著者
佐藤 孝治 小西 隆介 木原 誠司 天海 良治 盛合 敏
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.110-122, 2009-03-25

本論文では,ログ構造化ファイルシステムNILFSの設計と実装について述べる.NILFSは任意の時点におけるファイルシステムのスナップショットを作成することができ,ソフトウェア障害やユーザエラーからデータを保護する.また,ディスク上のデータ構造はつねに一貫した状態に保たれるため,システム障害後の迅速な復旧が可能である.従来のログ構造化ファイルシステムとは異なり,ディスクアドレス変換を用いることにより,複数のスナップショットが存在する状況で,クリーナは不要になったディスク領域を効率的に回収することができる.評価実験により,NILFSはExt3と比べて遜色ない性能を有することを示す.
著者
田村 芳明 柳澤 佳里 佐藤 孝治 盛合 敏
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.13-24, 2010-03-16

インターネット上で提供されるサービスの増加と高機能化に加え,PC サーバの小型化,高速化,低価格化により,企業では多数の PC サーバで構成された複雑なシステムのコスト削減とリソースの有効利用が求められている.この課題を解決するために,仮想マシンを利用して,1 つの物理マシン上に複数のサーバ機能を統合することが検討されている.しかし,ハードウェア障害発生時にサービスを継続するためには,特殊なハードウェア,アプリケーションや OS に依存しない,可用性の高い構成が必要である.本論文では,仮想マシン間の同期による耐故障クラスタリング技術,Kemari について述べる.Kemari は,アプリケーションや OS に依存しないで,障害発生時にサービスを継続することができる.Kemari を仮想マシンモニタである Xen に実装し,実験を行ったところ,運用系の電源断といった障害でも,アプリケーションや OS が待機系で透過的に継続できることを確認した.
著者
大村 圭 田村 芳明 吉川 拓哉 フェルナンドバスケス 盛合 敏
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.20, pp.1-8, 2010-07-27
被引用文献数
2

本論文では,KVM を利用した仮想マシン同期技術の設計と実装,および実験について述べる.我々は,先行研究において,仮想マシンの同期による耐故障クラスタリング技術 Kemari を提案し,仮想マシンモニタ Xen に実装を行った.Kemari はアプリケーションや OS に依存しないで,障害発生時にサービスを停止することなく継続することができる.しかし,Xen は Linux カーネルに統合されていないため,Linux の最新ドライバなどを利用することができないという問題がある.そこで,本研究では,Linux 標準の仮想マシンモニタである KVM に,Kemari を実装した.実験の結果,模擬的なハードウェア障害発生時も,アプリケーションや OS を停止せずに継続できることを確認した.This paper describes the design and implementation of virtual machine synchronization using KVM, along with experimental results of the system. In the previous work, we proposed Kemari, a cluster system that synchronizes virtual machines for fault tolerance that does not require specific hardware or modifications to software. Although we implemented Kemari based on Xen, Xen itself does not provide device drivers, and Dom0 which is responsible hasn't been integrated to the mainline Linux kernel, meaning we cannot use the latest hardware. To overcome this shortage, we implemented a prototype based on KVM, a virtual machine monitor included in the mainline Linux kernel.
著者
小沢 健史 鬼塚 真 福本 佳史 盛合 敏
雑誌
コンピュータシステム・シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.60-69, 2012-11-29

本稿では, MapReduce で行う処理のうち,部分集約が可能な処理を高速化する手法を示す.部分集約が可能な処理とは,集約時に結合法則と交換法則が成立する処理のことを指す.部分集約ができる処理に対して,既存研究では特有の処理系を新たに作成することにより高速化を行っていた.しかし,これらの手法は MapReduce の仕組みを大幅に変更する必要があることから, Hadoop に組み込むのは困難であった.そこで本研究では, Hadoop への実装コストが低く抑え,高速化をおこなう Map Multi-Reduce の提案を行う. Map Multi-Reduce は, MapReduce に Record Reduce と Local Reduce の 2 つの機能を追加した, MapReduce の拡張版である.提案手法の実装を行うにあたり行った Hadoop への変更量は, Record Reduce で約 200 行, LocalReduce で約 300 行と小さい.このように少ない変更量にも関わらず,ディスク IO とネットワーク IO が削減され,実験により 2TB WordCount を行う際に,処理速度が 1.7 倍になることを確認した.また, 100GB のデータに対して WordCount を行った際に,最大で Map 処理と Reduce 処理間のデータの受け渡しを 50% に削減できることを確認し,より大きな入力データに対して,データの受け渡しコストをより削減できる可能性があることを示す.