著者
亀井 美和子 恩田 光子
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.377-383, 2003-12-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
4

【目的】平成14年4月、外来患者に対する薬剤の投与日数の制限が原則廃止されたことを受けて、本研究では、長期投薬に際する留意点等について検討するために、外来患者における薬の受け取り状況を分析した。【方法】調査は、関西と北陸に所在する保険薬局チェーンの19店舗において、2002年5月中旬の一週間に来局した外来患者を対象として、自記式調査票を配布し、郵送または店舗内において回収した。分析には慢性疾患での通院者の回答を用いた。【結果・考察】調査票の配布数は1,745通、回収数は1,226通であった (回収率70.3%) 。全回答者のうち、慢性疾患での通院者696人の回答を分析に用いた。大部分の患者 (85.3%) は、通院期間が1年以上であり、4月以降に投薬日数が増えた患者は9.8%であった。線形回帰分析の結果からは、「できれば受診せずに薬を受け取りたい」との要望に関わる要因として、回答者の年齢、薬または処方せんの受け取りだけの通院頻度、希望する1回あたりの投薬日数、薬の飲み忘れの頻度などがあげられた。また、服薬コンプライアンスには、回答者の職業、特定のいくつかの疾患、通院期間、薬の受け取りに関する選好が関わっていることが示唆された。これらより、単に患者の要望に対応する形での投薬日数の長期化は、薬物治療の質を低下させる恐れがあると思われた。
著者
池田 登顕 井上 俊之 菊谷 武 呉屋 朝幸 田中 良典 呉屋 弘美 佐野 広美 庄司 幸江 須藤 紀子 長島 文夫 藤澤 節子 佐藤 博之
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.185-189, 2016-03-01 (Released:2021-12-10)
参考文献数
17

在宅医療・緩和ケアカンファレンス(以下、本会という)は、北多摩南部医療圏にて多職種連携推進研修を開催してきた。今回、阿部らが開発した「医療介護福祉の地域連携尺度」を一部本地域に合わせて改変したものを用いて、本会の取組みを客観的に評価した結果、有用な知見が得られたので報告する。 調査は、75名を対象とし多職種が集まる本会以外の研修会への参加頻度も含め、過去3年間で、「本会の研修会参加6回以上」、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」、「多職種連携の研修会参加6回未満」の3群に分け、連携尺度スコアをKruskal-Wallis検定にて検証した。post-hoc testとしては、Scheffe法を用いた。 最終的に、15%以上の欠損値が存在した1名を除外した、74名の回答を分析した。過去3年間において、「本会の研修会参加6回以上」、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」、「多職種連携の研修会参加6回未満」の3群間における連携尺度スコアのKruskal-Wallis検定の結果、有意差がみられた。また、多重比較の結果「本会の研修会参加6回以上」群の連携尺度スコアは、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」群および「多職種連携の研修会参加6回未満」群と比較して有意に高かった(P<0.001)。 地域での多職種連携推進には、その地域で開催されている研修会へ年2回以上の参加が推奨されると考えた。
著者
中川 義章 野口 雅滋 竹村 匡正 吉原 博幸
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.511-518, 2009-03-01 (Released:2011-03-16)
参考文献数
14
被引用文献数
1

DPC調査提出用データを有効利用する形で新たに開発した経営分析システムを用いて、中核市中病院Aが診断群別包括制度 (DPC) となる前後の分析を行った。病院A (一般病床数535床) ではDPC参入にあたり、経営戦略として病床稼働率にこだわらず病床回転率の上昇を単純な目標として掲げた。その結果、2005年と2006年10月の単月比較で病床稼働率が86.9%から75.0%へ減少したが病床回転率が1.6から2.0となり、平均在院日数も18.8日から15.5日へと短縮された。結果として一人一日入院単価が50,540円から53,313円へと増加し、材料費が年間8.5%縮減出来た。単年度病院医業収支は約0.5億円の赤字から約2.2億円の黒字となった。今回この収益構造の変化ともいえる大幅な変化の分析を試みたところ、黒字化した主たる要因は「病床回転率の向上」が副次的にもたらした診療形態の変化であり、外来誘導化であったことが明確となった。
著者
徳永 誠 渡邊 進 中根 惟武
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.324-328, 2006-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
4
被引用文献数
1

