価した。一般的なHL患者に対するスタチンは、ロスバスタチン2.5mg/日、アトルバスタチン10mg/日、ピタバスタチン2mg/日、プラバスタチン10mg/日を分析対象とした。重症HL患者に対しては、ロスバスタチン5mg/日、アトルバスタチン20mg/日、ピタバスタチン4mg/日を分析対象とした。分析は、支払い者の立場で実施し、医療費と質調整生存年を推計した。一般的なHL患者を対象とした場合の質調整生存年は、アトルバスタチンが最も大きかったが、ロスバスタチンに対するアトルバスタチンの増分費用対効果比は11億円と非常に高額であった。重症HL患者を対象とした場合は、ロスバスタチンは他の2つの薬剤よりも費用が小さく、かっ質調整生存年が大きかった。一般的なHL患者及び重症HL患者ともに、費用対効果の観点からは、ロスバスタチンが最も好ましい薬物療法であると評価された。
著者
君野 孝二
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.488-494, 2009-12-01 (Released:2014-09-05)
参考文献数
3

DPC対象病院の拡大により多くの医療機関より莫大なデータが集計・公開されるようになった。その結果、様々な情報の分析が行われ医療機関の間での比較が可能となり、診療の透明性・標準化が進む方向へと展開している。DPCが出来高で行われる診療と異なる点の一つは入院目的が明確であることがあげられる。クリティカルパスも具体的な入院目的に対して作成・運用され、標準化・効率化のために見直しが行われることが要求される。クリティカルパス見直しのツールとしてDPCベンチマーク分析は有用である。
著者
鈴村 友宏
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.589-592, 2010
被引用文献数
2

当院では、2003年よりオーダリングシステムを導入し、採血スピッツは採血管準備システムにより管理されてきた。時間内の検査オーダに関してはシステム的に管理されていたが、時間外については対策が不十分であった。オーダ変更時の伝達不足による検査漏れや余剰検査の実施などのインシデント・アクシデントが月に 2 件程度発生しており、年に 1 件程度、重大なアクシデントにつながりかねない患者の取り違い事例も発生していた。<br> この問題を解決するにあたりセーフティマネジメントチーム(safety management team:以下、 SMT と略) および、 その下部組織である SMT ワーキングを中心に採血認証システムの導入計画を進めた。SMT ワーキングは看護師、コメディカル、事務から成り、医療安全に関わる組織横断的で実践的な活動を行っている。<br> 本システムの導入計画においても、看護師、コメディカル、事務からも多角的な意見を出し合いながら、 SHELL 分析による現状の問題点の抽出を行い、 システム化における目標を明確化した上で、医療安全と業務の効率化について配慮したシステムの構築を行った。<br> 結果として、システム導入後の採血に関するインシデント・アクシデントは、導入前後を各 5 ヶ月間で比較すると12件から 2 件に減少した。又、採血業務における一連の作業行程の効率化により、1 日あたり約190名の採血対象患者の準備作業が、約25名の準備作業となり業務量が約86%削減された。このことからもシステム導入によって最大限の効果が得られたと考える。