- 著者
-
小畑 千晴
- 出版者
- 徳島文理大学
- 雑誌
- 徳島文理大学研究紀要 (ISSN:02869829)
- 巻号頁・発行日
- vol.93, pp.15-21, 2017-03-09 (Released:2018-04-26)
- 参考文献数
- 15
本研究の目的は,親密関係における暴力(IPV)について,原子価論の立場から検討し,その分類を行うことである。 これまでのIPV研究では,加害者による身体的,精神的,経済的暴力など,行為そのものに焦点があてられてきたが,本稿では,IPVの役割を2種,Active Actor (AA) とPassive Actor (PA) に区別し,AAにおける暴力の意味について検討した。その結果,マイナス闘争は「征服と支配」,マイナスつがいは「知りたい願望の追求」,マイナス依存は「飽くなき依存の要求と孤独回避」,マイナス逃避は「自己への侵入に対する防御」の意味を持つことを提示した。原子価論の立場から,AAの治療を考えると,暴力行為そのものを抑制することが目的ではなく,1種の原子価による執拗な対象との繋がりから,他3種の原子価も使用できる柔軟性のある繋がりへと変化させることが鍵となる。