外来患者170例において待ち時間と満足度を組み合わせた外来患者調査を行った。許容できる待ち時間の平均は、受付18分、診察待ち37分、検査23分、計算会計10分、病院滞在時間68分であり、診察待ち、検査、病院滞在時間では、許容時間よりも実際かかった時間の方が長かった。実際かかった時間が許容範囲内であった患者の割合は、診察待ち時間で45%、病院滞在時間で38%であった。満足度でも「診察待ち時間」が最も満足度が低く5段階評価の平均は3.0点であった。外来受診への満足度は、医師の診察への満足度や診察待ち時間への満足度と強い相関があった。外来待ち時間調査の際、患者の考える許容待ち時間と満足度を同時に調査すれば、待ち時間の数字だけでは捉えきれない患者の評価がわかる利点がある。
著者
稲垣 春夫
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.312-315, 2008-09-01 (Released:2011-03-16)
参考文献数
5

顧客満足 (CS) とは「顧客の抱える問題をいち早く解決すること」によって得られる。よって、健康上の問題を抱える患者は病院にとって顧客と言える。また、CSはその範囲を拡大してCS (患者・家族の満足)、DS (連携先の医療機関、福祉施設等の満足)、ES (自院の職員の満足) の三つの顧客満足と捉えることが出来る。組織のマネジメントとは提供するモノやサービスの質を保証することであり、病院のマネジメントは医療の質を向上し、三つの顧客満足を達成することと定義される。トヨタ記念病院は三つの顧客満足の考え方を「利用される方々の笑顔が私たちの誇りです」として理念の最初に掲げるとともに、CSを病院マネジメントの根幹に置いている。さらに、日常業務の達成のために方針管理の手法を用いているが、トヨタ自動車の方針管理は職員の人材育成に重きが置かれており、能力育成主義と呼ばれるべきものである。当院の実施した医療の質向上のための方策の一部である、組織横断的業務活動の推奨、臓器別センター制の導入および、臨床指標の設定と活用について若干の説明を加える。
著者
渡辺 明良 市川 雅人 小林 靖枝 青野 真弓 長田 能央 林 譲也 三谷 嘉章 芦田 弘毅
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.667-670, 2006-03-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
8

現在の病院経営において, 病院経営マネジメントスタッフのキャリア開発は実務面の重要な経営 課題であるにもかかわらず, 研究面ではあまり注目されてこなかった.そこで本稿は, 国内および海外, 特に米国の病院経営マネジメントスタッフのキャリア開発等に関する先行研究のレビューを行うとともに, 国内・海外の病院に対してインタビューを中心とした事例調査を実施し, 病院経営マネジメントスタッフのキャリア開発の現状について報告する.その結果, 国内では病院経営マネジメントスタッフに求められる役割や能力や資格などに関する研究が不足していることが示された.事例調査からは, 階層別研修を中心に置いた病院内部の育成が中心であり, 病院経営マネジメントスタッフに求められる役割や能力や資格を明確に定義した上で採用や育成を行っている事例は見られなかった.一方, 海外の事例調査では, 病院経営マネジメントスタッフの役割は病院経営全般のマネジメントとしてその資格や処遇が明確に定義されており, キャリア開発は自己責任に基づくことが明らかになった.また, MBA (経営学修士) やMHA (病院経営管理学修士) などの教育機関での専門教育との連携がとられており, これらが経営マネジメントスタッフの資格要件として, キャリア開発上重要な役割を果たしている事がわかった.
著者
山内 豊明 高木 美智子 藤内 美保
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.311-318, 2003-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1

