著者
小糸 秀 川本 龍一 鈴木 萌子 上本 明日香 熊木 天児 二宮 大輔 阿部 雅則
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.214-220, 2015 (Released:2015-09-28)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目的 : 近年, 高齢化が進む我が国で, 単に疾患の治療だけではなく生活の質を高めることが重要視されている. 今回, 地域在住者を対象として主観的健康感と平均3.8年後の死亡との関係を検討した.方法 : 2008年度に地域在住の2657名を対象に自記式アンケート調査を郵便法にて実施し, 住民基本台帳を基に平均3.8年後の死亡との関係について検討した. 調査項目は, 死亡に関わる背景因子として, 性別, 年齢, 健康状況 (心脳血管疾患既往歴, うつ状態, 主観的幸福感, 主観的健康感) , 基本的日常生活動作 (BADL : 歩行, 食事, 排泄, 入浴, 整容, 移動を全介助から完全自立まで4段階で評価) , ライフスタイルとして老研式活動能力指標 (TMIG : 手段的自立, 知的能動性, 社会的役割) を用いた.結果 : 1825名, 男性767名 (平均年齢 : 67±13歳) , 女性1058名 (平均年齢 : 68歳±11歳) が分析可能であり, 2008年から2012年までに91名 (5.0%) の死亡が確認された. 主観的健康感に影響する背景因子について検討したところ, 年齢, 心脳血管疾患既往歴, うつ状態, 知的能動性, 主観的幸福感が有意な関係を示した. さらに主観的健康感はロジスティック回帰分析より死亡の有意な独立説明変数であることが示された.結論 : 自分の健康状態に対してどのように感じているのか, どう認識しているのかは大切であり, 物理的に目に見えないものではあるが, 予後を予測する指標の1つとして考えられる.