著者
高畑 彩友美 小谷 清子 吉本 優子 福田 小百合 尾崎 悦子 東 あかね
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.293-301, 2021-10-01 (Released:2021-11-24)
参考文献数
33

【目的】京都府内の大学の学生食堂において,行政が推進する地産地消・食環境整備事業の登録と,食事と食情報の提供実態を明らかにし,大学生の健康増進のための食環境改善について検討すること。【方法】京都府内の全34大学11短期大学の全72食堂の食堂運営者を対象とした自記式質問調査を2017年に実施した。運営主体によって組合事業組織が運営する食堂(以下,「組合」)と,一般事業者が運営する食堂(以下,「一般」)に区分,さらに,行政が推進する食環境整備事業への登録状況から,登録群と非登録群に分けて比較した。調査項目は,食環境整備事業への登録,食事提供の形態,食事の内容,食・健康情報の提供内容等の12項目である。【結果】63食堂(「組合」33件,「一般」30件, 回答率87.5%)から回答を得た。行政が推進する食環境整備事業への登録は「組合」20.0%,「一般」34.5%であった。「一般」では非登録群と比較して,登録群では野菜料理,米飯量の調節,魚料理,定食の提供の割合が有意に高値であった。食情報の提供の割合は,登録群,非登録群間に差はなく「一般」より「組合」で高値であった。【結論】食環境整備事業への登録が「一般」での健康的な食事の提供と関連している可能性が示唆された。今後,行政,大学及び食堂運営者が連携し,学生食堂の食環境の改善と新しい形態の食情報提供により,学生の健康増進を図ることが望まれる。
著者
小谷 清子 古谷 佳世 猿渡 綾子 和田 小依里 東 あかね
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.5-12, 2020-02-01 (Released:2020-03-19)
参考文献数
30

【目的】家庭での共食の推進と地場産物の活用を目指した食育の効果を評価することを目的とした。【方法】研究デザインはクラスター割付比較対照試験とし,保護者の回答により評価した。2011年7月,京都府宮津市の幼稚園2園と保育所2所を,介入群と比較群に1園1所ずつ割り付け,両群の3~5歳児236人の保護者に,食育前後に無記名自記式調査を行った。食育前調査は属性,身体特性,食習慣,アカモクの利用に関する計8項目,食育後調査は身体特性を除く計4項目である。栄養教育として,介入群では,幼児にはアカモクに関する授業とアカモク料理の給食提供を実施し,保護者にはリーフレットを配布した。その後,情報提供として,両群の保護者に,地場産物を取り入れた,主食,主菜,副菜の揃った献立を配布した。解析対象は食育前158人(介入87,比較71)(66.9%),食育後181人(介入104,比較77)(76.7%)であった。【結果】食育前の両群は全ての項目に有意差はなかった。食育後,介入群で夕食の共食摂取頻度(p=0.042)とアカモクの認知度(p=0.007)が有意に上昇し,アカモクへの食意欲が上昇傾向(p=0.055)にあった。比較群では,全ての項目に有意な変化はなかった。【結論】地場産物を活用した食育を保護者の回答により評価したところ,夕食共食摂取頻度が上昇し,地場産物の認知を高める可能性が示唆された。
著者
小谷 清子 高畑 彩友美 瀬古 千佳子 吉井 健悟 東 あかね
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.105-115, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
50

【目的】地域の若年期からの循環器病予防をめざして,乳児の父母の推定1日尿中食塩排泄量(以下,食塩排泄量)および尿中Na/K比を評価し,食習慣との関連を明らかにすること。【方法】2015年10月から1年間の,京都府内3市町の全ての乳児前期健診対象児393人の父369人,母386人,計755人を対象とした。早朝第1尿から食塩排泄量と尿中Na/K比を算出した。自記式食習慣調査は食物摂取頻度と減塩意識の13項目で,これらと食塩排泄量および尿中Na/K比との関連について,単変量解析と多変量解析を行った。解析対象は,父166人(年齢中央値34.0),母200人(同32.0),計366人(解析率48.5%)であった。【結果】食塩排泄量(g/日)(中央値)は父10.2,母9.9,尿中Na/K比(mEq比)(中央値)は父4.0,母3.9であった。多変量解析の結果,食塩排泄量と食物摂取頻度については有意な関連がなく,減塩意識ありとの関連は父のオッズ比0.83(95%信頼区間0.44~1.60),母のオッズ比0.55(0.28~1.09)であった。尿中Na/K比と食物摂取頻度については母において有意な関連は認めなかった。父において果物摂取と有意な正の関連を認めたが,その解釈は困難であった。【結論】乳児の父母の食塩排泄量と尿中Na/K比を評価し,これらと食物摂取頻度や減塩意識に有意な関連を認めなかった。
著者
山城 美琴 瀬古 千佳子 小谷 清子 和田 小依里 吉本 優子 東 あかね
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.102-111, 2020-06-01 (Released:2020-07-17)
参考文献数
34
被引用文献数
1

【目的】学童期からの循環器病予防のために,小学6年生を対象に果物摂取の増加をめざしたクラスター割付比較対照試験を実施し,果物の摂取に関する自記式質問調査(以下,果物調査)と尿中ナトリウム/カリウム(以下,尿中Na/K)比で評価すること。【方法】地域の保健,教育担当者と大学が連携して食育プログラムを企画した。2017年7月に京都府船井郡京丹波町の小学校全5校の6年生104人(介入群:男子21人,女子27人 対照群:男子31人,女子25人)を,食育を行う介入群2校(48人)と対照群3校(56人)に割り付けた。介入群には45分の食育を各校1回実施した。果物調査は,食育前後,尿中Na/K比測定は食育2か月後に実施した。【結果】食育前の介入群と対照群の比較では,男子の行動変容段階の分布以外は有意差を認めなかった。食育後の介入群と対照群の比較では,果物摂取の週4日以上が,男子31.6%,11.8%(p<0.001),女子26.9%,0.0%(p=0.018),行動変容段階の維持期が,男子20.0%,6.3%(p=0.012),女子7.7%,0.0%であった(p=0.031)。尿中Na/K比は男女とも群間差がなかった。【結論】影響評価の果物摂取頻度と行動変容段階は改善したが,成果評価の尿中Na/K比には差を認めなかった。今後,食育内容の充実が望まれる。
著者
小谷 清
出版者
筑波大学社会科学系 (経済学)
雑誌
筑波大学経済学論集
巻号頁・発行日
no.47, pp.135-166, 2001-10-31

戦前から戦後そして現在に至るまで我が国の社会経済問題についての思考を頑強に支配し続けてきたのは、この小論で制度主義と呼ぶ思考パターンである。わが国でも、政府の介入によってではなく、市場機構に経済問題の解決は任せるべきであるという。制度主義とは相い対立する市場主義が、ある程度の社会的合意を得た考え方として ...