肥満などとの関連から、『早食い』は改善すべき食習慣の1つとされており、日常的に使用されていながら、その明確な定義はない。今回食べ方についてのイメージを聞き取り調査した。『早食い』については、48%が「全体の食事時間が短い」としその具体的な食事時間を2~20分と、44%が「一口あたりの咀嚼回数が少ない」としその具体的な咀嚼回数を2~30回、と回答していた。また『ゆっくりよく噛んで食べる』については、34%が「全体の食事時間が長い」としその具体的な食事時間を15分~1時間と、64%が「一口あたりの咀嚼回数が多い」としその具体的な咀嚼回数を10~100回、と回答していた。一方で具体的に咀嚼回数や時間を聞いても「思いっかない」と回答した者もいた。この結果、単に食事時間や一口あたりの咀嚼回数だけをイメージするとは限らないことが明らかになり、食べ方の指導時には対象者の認識のアセスメントが不可欠であると考えられた。
著者
稲葉 正敏 太田 和子 垣内 祥宏
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.139-143, 2010-09-01 (Released:2018-10-17)
参考文献数
6

内服薬に関する投薬エラー発生防止を目的に、病棟に担当薬剤師を配置し、内服薬の新しい管理方法を看護師と共に立案・試行した。新管理方法の導入により、誤投薬、過量投与、配薬忘れの回避などが認められ、内服薬に関する投薬エラー発生件数を約4分の1に減少させることができた。看護師に対するアンケート調査から、「配薬業務にかかる時間が減少し、他業務に専念できるようになった」、「配薬業務に対する意識が高まった」など新管理方法を支持する回答が得られた。 病棟での薬剤師による内服薬の新管理方法は、投薬の安全性向上だけでなく、看護業務の効率化、患者サービスの向上にも貢献できると考えられた。
著者
辻 泰弘 田中 英子
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.385-388, 2004-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
12

近年, 調剤に係わる医療事故が相次ぎ, 薬剤師による処方監査の重要性が再認識されている. 今回, リスクマネージメントの観点から処方せん疑義照会内容を集計し, 検討を行った. 平成14年に医療の質の向上を目的として, 電子カルテ及びオーダリングシステムを核とした診療・調剤支援システムを導入した後, 平成15年1月から12月までの本院処方せん159,354枚 (外来: 125,723枚入院: 33,631枚) において, 疑義照会を行った1,010件 (外来: 679件入院: 331件) を「薬学的疑義照会」と「処方形式的疑義照会」に分類し比較検討した. 総処方せん枚数に対する疑義照会率は0.63% (外来0.54%, 入院0.98%) であり, 入院の疑義照会率は外来の疑義照会率と比較して有意差 (p<0.05) がみられた. 外来・入院双方とも疑義照会発生比率は, 「処方形式的疑義照会」が「薬学的疑義照会」を上回る結果となった. なお, 疑義照会後の処方変更率は外来90.3%, 入院92.1%, 全体で91.6%と高い処方変更率となり, 薬剤師の疑義照会が合理性を持って受け入れられ, 適正な内容であったことを示しており, 副作用防止・相互作用回避など, 医薬品に関わるリスクマネージメントへ貢献していることが示唆された.
著者
栗原 綾子 田隝 博樹 上島 健太郎 井上 忠夫
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.201-204, 2010

<p> 血液凝固に影響を与える薬剤(ACD:anti-coagulation drug)を服用中の患者が安全に検査・手術を受けるには、薬剤の適切な休薬が必要である。</p><p> 近年、多くのジェネリック薬が発売されており、他の医療機関での処方薬剤のチェックでは薬剤師の介入が不可欠である。</p><p> 国際医療福祉大学三田病院脊椎・脊髄センターにおける患者服用薬チェック業務は、検査・手術の入院が決定したら、外来受診の際に薬剤師がACDの鑑別と休薬期間の指導を行っている。</p><p> 今回、2009年1〜3月の3ヶ月間に脊椎・脊髄センターで検査・手術入院した患者を対象とし、薬剤師による患者服用薬チェック業務の実績調査を行った。対象患者は283名(平均年齢:60.7歳)、その内ACDを服用している患者は121名(平均年齢:69.2歳)で服用率は42.8%であった。本調査期間におけるACDの服用ミスによる検査・手術の延期や中止は1例もなく、薬剤師によるACDの患者服用薬チェック業務の意義が高いことが改めて確認できた。</p>
著者
兼児 敏浩 石橋 美紀 日比 美由紀
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.399-403, 2009-09-01 (Released:2013-08-26)
参考文献数
6
被引用文献数
1

