著者
小見山 隆行
出版者
愛知学院大学
雑誌
愛知学院大学論叢. 商学研究 (ISSN:02858932)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.179-205, 2007-03-31

近年,フリーター,ニートの増加など,若年者をめぐる雇用問題は大きな社会問題となっている。大卒者も例外でない。若年者の雇用悪化の背景には,厳しい就職環境といった外的要因のみならず,就職者の職業観や就業意識などの内的要因,日本的雇用制度としての年功序列貸金制・終身雇用制の崩壊という構造的な要因も複雑に絡んでいるといえる。また,経団連が提唱した「雇用ポートフォリオ」という考え方に基づいた新たな複線型の雇用管理の導入も新規学卒採用を少数厳選採用に向かわせている。伝統的な日本型雇用システムであった「新規学卒定期一括採用」という「モデル」は,産業構造の変動に規定されてゆらぎ始めている。若年雇用の不安定化によって生み出される社会的問題は無視できない。日本全体の人的資本の蓄積の後退,社会全体に経済的損失をもたらす可能性,若者たちのエネルギーが誤った方向に流れる等,社会全般に及ぼす影響は決して小さくない。本稿は,若年者の雇用事情が深刻な事態をもたらしている社会的な背景を探り,高等教育機関としての大学が,学生を社会に送り出すにあたって,いかに職業生活への移行を円滑に図っていくか,大学教育の役割をどのように果たしていくべきか,大卒者の就職事情,就職観等を分析し,キャリア教育の在り方について考察を試みる。
著者
小見山 隆行
出版者
愛知学院大学
雑誌
愛知学院大学論叢. 商学研究 (ISSN:02858932)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.39-63, 2006-12-20

本稿は,江戸時代,明治維新以降の商業教育の生成・変遷を概観し,商業道徳がどのように位置づけられてきたかを検証し考察する。江戸期の商人教育の関わりとして,年季奉公以前の幼少時の「寺子屋」教育と「丁稚奉公」制度,「家憲・家訓」及び「商売往来」の説く商人道,石田梅岩の「石門心学」にみられる商業道徳,近江商人の「三方よし」の思想等について,商業教育と道徳教育の観点から検証を試みた。日本商人観の近世・近代の連続・非連続論,明治維新以降の近代教育と商業学校制度の発達,渋沢栄一の「道徳経済合一説」の説く道徳思想等を分析するともに,戦後の新教育制度における学習指導要領「商業科目」の変遷を概観し,次期改訂への若干の提案とともに,これからの商業教育(ビジネス教育)における新たな使命と役割,商業道徳教育のあり方等について考察した。