著者
小笠原 信実
出版者
日本医療福祉政策学会
雑誌
医療福祉政策研究 (ISSN:24336858)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.113-136, 2019 (Released:2019-04-02)

世界的な新自由主義化の影響をうけながら、韓国では2004年に廬武鉉政権により、日本では2001年に小泉政権により、新自由主義的医療改革が開始され、両国の産業界とアメリカの要求を受けながら類似した内容の改革が試みられた。しかし韓国では公的医療保険の給付水準が低かったこととサムソン財閥が医療産業の拡大と参入を強力に進めたために新自由主義的医療改革が急速に進んだのに対し、日本では漸進的にしか進まなかった。
著者
小笠原 信実
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.120-132, 2019-11-30 (Released:2021-12-02)
参考文献数
18

本論文は韓国における混合診療の実態を明らかにし,これを考察することにより日本における混合診療の是非をめぐる議論に貢献することを目的とする。韓国では1977年に公的医療保険が始まった時より混合診療が容認され,これは保険非給付診療を広げる結果をもたらしてきた。保険非給付診療の拡大は実損型医療保険の市場を拡大させ,2014年には韓国における実損型医療保険の加入率は66.3%に達した。混合診療の容認は韓国に次のような結果をもたらした。第一に,若年型甲状腺癌などの過剰診療をうながすインセンティブを生み,過剰診療が促進された。第二に,民間保険会社や医療機関は収益を増大させたが,逆に国民の医療における社会的厚生は悪化した。第三に,公的医療保険から民間医療保険への代替が所得,慢性疾患の有無,年齢などによる医療アクセスへの不平等を生んだ。第四に,医療が医学的な判断よりも利潤の確保を目的に行われる傾向が生じる医療の営利化を促進した。
著者
小笠原 信実
出版者
日本医療福祉政策学会
雑誌
医療福祉政策研究 (ISSN:24336858)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.101-126, 2020 (Released:2020-06-09)

米韓FTAは韓国において製造業を主軸とした輸出主導型からサービス業への転換を伴った新自由主義への経済モデルへの転換の中で推進された。この転換のためには韓国内の構造調整と規制緩和が必要であるが、韓国の財閥は米韓FTAにそのための外部的な梃子の役割を期待した。米韓FTAは市場を拡大し、多国籍企業の多岐にわたる利益を保護するが、政府による医療環境の改善を委縮させるなど公共性を制限し、国民生活を悪化させる方向に作用する。