患者ハラスメントを 「医療提供者に対する患者や患者家族による不当な要求や暴言、暴力 (セクシャルハラスメントも含む)」 と定義し、全国16の医療施設に協力を求め、実態調査を行った。116事例について把握できたが、想定よりも事例数が少なかった原因は患者ハラスメントに対する認識不足や収集システムの不備にあると推測された。患者ハラスメントはすべての部署・時間帯に発生しており、40代の男性が加害者となることが多かった。患者ハラスメントはまったくの言いがかりである場合は半分以下で患者の病状や些細な医療上のミスが誘引となる事例などが多く、半分以上が医療特有の原因に起因していると考えられた。被害者は女性看護師をはじめとして多くの職種に渡り、恐怖心や不快感のみならず厭世的な気分になることも多く、早急な対策が必要であると考えられた。
著者
小玉 かおり
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.221-224, 2012-03-01 (Released:2020-06-26)
参考文献数
4

近年、医療機関の機能分化が進められ急性期病院の在院日数短縮の流れは加速しており、地域の医療、介護、福祉などの多機関多職種が連携し患者が円滑に在宅医療に移行するためのシステム作りが課題となっている。急性期病院では退院後の患者の生活をイメージできないまま医療や看護が行われ、退院支援・退院調整の必要な入院患者の特定が出来なかったり遅れたりする状況があり対策の必要性があった。 今回、医師や看護師およびコメディカル等に退院後の患者家族の様子をフィードバックし、訪問診療医や訪問看護師等と意見交換する場としての退院後フィードバックカンファレンスを試みた。2009年度に2回開催したところ各回40名前後の参加があり、院外からは訪問診療医と訪問看護師およびケアマネジャーが参加した。診療科の特徴的な退院支援・退院調整事例を取り上げ退院後の様子を画像で伝えるなど、急性期病院の職員が患者の退院後の生活に関心を持ち理解しやすいように工夫した。その結果、急性期病院職員が退院後の患者家族の様子を知る機会となり、訪問診療医や訪問看護師等との相互理解や信頼関係構築に役に立つという結果を得ることができた。
著者
深野 久美 七井 裕子 芳賀 克夫
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.364-368, 2008-09-01 (Released:2011-03-16)
参考文献数
12

医療事故に関わった医療従事者のサポートの必要性は従来から述べられているが、病院が系統的なサポートを実践するための手順を示したマニュアルの報告は少ない。今回、国立病院機構本部九州ブロック事務所では、事故当事者に対するサポートマニュアルを作成したので、その内容を紹介する。(1) 幹部管理者は事故直後から現場を積極的に支援し、現場スタッフが行った的確な行動を認める発言に心がける。(2) 最初の家族への説明は、主治医や看護師長、幹部管理者等で行い、事故当事者となった看護師や経験の浅い医師等は同席させない。(3) 事故当事者に過失があるかどうかは、十分な検証作業が終るまで結論を出さない。(4) 院内で事故当事者を含めて事故の検証委員会を開催し、厳正に、且つ、配慮を持って事故を検証する。(5) 検証作業で事故当事者の過失が明らかになっても、幹部管理者は事故当事者を非難・叱責するような言動を慎む。事故当事者と事故を振り返り、同じような事故を再び起こさないためには、どうしたらいいかを話し合う。上記内容を、12回に及ぶ研修会で管内の病院職員に周知したが、病院職員からは病院、ブロック事務所への信頼感が増したとの声が多く寄せられた。従って、本マニュアルは、病院職員の組織への信頼感醸成に有用であると考えられる。今後、本マニュアルが事故当事者の離職率の減少などに貢献したか検討していきたい。
著者
戸崎 かをり 村上 多寿子 氏家 智恵美 加藤 洋子
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.657-660, 2003

当院では平成13年7月9日にデイサージャリー (以下DSと略す) センターが開設された。日帰り手術を受ける患者の不安軽減と質の高いかっ均一なケアの提供のたあに、クリティカルパス (以下CPと略す) 導入とケアコーディネーターの配置がなされた。大きな特色として (1) 全疾患にCPを使用 (2) 外来にて入院予約の時点から退院まで、ケアコーディネーターが継続した関わりを持つことが挙げられる。CPシートの作成など、立ち上げまでの準備はスタッフが一丸となって行ってきた。また、笑顔で優しくをモットーに患者やその家族の方達の精神的な支えとなることを心掛けてきた。開設から1年が経過し、患者やスタッフの声から、DSにおいてCPとケアコーディネーターの役割が重要であると再確認できた。今後は新たな課題を検討すると共に、日帰り手術の良さをアピールし普及に努あたい。
著者
北浦 道夫 西本 雅彦 佐牟田 健 戸田 成志
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.440-444, 2003

当院のペインクリニックでは主に痛みを持っ患者を対象に神経ブロックが行われているが、その合併症は多岐にわたっている。そのため、ペインクリニックにクリティカルパスを導入し、患者および医療従事者の理解度の向上、合併症の早期発見、インフォームドコンセントの充実、業務の効率化、チーム医療の充実、コスト管理などに効果を上げているので紹介する。<BR>当科でクリティカルパスを導入しているのは神経ブロックでは腹腔神経叢ブロック、胸・腰部交感神経節ブロック、神経根ブロック、三叉神経節ブロックなどであり、疾患では顔面神経麻痺に導入している。クリティカルパスは1種類のブロックにっき、患者用パス、医療従事者用パス、患者説明パスの3種類となっている。<BR>また、ペインクリニックにおいても採算を度外視して行われる時代ではもはや無い。現在導入されつつあるDiagnosis Procedure Combination (DPC) に対応できるように我々は各種ブロックに対し、コスト計算を行っている。<BR>現在電子カルテの導入に向け、クリティカルパスとオーダリングシステムをリンクさせることにより、よりいっそう効率的な医療を提供できるように努力中である。クリティカルパスの作成は医師だけで行うのは困難であり、看護師、放射線技師などの医療従事者は当然としてコスト管理については医療事務の協力も得ており、よりよいクリティカルパスを導入できるように推進中である。
著者
真野 俊樹 小林 慎 井田 浩正 山内 一信
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.329-334, 2003-09-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
16

医療改革についての方向性のひとつは医療機関からの情報公開である。患者と医師間における情報の非対称性の問題は、一般に患者側に発生し、その大きさによって患者が不利益を被る可能性があるが故に問題とされる。一方医療という財においては、例えば年代別、職業別などに、罹患しやすい病気を統計的に知りえても、各個人がいっ、どのような病気にかかるかは予測できないという不確実性がある。平成11年の受療行動調査によると、消費者は入院や外来など医療機関受診の際に「家庭・友人・知人」からの情報を重視しているという。われわれが健常人に行った調査では「友人」による情報を信頼している。ブランドは情報の非対称下でのシグナリング機能を果たし、評判によって無駄な探索を止め、取引費用を削減する効果がある。またブランドは、非排他性、非競合性をもち、外部性も持っために公共財であるという考え方もある。この視点から、医療機関が消費者の選択基準になりえるブランド形成の努力をおこなうことも重要ではないか。
著者
宮越 浩一 高橋 静子 古田 康之 夏目 隆史
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.114-118, 2010-09-01 (Released:2018-10-17)
参考文献数
9

医療機関においては転倒事故に対する十分な対策が求められる。今回われわれは簡便な転倒対策を構築する目的で、入院初期に得られる複数の所見より転倒転落を予測する因子の抽出を試みたので報告する。 2008年11月より3ヶ月間の間に当院に入院した連続症例を対象とした。転倒転落を予測する因子として17項目からなるチェックリストを看護師により入院初期(24時間以内)に評価した。本チェックリストは年齢、3項目の身体機能、5項目の精神機能、3項目の複合要因、5項目のその他の因子より構成されている。このチェックリストは当院の既存のチェックリストに、先行研究で指摘されているいくつかの転倒予測因子を追加することにより作成した当院独自のものである。 対象となったのは2,258例であり、このうち転倒転落に至ったのは55例であった。ロジスティック回帰分析による多変量解析を行った。ここでは転倒転落の既往がある、座位バランス不良、ふらつきがある、貧血、介助が必要にも関わらず一人で動こうとする、の5項目が抽出された。Receiver Operating Characteristic曲線では、曲線下面積が0.776となっていた。予測精度は感度0.709、特異度0.799であり、入院初期に得られる情報のみからある程度のスクリーニングが可能であった。今後さらに簡便かつ精度の高い転倒予測手法の構築を進めたいと考える。
著者
中山 理一郎 依田 啓司 山中 修 本田 守弘
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:13456903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.650-653, 2003

質の高いインフォームドコンセント (以下ICと記す) を目指し、本院独自のクリティカルパスのビデオ化を進めビデオパスと称している。その有用性を検討するために急性心筋梗塞ビデオパスを用いボランティアによる検証を行った。説明内容について試験を実施し、理解度を客観的に判断した。ビデオという視覚を含めた説明は、被験者に病態や入院診療内容の理解を高める上で有用な方法であることが示唆された。しかし、医師と直接フェースツーフェースの説明も重要であることが分かった。ビデオパスを含めた様々な方法を用いてICの充実を図っていくことは有用だと考えられる。
著者
大重 育美
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.134-138, 2010-09-01 (Released:2018-10-17)
参考文献数
9

2000年に厚生労働省による「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」が始められ、生活習慣病の一次予防・二次予防の施策が進められてきた。しかし、中間報告では糖尿病有病者・予備軍の増加、肥満者の増加(20歳〜60歳男性)や野菜摂取量不足など目標値に届かず、一部の指標では悪化していることが明らかになった。生活習慣病に対する食習慣の影響も大きいことも周知で、特に食行動の異常として、外的な環境に影響を受けやすく食事も早食いや荒嚼みが多く生活のリズムの乱れで朝食を摂らずに夜間遅い時間に摂る人などが肥満者に多いことが特徴とされている。このように、生活パターンの乱れに伴う食習慣による影響が考えられる職業として、夜勤のある看護職に焦点を当てた。そこで、夜勤という勤務体系が、普段の食習慣、運動習慣、飲酒習慣、身体状況にあたえる影響について年代別に実態調査を行った。夜勤による影響は食習慣にみられ、年代別では20歳代および50歳代に顕著であった。
著者
藤本 俊一郎 合田 雄二 平井 有美 大橋 智明
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.371-378, 2009-09-01 (Released:2013-08-26)
参考文献数
4

DPC対象病院においては診療報酬が包括支払いであるため、コスト管理とともに報酬の範囲内で必要な治療を行うことが経営上要請される。当院ではクリティカルパスを用いて診療の標準化・効率化を図ってきたが、さらに原価情報を分析するため、患者別原価計算システムを構築した。医事会計システム、DPC ソフト、電子クリティカルパスソフトからの情報を原価計算システムに集積し、人事・給与データを活用して分析した。未破裂脳動脈瘤クリッピングのクリティカルパス使用患者12例で原価計算を行い、収入は22,194,125円、原価は5,538,825円、収益は16,655,300円、収益率は75%であり、1人当たりの収益は1,387,941円であった。原価計算・収益原価構造グラフでの検討で収益の大部分は手術による収益であることが明らかになった。平均在院日数は入院期間Ⅱの範囲内で、DPC 収入も出来高収入を上回っており、未破裂脳動脈瘤クリッピングのクリティカルパスはDPCに対応できていると判断した。 クリティカルパスと患者別原価計算を融合することは、臨床的ベストプラクティスと経済的ベストプラクティスを可視化することができ、医療の質向上と経営基盤の確立に貢献できると考える。